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【感動する話】150人が出席する取引先の式典で専務「底辺の町工場は隅っこに座ってろw」直後、俺の合図でグループ30社の社員が一斉に立ち上がり会場を出た結果【スカッと・朗読】

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A small factory owner, discriminated against at a business ceremony by a condescending executive, retaliates by having his network of 30 affiliated companies silently walk out, causing significant disruption. The story highlights the pride and collective power of small businesses and skilled workers often overlooked by large corporations.

Full Transcript

https://www.youtube.com/watch?v=U3_HZ_HQN7U

[00:00] 底辺の街交場はすみっこに座ってろ。
[00:04] 底辺の街交場はすみっこに座ってろ。
[00:04] 大品は一流企業様の場所なんだよ。
[00:09] 150人が稲ぶ式点の受付で東亜重行の専務が総販店のスーツに身を包んだ俺を見下す銀メガネの奥の調象。
[00:16] 俺はあったまって会場の採用。
[00:20] スピーカーの音すら届かない。
[00:24] すみっこの席についた。
[00:27] そしてポケットからスマホを取り出し、たった2文字を打ち込んだ。
[00:31] 撤収。
[00:35] その瞬間、会場の至るところで出席者たちが一斉に立ち上がり無言で会場を出始めた。
[00:40] 150人中80人が席を立ったのだ。
[00:44] 専務の顔から色が失い。
[00:49] この男は知らなかったのだ。
[00:54] 俺が何者でこの会場にいる人間の下半数が誰の合図で動くのかを。
[01:02] 人間の下半数が誰の合図で動くのかを。
[01:02] これはそこに至るまでの物語だ。
[01:07] そしてこれはそこに至るまでの物語だ。
[01:07] そしてこの国の物づりを支える名もなき職人たち
[01:11] この国の物づりを支える名もなき職人たちの誇りの物語でもある。
[01:16] の誇りの物語でもある。
[01:16] 俺の名は大城。
[01:16] 今年で43歳になる。
[01:21] 東京の下町住田区の路ジ浦に構えた町は大代正規の代表取締まり役だ。
[01:26] の下町住田区の路ジ浦に構えた町は大代正規の代表取締まり役だ。
[01:26] 代表取締まり役なんて体操な肩書きがついてはいるが実態は従業員12名の小さな工場で俺自身が毎朝1番に工場の鍵を開けの前に立つような暮らしを20年続けている。
[01:31] 代表取締まり役なんて体操な肩書きがついてはいるが実態
[01:34] は従業員12名の小さな工場で俺自身が毎朝1番に工場の鍵を開けの前に立つような暮らしを20年続けている。
[01:39] 毎朝1番に工場の鍵を開けの前に立つような暮らしを20年続けている。
[01:44] な暮らしを20年続けている。
[01:44] 工場は住の下町。
[01:49] 工場は住の下町。
[01:49] 住宅と小さな工場が入り混じった一角にある。
[01:53] 住宅と小さな工場が入り混じった一角にある。
[01:53] 最寄りの駅から歩いて15分。
[01:58] 一角にある。
[01:58] 最寄りの駅から歩いて15分。
[01:58] 大通りからは見えない入り組んだ路ジの奥まった場所にひっそりと立っている。
[02:02] 。大通りからは見えない入り組んだ路ジの奥まった場所にひっそりと立っている。
[02:05] 奥まった場所にひっそりと立っている。
[02:05] 夏 はセミの声に包まれ、冬は北風が鉄の屋根
[02:10] はセミの声に包まれ、冬は北風が鉄の屋根 を叩く。
[02:10] 番は錆びかけた鉄板に大城正規と
[02:15] を叩く。
[02:15] 番は錆びかけた鉄板に大城正規と 手書きされたもので初めて来る人間はまず
[02:19] 手書きされたもので初めて来る人間はまず 見つけられない。
[02:19] それでいい。
[02:23] うちは看板 で客を呼ぶ商売ではない。
[02:23] 仕事の品質が
[02:27] で客を呼ぶ商売ではない。
[02:27] 仕事の品質が 唯一の名刺だ。
[02:30] 唯一の名刺だ。
[02:30] 朝6時半、まだ薄暗らい工場のシャッター
[02:34] 朝6時半、まだ薄暗らい工場のシャッター を持ち上げると接作湯と金属分の匂いが
[02:38] を持ち上げると接作湯と金属分の匂いが 美空を満たした。
[02:38] この匂いを不快に思った
[02:42] この匂いを不快に思った ことは1度もない。
[02:42] 親父の台から染みつい
[02:45] ことは1度もない。
[02:45] 親父の台から染みつい たこの工場の空気は俺にとって朝の
[02:49] たこの工場の空気は俺にとって朝の コーヒーよりもよほど目を覚ましてくれる
[02:51] コーヒーよりもよほど目を覚ましてくれる ものだった。
[02:51] 蛍光灯のスイッチを入れると
[02:56] ものだった。
[02:56] 蛍光灯のスイッチを入れると 無奇質な白い光が天井の高い工場内を
[03:00] 無奇質な白い光が天井の高い工場内を 照らし出す。
[03:00] 窓の上の方には雲の巣が張っ
[03:04] 照らし出す。
[03:04] 窓の上の方には雲の巣が張っ ている。
[03:04] 払っても払っても横朝にはまた
[03:08] 払っても払っても横朝にはまた貼られている。
[03:11] この工場は生きているのだとそう思わせてくれるな証だった。
[03:17] 生前と並んだやフライス版、マシニングセンターが今日の仕事を待つよう静かに佇んでいた。
[03:25] 作業技に着替え手を洗い先の電源を入れる。
[03:29] チャックにワークをセットし、バイトのは先を確認する。
[03:38] こした一連の書作は長い年月の間に完全に体に染みついていて、頭で考えるよりも先に手が動く。
[03:47] 金属を削るか高かい音が工場に響き始めると1日が始まったという実感が胸の奥から湧き上がってくる。
[03:58] 今日の仕事は大手メーカー向けの精密部品の試作だった。
[04:01] 図面の交差はプラスマイナスゴミクロン。
[04:05] 髪の毛の太さの1/以下という制度をこの
[04:09] 髪の毛の太さの1/以下という制度をこの 手とこの線番で出す。
[04:14] 量産品なら自動機に 任せるが試作は人間の感覚が物を言う。
[04:19] 接作速度、送り速度切り込み量数値だけで は出せない微妙な調整が職人の腕の 見せどころだ。
[04:28] 知事を回ると社員たちが ポツポツと出勤してくる。
[04:32] 最初に姿を見せ たのは入社3年目の若手渡辺だった。
[04:36] まだ どこか眠そうな顔をしながらも俺の姿を 見つけると慌てて背筋を伸ばす。
[04:41] 今日も 早いですね。
[04:44] もう回してるんですか?先盤 のハンドルから手を離さずに俺は軽く顎を 引いた。
[04:48] 渡辺は素直な若者で技術の 飲み込みも早いがまだ金属と対話する感覚 が身についていない。
[04:52] 数値通りに加工すれ ばいいと思っている段階だ。
[04:56] それはそれで
[05:13] ばいいと思っている段階だ。
[05:13] それはそれで 正しいのだが、本当の制度はその先にある。
[05:16] 正しいのだが、本当の制度はその先にある。
[05:16] 金属が先にあたる振動を指先で感じ取り。
[05:21] 金属が先にあたる振動を指先で感じ取り 、音の変化で接作の状態を判断する。
[05:26] そこ まで行くのにはあと5年はこの場所で腕を 磨き続ける必要があるだろう。
[05:30] まで行くのにはあと5年はこの場所で腕を 磨き続ける必要があるだろう。
[05:30] 7時半を 過ぎると工場は気づいてくる。
[05:33] 過ぎると工場は気づいてくる。
[05:33] ベテランの 加藤がモこモことフライス版の セッティングを始め、中堅の松本が マシニングセンターのプログラムを確認し ている。
[05:38] 加藤がモこモことフライス版の セッティングを始め、中堅の松本が マシニングセンターのプログラムを確認し ている。
[05:40] セッティングを始め、中堅の松本が マシニングセンターのプログラムを確認し ている。
[05:43] マシニングセンターのプログラムを確認し ている。
[05:46] 工場の奥では田中が検査用のジグ を並べている。
[05:50] ている。工場の奥では田中が検査用のジグ を並べている。
[05:54] を並べている。人それぞれが自分の持ち場 を持ち、自分の役割を心業 のような細かいマニュアルがあるわけでは ない。
[05:59] のような細かいマニュアルがあるわけでは ない。
[06:02] ない。だが長年一緒に働いてきた人間同士 のあ運の呼吸で工場は回っていた。
[06:06] のあ運の呼吸で工場は回っていた。
[06:06] 加藤が チップの交換をしながら独り言のように
[06:11] チップの交換をしながら独り言のように
[06:14] チップの交換をしながら独り言のように ついた。
[06:14] 今日の仕事は気合いがいるな。
[06:18] ついた。
[06:18] 今日の仕事は気合いがいるな。
[06:18] この高作か。
[06:18] うちの社長じゃなきゃ受けない仕事だ。
[06:22] この高作か。
[06:22] うちの社長じゃなきゃ受けない仕事だ。
[06:22] 加藤は俺よりも実際年上のベテランで親父の台からこの工場にいる唯一の社員だ。
[06:26] ない仕事だ。
[06:26] 加藤は俺よりも実際年上のベテランで親父の台からこの工場にいる唯一の社員だ。
[06:26] 腕は確かだがあの制度を安定して出せるのは俺だけだ。
[06:30] ベテランで親父の台からこの工場にいる唯一の社員だ。
[06:30] 腕は確かだがあの制度を安定して出せるのは俺だけだ。
[06:34] 唯一の社員だ。
[06:34] 腕は確かだがあの制度を安定して出せるのは俺だけだ。
[06:34] それはう惚れではなく客観的な事実だった。
[06:38] 安定して出せるのは俺だけだ。
[06:38] それはう惚れではなく客観的な事実だった。
[06:42] う惚れではなく客観的な事実だった。
[06:42] 自身もそれを認めていて、精密加工の仕事が入ると黙って俺に先盤を譲る。
[06:45] 自身もそれを認めていて、精密加工の仕事が入ると黙って俺に先盤を譲る。
[06:45] その代わり量産加工のスピードと安定性では加藤に叶わない。
[06:50] が入ると黙って俺に先盤を譲る。
[06:50] その代わり量産加工のスピードと安定性では加藤に叶わない。
[06:54] 代わり量産加工のスピードと安定性では加藤に叶わない。
[06:54] 互いの得意分野を認め合い補い合う。
[06:57] 加藤に叶わない。
[06:57] 互いの得意分野を認め合い補い合う。
[06:57] それが町場の強さだ。
[07:03] 認め合い補い合う。
[07:03] それが町場の強さだ。
[07:03] 8時になると全員が揃った。
[07:07] 8時になると全員が揃った。
[07:07] 12名の社員が作業技に着替え、それぞれの持ち場につく。
[07:10] が作業技に着替え、それぞれの持ち場につく。
[07:10] 調礼の代わりに1人1人の顔を見て
[07:14] つく。
[07:14] 調礼の代わりに1人1人の顔を見て 回るのが日家だ。
[07:18] 体調が悪そうなやはい ないか。
[07:23] 悩みを抱えているやはいないか。
[07:23] 12人という規模だからこそ全員の顔色が
[07:26] 分かる。
[07:32] 全員の家族構成も趣味も好きな酒 の銘柄も頭に入っている。
[07:36] 大企業にはでき ない町ならではの強みだと思っている。
[07:41] 事務所に戻ると宮里テルコ子がすでに
[07:44] デスクに向かっていた。
[07:44] 黒い髪をきちんと
[07:47] まとめ が隙のない予想いメガネの奥の目は鋭く
[07:54] 書類に向ける視線には一切の妥協がない。
[07:58] 大正規の事務全般を1手に引き受けている
[08:01] 40歳の女性で経理から18管理来客対応
[08:06] までこの工場のバックオフィスは彼女なし
[08:10] には回らない。
[08:10] 俺が現場に専念できるのも
[08:14] には回らない。
[08:14] 俺が現場に専念できるのも 宮里がいてくれるからだ。
[08:19] 社長東亜行さん から招待場が届いています。
[08:22] テーブルの上 に置かれた封筒を手に取ると金色の箱押し が施された重厚な招待が入っていた。
[08:26] 東亜重立 50周年記念式店と対処された文面には 来月の土曜日に都内のシティホテルで開催 される胸が記されている。
[08:32] 重立 50周年記念式店と対処された文面には 来月の土曜日に都内のシティホテルで開催 される胸が記されている。
[08:34] 50周年記念式店と対処された文面には 来月の土曜日に都内のシティホテルで開催 される胸が記されている。
[08:39] 来月の土曜日に都内のシティホテルで開催 される胸が記されている。
[08:42] 出血の変身はき も同風されており品 として招待されていることが分かった。
[08:46] も同風されており品 として招待されていることが分かった。
[08:49] として招待されていることが分かった。
[08:52] 宮里の表情がわずかに変わったのを見て、俺は封筒を裏返してみた。
[08:56] 俺は封筒を裏返してみた。
[09:01] 差し出し人には 東和重行株式会社総務部とあるいつもの技術部門や勾配部門 からではない。
[09:03] 東和重行株式会社総務部とあるいつもの技術部門や勾配部門 からではない。
[09:07] 総務部とあるいつもの技術部門や勾配部門 からではない。
[09:12] 式点の正体だから総務部が 発送するのは当然だが金色の箱押しの封筒
[09:16] 発送するのは当然だが金色の箱押しの封筒 には大企業ならではの気合いが感じられた 。
[09:19] には大企業ならではの気合いが感じられた 。
[09:24] 50年という最は企業にとってもそこで 働く人間にとっても途だ。
[09:29] 東亜和重行は 大城正規にとって最も付き合いの長い取引先の1つだ。
[09:32] 精密部品の発注元として親父 の台から30年以上の取引がある。
[09:37] 親父が まだ元気だった頃、東亜の仙台社長が直接工場に来て、大城さんの腕を見込んでうち の重要な部品をお任せしたいと頭を下げて くれた。
[09:42] あの日から30年。
[09:47] 会社は台わり し、担当者も変わったが取引は続いている 。
[09:51] 品質が変わらなければ関係も変わらない 。
[09:55] それが物づりの世界のルールだと俺は 信じていた。
[09:59] 創業50周年というのは企業 にとって大きな節めだ。
[10:02] 招待されたからに
[10:19] にとって大きな節めだ。
[10:19] 招待されたからには顔を出すのが筋というものだろう。
[10:23] 出席されますか?
[10:23] 変身の期限が来週末です。
[10:28] されますか?
[10:28] 変身の期限が来週末です。
[10:28] 少し考えてから俺は頷いた。
[10:33] 行くよ。
[10:33] 30年の付き合いだ。
[10:36] 50年の節めくらい祝ってやらないとな。
[10:41] 宮里が無言で了承し、変身。
[10:41] はがきを手に取った。
[10:44] その手付きはいつも通り淡々としていたが、わずかにマオを寄せたのを俺は見逃さなかった。
[10:51] 何か引っかかることがあるのだろう。
[10:51] だが宮里は聞かれるぬまで余計なことを言わない性格だ。
[10:57] 今は聞かないでおくことにした。
[11:01] 俺はしばらくデスクの上の招待を眺めていった。
[11:06] 東和重。
[11:06] 最初は年間数百万円程度の取引だったが俺の台になってからは年間3億円にまで成長した。
[11:16] それでも東馬
[11:20] 年間3億円にまで成長した。
[11:20] それでも東馬重全体の調達額からすればビビたるものだ。
[11:24] 重全体の調達額からすればビビたるものだ が、精密部品の品質については高い評価を 受けてきた。
[11:28] が、精密部品の品質については高い評価を 受けてきた。
[11:28] お城さんのところの部品は 検品で跳ねたことがないと党和重行の品質管理部門の技術者が言ってくれたことが ある。
[11:31] お城さんのところの部品は 検品で跳ねたことがないと党和重行の品質管理部門の技術者が言ってくれたことが ある。
[11:36] 管理部門の技術者が言ってくれたことが ある。
[11:38] ある。それが俺にとってはどんな表彰より も嬉しい言葉だった。
[11:42] も嬉しい言葉だった。
[11:42] 招待を引き出しに しまい作業技の裾を整えて工場に戻った。
[11:47] しまい作業技の裾を整えて工場に戻った。
[11:47] 午前中の仕事は試作部品の荒だ。
[11:52] 午前中の仕事は試作部品の荒だ。
[11:52] 渡辺と 2人で先番に向かいながら加工の手順を 説明する。
[11:57] 渡辺と 2人で先番に向かいながら加工の手順を 説明する。
[12:01] 説明する。
[12:01] 渡辺は真剣な目でノトにメモを 取っている。
[12:05] 渡辺は真剣な目でノトにメモを 取っている。
[12:05] 技術の伝承というのは マニュアルだけではできない。
[12:08] 技術の伝承というのは マニュアルだけではできない。
[12:08] 目の前で 見せて手に触らせて音を聞かせて匂いを 嗅がせる。
[12:11] 目の前で 見せて手に触らせて音を聞かせて匂いを 嗅がせる。
[12:16] 嗅がせる。
[12:16] 互感で覚えたものだけが本当の 技術として体に残る。
[12:20] 互感で覚えたものだけが本当の 技術として体に残る。
[12:20] 親父もそうやって俺
[12:24] 技術として体に残る。
[12:24] 親父もそうやって俺に教えてくれた。
[12:27] に教えてくれた。
[12:27] 昼休み社員たちは工場の隅に並べた折りたテーブルで弁当を広げる。
[12:35] 俺もそこに混じってコンビニで買った酒おにぎりを放張った。
[12:42] ベテランの加藤が来週末の娘の結婚式の話をしている。
[12:47] 最年勝の田中は昨日見たプロ野球の結果に一期一していた。
[12:55] こうした何気ない昼休みの光景が俺は好きだった。
[12:56] 全員の顔が見える距離で全員の声が聞こえる環境で一緒に飯を食う。
[13:04] 大企業では味わえない。
[13:04] 待場だけの空気だ。
[13:09] 社長、今度の東亜さんの式点出るんですか?
[13:13] 俺は短く落ちた。
[13:13] ああ、50周年だからな。
[13:18] 顔くらい出しておかないと。
[13:21] 社長がスーツ着るとなんか違和感ありますよね。
[13:25] 着るとなんか違和感ありますよね。
[13:25] いちごさんの子供みたいで場に笑い声が響いた。
[13:25] 俺も思わず口元を歪めた。
[13:25] 確かに作業技の方がしっくり来る体になっている。
[13:25] 日焼けした肌と太いには高級よりも油染みの作業着技の方が似合う。
[13:25] それでいいと思っていた。
[13:48] 午後の仕事に戻る前に俺は工場の外に出て
[13:53] 午後の仕事に戻る前に俺は工場の外に出て タバコ自販機の前で缶コーヒーを飲んだ。
[13:57] タバコ自販機の前で缶コーヒーを飲んだ。
[13:57] タバコはやらないが、この自販機の前が俺
[14:00] タバコはやらないが、この自販機の前が俺 の一服スポットだった。
[14:04] の一服スポットだった。
[14:04] 通りの向こうに 見えるスカイツリーの先端を眺めながら頭
[14:08] 見えるスカイツリーの先端を眺めながら頭 の中を整理する。
[14:13] の中を整理する。
[14:13] 東亜和重口の式点30年 の付き合い。
[14:16] の付き合い。
[14:16] 引っかかるものはあるが、今 はまだ考えても仕方がない。
[14:20] はまだ考えても仕方がない。
[14:20] 目の前の仕事 に集中する。
[14:20] に集中する。
[14:20] それが俺のやり方だ。
[14:20] 持場に
[14:26] に集中する。
[14:26] それが俺のやり方だ。
[14:30] 持場に戻りながら俺は工場の壁にかけられた古い写真に目をやった。
[14:34] 親父が若い頃、この工場の前で腕を組んで立っている白黒写真だ。
[14:38] 気焼けした太い腕、短くり込んだ頭。
[14:44] 武器王打が真の強い目。
[14:49] 鏡を見ると俺の顔にも同じような線が刻まれ始めていることに気づく。
[14:58] 43歳親父がこの工場を起こしたのと同じ年になった。
[15:02] 親父は経営の際はなかったが腕は確かだった。
[15:07] その腕1本でこの工場を40年間守り抜いた。
[15:12] 俺は親父とは少し違う道を歩んでいるが、原点はここにある。
[15:20] この油と金属分の匂いが染みついた小さな街交場が全ての始まりだった。
[15:26] だった。
[15:29] 大城正規が今の形になるまでには長い道乗りがあった。
[15:34] 俺が23歳の時親父が脳梗速で倒れた。
[15:39] 右半神に麻痺が残り、もう2度と工場で働くことはできなくなっ た。
[15:42] 病院のベッドの上で親父は左手で俺の腕を握りしめながらかれた声で言った。
[15:47] 工場を頼むとそれだけだった。
[15:52] 経営のこと、息き先のことも資金繰りのことも何ひとつ教わっていなかった。
[15:57] 親父は職人だった。
[16:01] 腕1本で食ってきた男だった。
[16:06] 帳簿のつけ方すらまともに知らない状態で俺は23歳にして町の代表になった。
[16:10] 親父が倒れた日工場には5人の社員がいた。
[16:14] 全員が親父に先番を教わった職人だった。
[16:20] 若旦那が継ぐ
[16:29] 先番を教わった職人だった。
[16:29] 若旦那が継ぐ のかと最年長の社員が聞いてきた。
[16:33] 俺は あったまって首を縦に振った。
[16:37] それ以外に 選択肢はなかった。
[16:41] 母は親父の介護で 手いぱいだったし、兄弟はいない。
[16:44] 翌日 から俺は持場に立ち、図面を読み帳を開き 、銀行に頭を下げに行く日々が始まった。
[16:54] 最初の3年は地獄だった。
[16:58] 親父が倒れたと するや、鳥行き先の態度が一変した。
[17:03] 親父 の技術を信頼して発注していた企業が若像 の俺に同じ仕事を任せることをしり始めた。
[17:10] お父さんの腕は信頼してたんだけどねと いう言葉を何度聞かされたか分からない。
[17:14] その度に奥場を噛しめて俺の腕も見て くださいと頭を下げた。
[17:22] だが現実は残酷 だった。
[17:29] だった。
[17:33] 先は次々と離れていき、残った仕事は単価 の安い量産品ばかりになった。
[17:37] 資金繰りは 日に日に苦しくなり、社員の給料を払う ために自分の口座を空にした月も1度や
[17:45] 2度ではない。
[17:49] 最も辛かったのは親父に顔 を見せに行く度に工場はどうだと聞かれる
[17:52] ことだった。
[17:57] 麻痺が残った口元でそれでも 必ず聞いてくる。
[18:02] 俺は嘘をついた。
[18:05] 順調だ よ、親父と行き 先が離れていることも資金繰りが火の車だ
[18:09] ということも社員の給料を払うために個人
[18:13] の貯金を全部使ったことも一切言わなかっ
[18:17] た。
[18:22] 親父は職人だ。
[18:26] 腕を震えなくなった。
[18:26] 今工上のことだけが生きがいだった。
[18:26] その 生きがいを奪うわけにはいかない。
[18:29] 生きがいを奪うわけにはいかない。
[18:29] 病院からの帰り道1人で泣いたことがある
[18:33] 病院からの帰り道1人で泣いたことがある 。
[18:33] 駅のホームのベンチに座り込んで膝の上
[18:38] 駅のホームのベンチに座り込んで膝の上 に拳を押し付けた。
[18:38] 涙を止めようとすれば
[18:42] に拳を押し付けた。
[18:42] 涙を止めようとすれば するほど止まらなくなる。
[18:42] 電車が何本通り
[18:46] するほど止まらなくなる。
[18:46] 電車が何本通り すぎたか覚えていない。
[18:46] 冬の風がホームを
[18:50] すぎたか覚えていない。
[18:50] 冬の風がホームを 吹き抜け涙で濡れた方を容赦なく冷やして
[18:54] 吹き抜け涙で濡れた方を容赦なく冷やして いった。
[18:54] 23歳の若像が一刻のア字として
[18:59] いった。
[18:59] 23歳の若像が一刻のア字として 工場を背負い、取引先に頭を下げて回り、
[19:04] 工場を背負い、取引先に頭を下げて回り、均衡に勇志を断られ、それでも毎朝工場に
[19:08] 均衡に勇志を断られ、それでも毎朝工場に 立つ、なぜ俺がこんな目にと叫びたい時も
[19:12] 立つ、なぜ俺がこんな目にと叫びたい時も あった?
[19:12] だが叫んだところで何も変わら
[19:17] あった?
[19:17] だが叫んだところで何も変わら ない。
[19:17] できることは1つだけだ。
[19:21] ない。
[19:21] できることは1つだけだ。ひたすら 腕を磨くことだけだ。
[19:21] は誰よりも早く入り
[19:25] 腕を磨くことだけだ。
[19:25] は誰よりも早く入り 、夜は最後まで残って図面と格闘した。
[19:30] 、夜は最後まで残って図面と格闘した。
[19:34] 親父が使っていた先盤には長年の仕様で手の形に馴染んだハンドルの跡が残っている。
[19:37] その後に自分の手を重ねるたびに親父の存在を感じた。
[19:41] まだここにいる。
[19:46] この機械の中に親父の技は生きている。
[19:51] 親父の技術を超えるためにひたすら金属を削り続けた。
[19:55] 1ミクロンの制度を出すために何百回も同じ加工を繰り返した。
[19:59] 3年目の終わり頃、ようやく俺の腕を認めてくれる取引先が現れ始めた。
[20:04] 試作品の制度が図面の要求を大幅に上回っていることに気づいた技術者がこの加工を誰がやったんですかと聞いてきた。
[20:08] 俺ですと答えると信じられないという顔をされた。
[20:12] 26歳の若像がベテラン職人を超える制度を出していたのだ。
[20:15] その技術者
[20:33] 超える制度を出していたのだ。その技術者 はわざわざ工場まで見に来てくれた。先盤
[20:37] はわざわざ工場まで見に来てくれた。先盤 の前で俺が加工する様子をじっと見つめ
[20:41] の前で俺が加工する様子をじっと見つめ 出来上がった部品をマイクロメーターで何
[20:44] 出来上がった部品をマイクロメーターで何 度も測定した。測定地を見て技術者は首を
[20:49] 度も測定した。測定地を見て技術者は首を 振りながら行った。図面ではプラス
[20:53] 振りながら行った。図面ではプラス マイナス10ミクロンの交差を指定して
[20:55] マイナス10ミクロンの交差を指定して いるのにあなたの部品は全部2クロン以内
[20:59] いるのにあなたの部品は全部2クロン以内 に収まってる。こんな精度を手加工で出す
[21:03] に収まってる。こんな精度を手加工で出す 人間は初めて見たと。その言葉が俺にとっ
[21:08] 人間は初めて見たと。その言葉が俺にとっ て最初の勲章だった。そこから口コみで
[21:12] て最初の勲章だった。そこから口コみで 評判が広がり、生密加工の仕事が少しずつ
[21:16] 評判が広がり、生密加工の仕事が少しずつ 増え始めた。特に試作品の加工では大手の
[21:20] 増え始めた。特に試作品の加工では大手の 量産設備では対応できない複雑な形状や
[21:25] 量産設備では対応できない複雑な形状や 極めて厳しい交差の仕事が大城正規に回っ
[21:29] 極めて厳しい交差の仕事が大城正規に回っ てくるようになった。俺の手と先盤が
[21:33] てくるようになった。俺の手と先盤が 生み出す制度はCNCマシンの自動加工を
[21:37] 生み出す制度はCNCマシンの自動加工を 超えることすらあった。
[21:40] 超えることすらあった。 にはできない微妙な調整を人間の感覚で
[21:43] にはできない微妙な調整を人間の感覚で やってのける。それが町場の職人の価値
[21:47] やってのける。それが町場の職人の価値 だった。だが全てが順調だったわけでは
[21:51] だった。だが全てが順調だったわけでは ない。ある大手メーカーの品質管理部長が
[21:55] ない。ある大手メーカーの品質管理部長が 向場を訪れ、俺の加工制度を確認した上で
[22:01] 向場を訪れ、俺の加工制度を確認した上で 素晴らしい技術だ。是非正規の取り行き先
[22:04] 素晴らしい技術だ。是非正規の取り行き先 として登録したいと言ってくれたことが
[22:07] として登録したいと言ってくれたことが ある。喜んで書類を提出したが審査の結果
[22:12] ある。喜んで書類を提出したが審査の結果 は登録基準を満たしていないだった。理由
[22:16] は登録基準を満たしていないだった。理由 を問い合わせると従業因数が基準に達して
[22:20] を問い合わせると従業因数が基準に達して いないと品質ではなく規模で門前払い技術
[22:25] いないと品質ではなく規模で門前払い技術 力は認められても企業としての核が足り
[22:29] 力は認められても企業としての核が足り ないのだと突きつけられた。だが腕が認め
[22:32] ないのだと突きつけられた。だが腕が認め られても下受けの立場は変わらなかった。
[22:37] られても下受けの立場は変わらなかった。 メーカーからの発注は常に上から目線で
[22:41] メーカーからの発注は常に上から目線で 代わりはいくらでもいるという言葉を
[22:43] 代わりはいくらでもいるという言葉を 突きつけられるたびにはみする思いだった
[22:46] 突きつけられるたびにはみする思いだった 。単価の値下げ要求は毎年のように来る。
[22:52] 。単価の値下げ要求は毎年のように来る。 品質はあげろ。納期は守れだが金は出さ
[22:56] 品質はあげろ。納期は守れだが金は出さ ない。それが下受けという立場の現実だっ
[23:00] ない。それが下受けという立場の現実だっ た。ある大手メーカーの向上見学に呼ばれ
[23:04] た。ある大手メーカーの向上見学に呼ばれ た自社が加工した部品がどのように使われ
[23:08] た自社が加工した部品がどのように使われ ているのかを見る機会だった。巨大な生産
[23:12] ているのかを見る機会だった。巨大な生産 ラインの横に立つと俺が1つ1つ手作業で
[23:16] ラインの横に立つと俺が1つ1つ手作業で 削り出した部品がベルトコンベアの上を
[23:20] 削り出した部品がベルトコンベアの上を 流れていく。それがロボットアームによっ
[23:24] 流れていく。それがロボットアームによっ て組み込まれ、やがて1つの精密機器とし
[23:27] て組み込まれ、やがて1つの精密機器とし て完成していく。その光景を見た時、
[23:32] て完成していく。その光景を見た時、 言い用のない感動を覚えた。鼻の奥が熱く
[23:36] 言い用のない感動を覚えた。鼻の奥が熱く なり、必死にこらえた。工場のラインの
[23:40] なり、必死にこらえた。工場のラインの 騒音のおかげで声が震えていても気づかれ
[23:44] 騒音のおかげで声が震えていても気づかれ ずに住んだ。俺の手が生み出したものが
[23:48] ずに住んだ。俺の手が生み出したものが こうして形になっている。だが同時に深い
[23:53] こうして形になっている。だが同時に深い 怒りも湧き上がった。この精密機器機の
[23:56] 怒りも湧き上がった。この精密機器機の 心臓部を作っている俺たちがなぜ代わりは
[24:00] 心臓部を作っている俺たちがなぜ代わりは いくらでもいると言われなければならない
[24:03] いくらでもいると言われなければならない のか。代わりなどそう簡単には見つから
[24:07] のか。代わりなどそう簡単には見つから ないはずだ。だが当時の俺にはその理不尽
[24:11] ないはずだ。だが当時の俺にはその理不尽 に抗う力がなかった。一者だけでは大手の
[24:15] に抗う力がなかった。一者だけでは大手の 前に出れば米粒のような存在だ。取引を
[24:20] 前に出れば米粒のような存在だ。取引を 切られたら明日から仕事がなくなる。その
[24:24] 切られたら明日から仕事がなくなる。その 恐怖が常に背中に張り付いていった。同じ
[24:27] 恐怖が常に背中に張り付いていった。同じ ような苦しみを抱えている中小企業がこの
[24:31] ような苦しみを抱えている中小企業がこの 国には無数にあることを俺は痛いほど
[24:34] 国には無数にあることを俺は痛いほど 分かっていった。そしてその1つ1つが声
[24:38] 分かっていった。そしてその1つ1つが声 を上げることもできずに黙って大手の要求
[24:42] を上げることもできずに黙って大手の要求 を飲み続けていった。加藤がそのことを
[24:45] を飲み続けていった。加藤がそのことを 知っていたのかどうかは分からない。だが
[24:49] 知っていたのかどうかは分からない。だが 給料日に封筒を渡す時加藤はいつもって頭
[24:53] 給料日に封筒を渡す時加藤はいつもって頭 を下げてくれた。ありがとうございますと
[24:57] を下げてくれた。ありがとうございますと 、その一言がどれだけ俺を支えてくれたか
[25:01] 、その一言がどれだけ俺を支えてくれたか 、金は後から取り戻せばいいだが、社員の
[25:06] 、金は後から取り戻せばいいだが、社員の 信頼を失ったら2度と戻らない。親父も
[25:10] 信頼を失ったら2度と戻らない。親父も そうやって工場を守ってきたのだろう。
[25:13] そうやって工場を守ってきたのだろう。 帳簿の残高がゼロになっても社員だけは
[25:17] 帳簿の残高がゼロになっても社員だけは 守り抜く。それが町のある種としての最低
[25:21] 守り抜く。それが町のある種としての最低 限の教示だった。天気は俺が28歳の時に
[25:26] 限の教示だった。天気は俺が28歳の時に 訪れた。ある展示会で名浩という男に
[25:31] 訪れた。ある展示会で名浩という男に 出会ったのだ。がっしりとした体格に
[25:35] 出会ったのだ。がっしりとした体格に 日焼けした首筋。トラックのハンドルで
[25:38] 日焼けした首筋。トラックのハンドルで 熱くなった手のひ。一目で現場の人間だと
[25:43] 熱くなった手のひ。一目で現場の人間だと 分かる風貌だった。は当時従業員5名の
[25:48] 分かる風貌だった。は当時従業員5名の 小さな運送会社を経営していた。大手物流
[25:52] 小さな運送会社を経営していた。大手物流 の下受けとして決められたルートを決め
[25:55] の下受けとして決められたルートを決め られた料金で走る日々、車両のローンを
[25:59] られた料金で走る日々、車両のローンを 抱え、燃料費の後頭に頭を抱え、
[26:03] 抱え、燃料費の後頭に頭を抱え、 ドライバーの離職に悩む。俺と同じような
[26:07] ドライバーの離職に悩む。俺と同じような 苦しみの中に行った展示会の休憩スペース
[26:11] 苦しみの中に行った展示会の休憩スペース で隣合わせになったのがきっかけだった。
[26:15] で隣合わせになったのがきっかけだった。 は観光コーヒーを手にボそっとこう漏らし
[26:18] は観光コーヒーを手にボそっとこう漏らし た。一者じゃどうにもならねえんだよなと
[26:22] た。一者じゃどうにもならねえんだよなと 。その一言が俺の頭の中で科学反応を
[26:26] 。その一言が俺の頭の中で科学反応を 起こした。一者じゃ弱い。大手の言いなり
[26:31] 起こした。一者じゃ弱い。大手の言いなり になるしかない。だが、もし同じ心志を
[26:35] になるしかない。だが、もし同じ心志を 持つ中小企業が手を組んだら部品を作る
[26:39] 持つ中小企業が手を組んだら部品を作る 会社、それを運ぶ会社、それを管理する
[26:44] 会社、それを運ぶ会社、それを管理する システムを組む会社
[26:46] システムを組む会社 サプライチェーンの要所要所に仲間がいれ
[26:49] サプライチェーンの要所要所に仲間がいれ ば大手に対して対等な立場で交渉できるの
[26:53] ば大手に対して対等な立場で交渉できるの ではないか。ご酒を組みかわばわしながら
[26:57] ではないか。ご酒を組みかわばわしながら 語り合った夜のことを今でも鮮明に覚えて
[27:01] 語り合った夜のことを今でも鮮明に覚えて いる。安い居酒屋のカウンターで2人とも
[27:05] いる。安い居酒屋のカウンターで2人とも 油と汗の匂いをさせながら
[27:08] 油と汗の匂いをさせながら 将来の構想を語り合った。名は俺の話を
[27:13] 将来の構想を語り合った。名は俺の話を 聞きながら最初は半神半義の顔をしていた
[27:16] 聞きながら最初は半神半義の顔をしていた がやがて目に光が灯り始めた。
[27:21] がやがて目に光が灯り始めた。 おしれえなそれ。部品を作るやと運ぶや組
[27:26] おしれえなそれ。部品を作るやと運ぶや組 むってことか。それだけじゃない。
[27:29] むってことか。それだけじゃない。 システムを管理するやつ。設備を整備する
[27:33] システムを管理するやつ。設備を整備する やつ。全部仲間で固める。大手が一者に
[27:37] やつ。全部仲間で固める。大手が一者に 頼んでることを俺たちのグループで丸ごと
[27:40] 頼んでることを俺たちのグループで丸ごと 引き受ける。そうすれば簡単には切れなく
[27:43] 引き受ける。そうすれば簡単には切れなく なる。名は缶コーヒーの空缶を握りつぶし
[27:48] なる。名は缶コーヒーの空缶を握りつぶし ながらしばらくまっていった。して
[27:52] ながらしばらくまっていった。して ゆっくりと口を開いた。
[27:55] ゆっくりと口を開いた。 乗った。どうせこのまま1人でやってても
[27:58] 乗った。どうせこのまま1人でやってても 先が見えねえんだ。お前と組むよ、大城。
[28:03] 先が見えねえんだ。お前と組むよ、大城。 次の日の朝、名が大城正規に顔を出して
[28:07] 次の日の朝、名が大城正規に顔を出して くれた。5トントラックで乗り付けてきた
[28:11] くれた。5トントラックで乗り付けてきた 名は作業技のまま工場に入ると物珍しそう
[28:16] 名は作業技のまま工場に入ると物珍しそう にあちこちを見て回った。番の前で俺が
[28:20] にあちこちを見て回った。番の前で俺が 削り出した試作品を手に取り、指先で表明
[28:24] 削り出した試作品を手に取り、指先で表明 をなぞった。素人には分からないだろうが
[28:27] をなぞった。素人には分からないだろうが 、削り出した面の滑らかさは加工制度を
[28:32] 、削り出した面の滑らかさは加工制度を 如実に物語る。名は部品加工の専門家では
[28:36] 如実に物語る。名は部品加工の専門家では ないが、長年現場で仕事をしてきた男だ。
[28:40] ないが、長年現場で仕事をしてきた男だ。 手障りだけでその仕事の質を感じ取ったの
[28:44] 手障りだけでその仕事の質を感じ取ったの だろう。満足に目を細め、口元を緩めた。
[28:49] だろう。満足に目を細め、口元を緩めた。 その時の名の目には俺と同じ種類の光が
[28:53] その時の名の目には俺と同じ種類の光が 灯っていった。1人じゃ変えられない世界
[28:57] 灯っていった。1人じゃ変えられない世界 を2人ならもしかしたら変えられるかも
[29:00] を2人ならもしかしたら変えられるかも しれない。根拠のない確信だったがそれで
[29:04] しれない。根拠のない確信だったがそれで も十分だった。俺たちには失うものが
[29:08] も十分だった。俺たちには失うものが ほとんどなかったから名の最初の共同案件
[29:12] ほとんどなかったから名の最初の共同案件 は中堅の自動車部品メーカーからの受中
[29:15] は中堅の自動車部品メーカーからの受中 だった。俺が精密部品を加工し、名川納品
[29:20] だった。俺が精密部品を加工し、名川納品 まで担当する。それまで部品メーカーは
[29:24] まで担当する。それまで部品メーカーは 加工と物流を別の会社に発注し、
[29:28] 加工と物流を別の会社に発注し、 スケジュール調整に手間をかけていた。俺
[29:31] スケジュール調整に手間をかけていた。俺 たちは加工から納品まで一括でお任せ
[29:35] たちは加工から納品まで一括でお任せ くださいと提案し、メーカーの手間を大幅
[29:38] くださいと提案し、メーカーの手間を大幅 に削減した。単価は少し安くしたが、
[29:43] に削減した。単価は少し安くしたが、 トータルで見れば十分な利益が出た。
[29:46] トータルで見れば十分な利益が出た。 何よりメーカーから便利な仕組みだねと
[29:49] 何よりメーカーから便利な仕組みだねと 評価されたことが大きかった。一括受中の
[29:53] 評価されたことが大きかった。一括受中の 実績を積むうちに口込みで噂が広がり始め
[29:58] 実績を積むうちに口込みで噂が広がり始め た。お城と名に頼めば製造から配送まで
[30:02] た。お城と名に頼めば製造から配送まで 面倒を見てくれると問い合わせが増えそれ
[30:07] 面倒を見てくれると問い合わせが増えそれ に伴って仲間を増やす必要が出てきた。
[30:11] に伴って仲間を増やす必要が出てきた。 必要に責められてのグループ拡大だったが
[30:14] 必要に責められてのグループ拡大だったが 結果としてそれが最も健全な成長の形だっ
[30:18] 結果としてそれが最も健全な成長の形だっ たと思う。名もまた俺と同じ苦しみを抱え
[30:22] たと思う。名もまた俺と同じ苦しみを抱え ていた。いい仕事をすればするほど
[30:26] ていた。いい仕事をすればするほど 当たり前だと思われ、評価は単価に反映さ
[30:29] 当たり前だと思われ、評価は単価に反映さ れない。その理不尽にも限界を感じていた
[30:33] れない。その理不尽にも限界を感じていた のだ。あの夜から15年、俺と謎を過去に
[30:38] のだ。あの夜から15年、俺と謎を過去に して少しずつ仲間を増やしていった。最初
[30:43] して少しずつ仲間を増やしていった。最初 の頃は町場と運親が組んで何になると鼻で
[30:47] の頃は町場と運親が組んで何になると鼻で 笑われた。だが実績を積むうちに評判が
[30:51] 笑われた。だが実績を積むうちに評判が 広がり2者が5者になり10社になり
[30:56] 広がり2者が5者になり10社になり やがて仲間は増え続けた。焦らず1つ1つ
[31:00] やがて仲間は増え続けた。焦らず1つ1つ の仕事を確実に仕上げる。それだけを愚直
[31:04] の仕事を確実に仕上げる。それだけを愚直 に続けた。3者目の仲間が加わったのは俺
[31:09] に続けた。3者目の仲間が加わったのは俺 が31歳の時だった。
[31:12] が31歳の時だった。 備の保全を専門にしている小さな会社の
[31:15] 備の保全を専門にしている小さな会社の 社長こちよとが業界の集まりで声をかけて
[31:19] 社長こちよとが業界の集まりで声をかけて きた。大城代さんの話を聞いたんですが
[31:23] きた。大城代さんの話を聞いたんですが うちも仲間に入れてもらえませんかと。
[31:26] うちも仲間に入れてもらえませんかと。 こっちメンテナンスは従業員8名の小さな
[31:29] こっちメンテナンスは従業員8名の小さな 会社だったが工場設備の修理や保全に関し
[31:33] 会社だったが工場設備の修理や保全に関し ては腕の立つ職人を揃えていた。大手の
[31:37] ては腕の立つ職人を揃えていた。大手の 設備メーカーに下受けとして使われ、技術
[31:41] 設備メーカーに下受けとして使われ、技術 量に見合わない安い単価で働かされている
[31:44] 量に見合わない安い単価で働かされている 。俺たちと同じ苦しみを抱えた仲間だった
[31:48] 。俺たちと同じ苦しみを抱えた仲間だった 。こちが加わった日の夜、名3人で安い
[31:53] 。こちが加わった日の夜、名3人で安い 居酒屋のカウンターに並んだ。こちは僕突
[31:57] 居酒屋のカウンターに並んだ。こちは僕突 な男で多くを語らない。だがピールの
[32:01] な男で多くを語らない。だがピールの ジョッキを手にした時ぽつりとこう言った
[32:04] ジョッキを手にした時ぽつりとこう言った 。俺設備の保全しかできねえ男だけど、
[32:09] 。俺設備の保全しかできねえ男だけど、 それだけは誰にも負けない自信がある。お
[32:12] それだけは誰にも負けない自信がある。お 城さんたちと組めるならその腕を存分に
[32:16] 城さんたちと組めるならその腕を存分に 震えると。名がいいじゃねえか。職人は腕
[32:20] 震えると。名がいいじゃねえか。職人は腕 で語るもんだと笑い、俺はって逆月きを
[32:24] で語るもんだと笑い、俺はって逆月きを 傾けた。技術を持った人間が正当に評価さ
[32:29] 傾けた。技術を持った人間が正当に評価さ れる場所を作る。それが俺の目指す世界
[32:33] れる場所を作る。それが俺の目指す世界 だった。
[32:34] だった。 地が加わったことでグループの守備範囲が
[32:38] 地が加わったことでグループの守備範囲が 一気に広がった。部品の製造、物流、設備
[32:43] 一気に広がった。部品の製造、物流、設備 保全、メーカーにとってこの3つを一括で
[32:47] 保全、メーカーにとってこの3つを一括で 任せられるパートナーがいるというのは
[32:49] 任せられるパートナーがいるというのは 大きなメリットだった。しかもそれぞれが
[32:52] 大きなメリットだった。しかもそれぞれが 専門技術を持った職人集団だ。大企業の
[32:57] 専門技術を持った職人集団だ。大企業の 確実的なサービスとは違う。決め細かい
[33:00] 確実的なサービスとは違う。決め細かい 対応ができる。それが俺たちの強みだった
[33:04] 対応ができる。それが俺たちの強みだった 。
[33:05] 。 きっかけは様々だった。赤嶺け一と出会っ
[33:09] きっかけは様々だった。赤嶺け一と出会っ たのは俺が33歳の時だ。赤嶺は当時霊祭
[33:14] たのは俺が33歳の時だ。赤嶺は当時霊祭 のIT企業を経営していた。社員3名で
[33:19] のIT企業を経営していた。社員3名で 企業のシステム保守を受け負っていたが、
[33:22] 企業のシステム保守を受け負っていたが、 大手IT企業との価格競争に破れ、経営
[33:26] 大手IT企業との価格競争に破れ、経営 破綻の瀬戸際に立たされていた。行き先を
[33:30] 破綻の瀬戸際に立たされていた。行き先を 失い、事務所の家賃も払えなくなりかけて
[33:33] 失い、事務所の家賃も払えなくなりかけて いた赤嶺に俺は手を差し伸べた。うちの
[33:37] いた赤嶺に俺は手を差し伸べた。うちの グループのシステム管理を全部任せる。
[33:41] グループのシステム管理を全部任せる。 最初は誤分だがグループが増えれば仕事も
[33:44] 最初は誤分だがグループが増えれば仕事も 増える。一緒にやらないか。細みの体に
[33:49] 増える。一緒にやらないか。細みの体に 似合わない鋭い目つきをした男だった。
[33:53] 似合わない鋭い目つきをした男だった。 赤嶺は目を赤くしながら何度も頭を下げた
[33:57] 赤嶺は目を赤くしながら何度も頭を下げた 。あの日の赤嶺の表情は今でも忘れられ
[34:01] 。あの日の赤嶺の表情は今でも忘れられ ない。追い詰められた人間が最後の最後で
[34:06] ない。追い詰められた人間が最後の最後で 差し伸べられた手を掴んだ時のあのアンド
[34:09] 差し伸べられた手を掴んだ時のあのアンド と決意が入り混じった顔だ。後で聞いた話
[34:13] と決意が入り混じった顔だ。後で聞いた話 では赤嶺はその日最後の社員に給料を払う
[34:18] では赤嶺はその日最後の社員に給料を払う ために自分の車を売る手会をしていた
[34:21] ために自分の車を売る手会をしていた らしい。俺の申し出がもう1日遅ければ
[34:26] らしい。俺の申し出がもう1日遅ければ 赤嶺テクノロジーズは消滅していた。そう
[34:30] 赤嶺テクノロジーズは消滅していた。そう 思うと人の縁というのは不思議なものだ。
[34:34] 思うと人の縁というのは不思議なものだ。 赤嶺はその恩を決して忘れなかった。
[34:38] 赤嶺はその恩を決して忘れなかった。 グループのITインフラを一手に引き受け
[34:41] グループのITインフラを一手に引き受け 、大手にも負けないシステム基盤を
[34:44] 、大手にも負けないシステム基盤を 築づき上げてくれた。今やグループ3実の
[34:48] 築づき上げてくれた。今やグループ3実の ネットワーク、サーバー管理、業務
[34:51] ネットワーク、サーバー管理、業務 システムの全てが赤嶺テクノロジーズの手
[34:55] システムの全てが赤嶺テクノロジーズの手 の中にある。赤嶺が加わった翌年には品質
[35:00] の中にある。赤嶺が加わった翌年には品質 検査を専門とするハエテスティングが仲間
[35:04] 検査を専門とするハエテスティングが仲間 に入った。代表のハエ誠一は大手メーカー
[35:08] に入った。代表のハエ誠一は大手メーカー の品質管理部門で長年のキャリアを積んだ
[35:11] の品質管理部門で長年のキャリアを積んだ 後、独立して検査会社を立ち上げた男だっ
[35:15] 後、独立して検査会社を立ち上げた男だっ た。
[35:17] た。 技術は申し分なかったが、営業力が足りず
[35:21] 技術は申し分なかったが、営業力が足りず 仕事の加工に苦戦していた。大城グループ
[35:25] 仕事の加工に苦戦していた。大城グループ に加わることで安定した受中基盤を得た
[35:29] に加わることで安定した受中基盤を得た ハエはその恩に報いるようにグループ全体
[35:33] ハエはその恩に報いるようにグループ全体 の品質管理レベルを規約的に引き上げて
[35:36] の品質管理レベルを規約的に引き上げて くれた。グループの拡大は計画的に進めた
[35:41] くれた。グループの拡大は計画的に進めた ものもあれば、偶然の出会いから始まった
[35:44] ものもあれば、偶然の出会いから始まった ものもある。あるの忘年会で名が連れてき
[35:49] ものもある。あるの忘年会で名が連れてき た地人の放送資材メーカーの社長が酒の席
[35:53] た地人の放送資材メーカーの社長が酒の席 でうちも大手の言い成りはもう嫌だと本音
[35:58] でうちも大手の言い成りはもう嫌だと本音 をも漏らした。翌月にはグループの一員に
[36:01] をも漏らした。翌月にはグループの一員に なっていった。また赤嶺のクライアント
[36:05] なっていった。また赤嶺のクライアント だった電気工事会社が元けの無理な値下げ
[36:09] だった電気工事会社が元けの無理な値下げ 要求に耐えかねて相談してきたこともあっ
[36:12] 要求に耐えかねて相談してきたこともあっ た。俺は話を聞き、グループに迎いた。一
[36:18] た。俺は話を聞き、グループに迎いた。一 で弱いなら束になればいい。その原則は
[36:22] で弱いなら束になればいい。その原則は 1度もぶれたことがないだが準風満パだっ
[36:26] 1度もぶれたことがないだが準風満パだっ たわけではない。グループが15社を超え
[36:30] たわけではない。グループが15社を超え た辺たりで内部に圧歴が生じた。ある会社
[36:34] た辺たりで内部に圧歴が生じた。ある会社 の社長がグループ内の仕事の配分について
[36:37] の社長がグループ内の仕事の配分について 不満をもらし独自に大手メーカーと直接
[36:41] 不満をもらし独自に大手メーカーと直接 取引を始めようとしたのだ。城のグループ
[36:45] 取引を始めようとしたのだ。城のグループ に縛られるのは結局新しい形の下受けじゃ
[36:48] に縛られるのは結局新しい形の下受けじゃ ないかとその言葉は正直に言って答えた。
[36:53] ないかとその言葉は正直に言って答えた。 俺がやろうとしていることは本当に仲間の
[36:56] 俺がやろうとしていることは本当に仲間の ためになっているのか。ただ自分の影響力
[37:00] ためになっているのか。ただ自分の影響力 を広げているだけではないのか。1週間
[37:03] を広げているだけではないのか。1週間 ほど悩んだ末俺はその社長の工場を1人で
[37:08] ほど悩んだ末俺はその社長の工場を1人で 訪ね腹を割って話をした。お前の言は
[37:13] 訪ね腹を割って話をした。お前の言は 分かる。縛りつけるつもりはない。出て
[37:17] 分かる。縛りつけるつもりはない。出て いくなら止めない。ただ1つだけ聞いて
[37:20] いくなら止めない。ただ1つだけ聞いて くれ。一者で大手と交渉した時、お前は
[37:24] くれ。一者で大手と交渉した時、お前は 対等に座れるか?値下げを要求すれた時
[37:28] 対等に座れるか?値下げを要求すれた時 断れるか?その社長は黙り込んだ。答えは
[37:33] 断れるか?その社長は黙り込んだ。答えは 分かっていたのだろう。一者ではやはり
[37:36] 分かっていたのだろう。一者ではやはり 弱い。結局その社長はグループに残り、今
[37:41] 弱い。結局その社長はグループに残り、今 では最も積極的にグループの結束を訴える
[37:45] では最も積極的にグループの結束を訴える 人間の1人になっている。あの経験から俺
[37:49] 人間の1人になっている。あの経験から俺 はグループの運営方針を見直した。各者の
[37:53] はグループの運営方針を見直した。各者の 独立性を最大限に尊重し、グループとして
[37:58] 独立性を最大限に尊重し、グループとして の意思決定は重要案件に限定する。日常の
[38:03] の意思決定は重要案件に限定する。日常の 経営には一切口を出さない。求められた時
[38:07] 経営には一切口を出さない。求められた時 だけ助ける。そのスタンスを徹底したこと
[38:10] だけ助ける。そのスタンスを徹底したこと でグループの結束は変って強まった。こう
[38:15] でグループの結束は変って強まった。こう してグループは着実に成長していった。
[38:19] してグループは着実に成長していった。 大城正規を過去に名ロジスティクス、赤嶺
[38:23] 大城正規を過去に名ロジスティクス、赤嶺 テクノロジーズ、コチンメンテナンス、
[38:27] テクノロジーズ、コチンメンテナンス、 ハエテスティング、それぞれが独立した
[38:30] ハエテスティング、それぞれが独立した 企業でありながら根こは1つにつがって
[38:33] 企業でありながら根こは1つにつがって いる。やがてグループの操縦員は約
[38:38] いる。やがてグループの操縦員は約 2000名、年焼合計は約800億円に
[38:42] 2000名、年焼合計は約800億円に 達していた。名にお前結婚する気はないの
[38:47] 達していた。名にお前結婚する気はないの かと聞かれたことがある。笑ってごまかし
[38:50] かと聞かれたことがある。笑ってごまかし た。朝から晩まで工場に張りつき、残りの
[38:55] た。朝から晩まで工場に張りつき、残りの 時間はグループの運営に当てる暮らしだ。
[38:59] 時間はグループの運営に当てる暮らしだ。 恋愛に咲く時間も心の余裕も持ち合わせて
[39:03] 恋愛に咲く時間も心の余裕も持ち合わせて いなかった。1度だけ宮里が気を聞かせて
[39:07] いなかった。1度だけ宮里が気を聞かせて 見合いの話を持ってきたことがある。喫茶
[39:11] 見合いの話を持ってきたことがある。喫茶 店で1時間ほど話したが、相手の女性がお
[39:16] 店で1時間ほど話したが、相手の女性がお 休みの日は何をされていますかと聞いてき
[39:19] 休みの日は何をされていますかと聞いてき た時、答えに詰まった。休みの日も工場に
[39:23] た時、答えに詰まった。休みの日も工場に いるからだ。見合いの相手は丁寧に事態の
[39:27] いるからだ。見合いの相手は丁寧に事態の 連絡をくれた。名は呆れたように笑った。
[39:33] 連絡をくれた。名は呆れたように笑った。 お前は工場と結婚してるんだよ。否定はし
[39:37] お前は工場と結婚してるんだよ。否定はし なかった。この工場が金属の匂いが俺の
[39:42] なかった。この工場が金属の匂いが俺の 全てだった。グループの年焼が800個
[39:46] 全てだった。グループの年焼が800個 超えても俺の暮らしは何も変わっていない
[39:49] 超えても俺の暮らしは何も変わっていない 。名古屋赤嶺にはもっと立派なオフィスを
[39:54] 。名古屋赤嶺にはもっと立派なオフィスを 構えたらどうだと何度か言われたが断り
[39:57] 構えたらどうだと何度か言われたが断り 続けている。を離れたら何のためにこの
[40:01] 続けている。を離れたら何のためにこの 仲間を集めたのか忘れてしまう。
[40:06] 仲間を集めたのか忘れてしまう。 汗を書くことこそが俺たちの原点だ。党和
[40:11] 汗を書くことこそが俺たちの原点だ。党和 重との取引はグループの中でも最も深い
[40:14] 重との取引はグループの中でも最も深い 関係にあった。
[40:17] 関係にあった。 白正規が精密部品を供給し、ナゴ
[40:20] 白正規が精密部品を供給し、ナゴ ロジスティックスが製品の物流をになり、
[40:24] ロジスティックスが製品の物流をになり、 赤嶺テクノロジーズが車内システムの保障
[40:27] 赤嶺テクノロジーズが車内システムの保障 を行い、コチメンテナンスが向上設備の
[40:30] を行い、コチメンテナンスが向上設備の 保全を受け負っている。党の生産活動の
[40:35] 保全を受け負っている。党の生産活動の あらゆる局面に俺たちのグループが関わっ
[40:38] あらゆる局面に俺たちのグループが関わっ ていた。部品供給の7割、物流の6割
[40:44] ていた。部品供給の7割、物流の6割 システム保全のほぼ全て設備保全の大半
[40:49] システム保全のほぼ全て設備保全の大半 東亜和重厚という巨大メーカーの屋台骨を
[40:53] 東亜和重厚という巨大メーカーの屋台骨を 俺たちのグループが支えているのだ。
[40:56] 俺たちのグループが支えているのだ。 ただし東亜の上層部はそのことを正確には
[41:01] ただし東亜の上層部はそのことを正確には 把握していなかった。彼らにとって大城
[41:05] 把握していなかった。彼らにとって大城 正規は下町の町場であり、名
[41:08] 正規は下町の町場であり、名 ロジスティックスは中の運送会社であり、
[41:12] ロジスティックスは中の運送会社であり、 赤嶺テクノロジーズは小さなIT会社で
[41:16] 赤嶺テクノロジーズは小さなIT会社で しかない。それぞれが別っこの取引先とし
[41:20] しかない。それぞれが別っこの取引先とし て認識されているだけで、その全てが1つ
[41:23] て認識されているだけで、その全てが1つ のグループとして繋がっていることを党和
[41:27] のグループとして繋がっていることを党和 銃校の経営人は知らない。知る必要もない
[41:31] 銃校の経営人は知らない。知る必要もない と思っていたのだろう。下受けの実態など
[41:34] と思っていたのだろう。下受けの実態など 彼らの関心の外にあった。式天の招待上は
[41:39] 彼らの関心の外にあった。式天の招待上は 大代正規だけでなくグループ各者にも届い
[41:42] 大代正規だけでなくグループ各者にも届い ていた。名ロジスティックスに20名分、
[41:47] ていた。名ロジスティックスに20名分、 赤嶺テクノロジーズに15名分、コチ
[41:51] 赤嶺テクノロジーズに15名分、コチ メンテナンスに10名分、その他の
[41:54] メンテナンスに10名分、その他の グループ企業にも合わせて35名分。合計
[41:59] グループ企業にも合わせて35名分。合計 80名の招待が俺たちのグループに届いて
[42:03] 80名の招待が俺たちのグループに届いて いる計算になる。東和重行は知らない。
[42:08] いる計算になる。東和重行は知らない。 150名の招待客のうち下半数が俺の
[42:12] 150名の招待客のうち下半数が俺の グループの関係者だということを。大城
[42:16] グループの関係者だということを。大城 グループという名前はどこにも存在しない
[42:18] グループという名前はどこにも存在しない 。上も名刺の上にも各者はそれぞれ独立し
[42:24] 。上も名刺の上にも各者はそれぞれ独立し た企業であり共通の持ち株会社もなければ
[42:28] た企業であり共通の持ち株会社もなければ グループ名を関した看板もない。旗から
[42:32] グループ名を関した看板もない。旗から 見れば互いに何の関係もない中小企業の
[42:36] 見れば互いに何の関係もない中小企業の 集まりにしか見えない。その1つ1つを
[42:40] 集まりにしか見えない。その1つ1つを 意図で結ぶのが大代淳という男の存在だっ
[42:44] 意図で結ぶのが大代淳という男の存在だっ た。この見えないグループは意図的に選ん
[42:48] た。この見えないグループは意図的に選ん だ携帯だ。
[42:50] だ携帯だ。 表に出れば大手から警戒される。目立てば
[42:54] 表に出れば大手から警戒される。目立てば 潰しにかかられる。だが小さな企業が手を
[42:59] 潰しにかかられる。だが小さな企業が手を 携えサプライチェーンの要を1つずつ抑え
[43:02] 携えサプライチェーンの要を1つずつ抑え ていけば気づいた時には大手メーカーの
[43:06] ていけば気づいた時には大手メーカーの 生命線がこちらの手の中にある。名はこの
[43:10] 生命線がこちらの手の中にある。名はこの 戦略をステルス経営と呼んで面白がった。
[43:15] 戦略をステルス経営と呼んで面白がった。 その日の夕方、宮里が珍しく顔をしながら
[43:20] その日の夕方、宮里が珍しく顔をしながら 事務所に入ってきた。デスクの上に何枚か
[43:24] 事務所に入ってきた。デスクの上に何枚か のプリントアウトを置くと、腕を組んで
[43:27] のプリントアウトを置くと、腕を組んで こちらを見た。社長、東亜銃校の専務が
[43:32] こちらを見た。社長、東亜銃校の専務が 変わったのご存知ですか?俺は先盤の
[43:36] 変わったのご存知ですか?俺は先盤の 手入れをしながら首をかしげた。東亜の
[43:40] 手入れをしながら首をかしげた。東亜の 人事にまで目を配る余裕はない。黒崎常彦
[43:45] 人事にまで目を配る余裕はない。黒崎常彦 という人です。半年前に就任したんですが
[43:48] という人です。半年前に就任したんですが 、鳥行き先の評判がよくありません。宮里
[43:53] 、鳥行き先の評判がよくありません。宮里 が集めた情報によると、黒崎常彦は55歳
[43:57] が集めた情報によると、黒崎常彦は55歳 、大手勝者から亜和銃校に転じた経歴を
[44:01] 、大手勝者から亜和銃校に転じた経歴を 持つ人物で学伐と車内政治を駆使して慰例
[44:06] 持つ人物で学伐と車内政治を駆使して慰例 の速さで専務にまで登り詰めたらしい。
[44:09] の速さで専務にまで登り詰めたらしい。 現場経験がほとんどなく取引先を企業規模
[44:13] 現場経験がほとんどなく取引先を企業規模 で拡付けし、中小企業に対しては応平な
[44:17] で拡付けし、中小企業に対しては応平な 態度を取ることで知られているという。
[44:20] 態度を取ることで知られているという。 先月うちに部品の単価引き下げを要求して
[44:24] 先月うちに部品の単価引き下げを要求して きたのもこの人の指示だったようです。
[44:26] きたのもこの人の指示だったようです。 グループの他の会社にも似たような話が来
[44:29] グループの他の会社にも似たような話が来 てるみたいで、名古子さんのところにも
[44:32] てるみたいで、名古子さんのところにも 物流費の見直しの打信があったそうです。
[44:36] 物流費の見直しの打信があったそうです。 嫌な予感がした。新しい専務が就任して
[44:41] 嫌な予感がした。新しい専務が就任して 半年行き
[44:43] 半年行き 先への締めつけが強くなっている。それ
[44:46] 先への締めつけが強くなっている。それ 自体はよくある話だが、相手が俺たちの
[44:50] 自体はよくある話だが、相手が俺たちの グループの全体像を把握していないまま
[44:53] グループの全体像を把握していないまま 強気に出ているのだとしたら、それは
[44:55] 強気に出ているのだとしたら、それは かなり危い状況だ。式天本当に出席され
[45:01] かなり危い状況だ。式天本当に出席され ますか?少し迷ったが俺は頷いた。
[45:06] ますか?少し迷ったが俺は頷いた。 先の節めを祝うのはビジネスの筋だ。
[45:10] 先の節めを祝うのはビジネスの筋だ。 新しい専務がどんな人物であれ、30年の
[45:14] 新しい専務がどんな人物であれ、30年の 付き合いがある企業の50周年を無視する
[45:17] 付き合いがある企業の50周年を無視する わけにはいかない。ただ胸の奥で小さなト
[45:22] わけにはいかない。ただ胸の奥で小さなト のようなものが引っかかっていた。この
[45:27] のようなものが引っかかっていた。この 俺たちを見下しているのかもしれない。
[45:30] 俺たちを見下しているのかもしれない。 コ場の親父が安いスーツで式点に現れたら
[45:35] コ場の親父が安いスーツで式点に現れたら どんな顔をするだろう。
[45:38] どんな顔をするだろう。 その夜アパートの狭いキッチンで1人分の
[45:42] その夜アパートの狭いキッチンで1人分の 夕食を作った冷蔵庫の中身は卵と納豆と
[45:47] 夕食を作った冷蔵庫の中身は卵と納豆と 缶ンビール。テレビのニュースを流し
[45:50] 缶ンビール。テレビのニュースを流し ながら味噌汁をすする。社員たちには
[45:54] ながら味噌汁をすする。社員たちには もっといいもの食べてくださいよとよく
[45:57] もっといいもの食べてくださいよとよく 言われるが、贅沢する気にはなれなかった
[46:00] 言われるが、贅沢する気にはなれなかった 。金は仲間が困った時のために取っておく
[46:04] 。金は仲間が困った時のために取っておく 。親父もこんな暮らしをしていた。腕1本
[46:09] 。親父もこんな暮らしをしていた。腕1本 で工場を守り、余計な金は使わない男だっ
[46:13] で工場を守り、余計な金は使わない男だっ た。親父が気づいたものを俺は少し大きく
[46:18] た。親父が気づいたものを俺は少し大きく した。だが根っこは同じだ。式天皇2週間
[46:24] した。だが根っこは同じだ。式天皇2週間 前、俺はグループの主要メンバーとウェブ
[46:28] 前、俺はグループの主要メンバーとウェブ 会議を開いた。昼休みを少し過ぎた時間帯
[46:32] 会議を開いた。昼休みを少し過ぎた時間帯 、工場では加藤たちが午後の作業準備を
[46:36] 、工場では加藤たちが午後の作業準備を 始めている。先盤の段機運転の音が事務所
[46:41] 始めている。先盤の段機運転の音が事務所 の壁越しにかに聞こえてくる。白正規の
[46:46] の壁越しにかに聞こえてくる。白正規の 事務所に据えたノートパソコンの画面には
[46:49] 事務所に据えたノートパソコンの画面には 名ひと赤嶺け一の顔が映っている。名は
[46:54] 名ひと赤嶺け一の顔が映っている。名は 自社の事務所から。赤嶺はどこかのカフェ
[46:57] 自社の事務所から。赤嶺はどこかのカフェ からの参加だった。赤嶺はいつもこうだ。
[47:02] からの参加だった。赤嶺はいつもこうだ。 オフィスに縛られるのを嫌い。ノート
[47:05] オフィスに縛られるのを嫌い。ノート パソコンを1つで仕事をこなす
[47:08] パソコンを1つで仕事をこなす ITらしいと言えばらしい。東亜重行の
[47:12] ITらしいと言えばらしい。東亜重行の 式点。うちにも20名分の正体が来てる。
[47:17] 式点。うちにも20名分の正体が来てる。 ドライバーの中から出席者を選ばなきゃ
[47:19] ドライバーの中から出席者を選ばなきゃ ならないんだが、正直あんまり気のりし
[47:22] ならないんだが、正直あんまり気のりし ねえな。名は画面の中で缶コーヒーを飲ん
[47:27] ねえな。名は画面の中で缶コーヒーを飲ん でいた。名古はいつでもどこでも缶
[47:30] でいた。名古はいつでもどこでも缶 コーヒーを手にしている。長距離トラック
[47:33] コーヒーを手にしている。長距離トラック のドライバーだった頃の習慣が抜けない
[47:36] のドライバーだった頃の習慣が抜けない らしい。その謎が今日は珍しく苦い顔をし
[47:41] らしい。その謎が今日は珍しく苦い顔をし ている。名が渋い顔をしているのには理由
[47:45] ている。名が渋い顔をしているのには理由 があった。先月党和銃校の勾配部門から
[47:51] があった。先月党和銃校の勾配部門から 物流費の一立15%引き下げを要求する
[47:55] 物流費の一立15%引き下げを要求する 文書が届いたのだという。文面は事務的
[47:58] 文書が届いたのだという。文面は事務的 だったがその裏に黒崎専務の移行がある
[48:02] だったがその裏に黒崎専務の移行がある ことは明白だった。うちにも来ましたよ。
[48:05] ことは明白だった。うちにも来ましたよ。 似たような話。星契約の更新条件を見直し
[48:09] 似たような話。星契約の更新条件を見直し たいって。するに値下げしろってことです
[48:13] たいって。するに値下げしろってことです よね。今まで7年間1度もトラブルなしで
[48:17] よね。今まで7年間1度もトラブルなしで 運用してきた実績があるのに専務が変わっ
[48:21] 運用してきた実績があるのに専務が変わっ た途端にこれだ。画面越しに見える赤嶺の
[48:25] た途端にこれだ。画面越しに見える赤嶺の 表情には明らかな苛立ちが浮かんでいた。
[48:29] 表情には明らかな苛立ちが浮かんでいた。 赤嶺テクノロジーズは東和重行の車内
[48:32] 赤嶺テクノロジーズは東和重行の車内 システムの星を一手に担っている。
[48:36] システムの星を一手に担っている。 サーバーの監視からネットワーク障害の
[48:39] サーバーの監視からネットワーク障害の 対応。業務アプリケーションの更新まで
[48:43] 対応。業務アプリケーションの更新まで 東亜重行のIT基盤を365日
[48:49] 東亜重行のIT基盤を365日 体制で守り続けてきた。7年間重大な
[48:53] 体制で守り続けてきた。7年間重大な システム障害は0。それは赤嶺のチームが
[48:58] システム障害は0。それは赤嶺のチームが 与通し監視画面を見つめ、小さな異常の目
[49:02] 与通し監視画面を見つめ、小さな異常の目 を積み続けてきた結果だ。その価値を数字
[49:06] を積み続けてきた結果だ。その価値を数字 でしか物事を見られない戦務には理解でき
[49:09] でしか物事を見られない戦務には理解でき ないのだろう。
[49:11] ないのだろう。 赤嶺が特に生き通っていたのには具体的な
[49:15] 赤嶺が特に生き通っていたのには具体的な 理由があった。先月東和重行の機間
[49:20] 理由があった。先月東和重行の機間 サーバーの1台が深夜にディスク障害の
[49:24] サーバーの1台が深夜にディスク障害の 兆候を示した。赤嶺のチームはアラートを
[49:27] 兆候を示した。赤嶺のチームはアラートを 即座にキャッチし、作業を開始した。3人
[49:31] 即座にキャッチし、作業を開始した。3人 の技術者が息を詰めてキーボードを叩き
[49:34] の技術者が息を詰めてキーボードを叩き 続け、日付が変わる前にバックアップへの
[49:38] 続け、日付が変わる前にバックアップへの 切り替えを完了させた。
[49:41] 切り替えを完了させた。 もし対応が遅れていたら翌朝の業務開始時
[49:45] もし対応が遅れていたら翌朝の業務開始時 にシステムダウンが発生し、全社員が仕事
[49:49] にシステムダウンが発生し、全社員が仕事 を始められない事態になるところだった。
[49:52] を始められない事態になるところだった。 だが東亜和銃校側はこの対応を知らない。
[49:56] だが東亜和銃校側はこの対応を知らない。 知る必要もないと思っている。障害が起き
[50:00] 知る必要もないと思っている。障害が起き ていないのだから保守の必要性を感じない
[50:03] ていないのだから保守の必要性を感じない 。それが現望知らない人間の思考回路だ。
[50:09] 。それが現望知らない人間の思考回路だ。 神峰はトラブルが起きないこと自体がうち
[50:12] 神峰はトラブルが起きないこと自体がうち の仕事の成果なんですがと苦していた。俺
[50:17] の仕事の成果なんですがと苦していた。俺 は腕を組んで2人の話を聞いていた。黒崎
[50:22] は腕を組んで2人の話を聞いていた。黒崎 常彦
[50:24] 常彦 就任してまだ半年だがすでにグループ内の
[50:28] 就任してまだ半年だがすでにグループ内の あちこちから不満の声が上がっている。
[50:32] あちこちから不満の声が上がっている。 行き先を企業規模で格付けし、ランクの
[50:35] 行き先を企業規模で格付けし、ランクの 低い会社には挨拶もしないという噂は本当
[50:39] 低い会社には挨拶もしないという噂は本当 だったようだ。大手勝者から展じてきた男
[50:43] だったようだ。大手勝者から展じてきた男 にとって中小企業は取り替え可能な子まで
[50:47] にとって中小企業は取り替え可能な子まで しかないのだろう。だがそのコマを束に
[50:51] しかないのだろう。だがそのコマを束に すると何が起きるかこの男は分かってい
[50:54] すると何が起きるかこの男は分かってい ない。式典には出る。全員出てくれ。と
[51:01] ない。式典には出る。全員出てくれ。と 赤嶺が同時に画面の中でこちらを見た。
[51:05] 赤嶺が同時に画面の中でこちらを見た。 2人の表情が一瞬で引き締まるのが分かっ
[51:08] 2人の表情が一瞬で引き締まるのが分かっ た。俺がこういう切り出し方をする時、
[51:12] た。俺がこういう切り出し方をする時、 ただの世間話ではないことを長い付き合い
[51:15] ただの世間話ではないことを長い付き合い の中で知っている。東亜重との付き合いは
[51:20] の中で知っている。東亜重との付き合いは 長い。50年の節目を祝うのは筋だ。ただ
[51:24] 長い。50年の節目を祝うのは筋だ。ただ 1つだけ約束してくれ。地点の最中に俺
[51:29] 1つだけ約束してくれ。地点の最中に俺 からのメッセージが届くかもしれない。
[51:32] からのメッセージが届くかもしれない。 撤収の2文字だ。届いたら理由は聞かず
[51:36] 撤収の2文字だ。届いたら理由は聞かず 全員黙って会場を出てくれ。静かに騒がず
[51:40] 全員黙って会場を出てくれ。静かに騒がず 。ただ席を立って出るだけでいい。画面の
[51:45] 。ただ席を立って出るだけでいい。画面の 中で名が真をあげた。赤嶺はカフェの紙
[51:49] 中で名が真をあげた。赤嶺はカフェの紙 コップを手にしたままじっとこちらを
[51:52] コップを手にしたままじっとこちらを 見つめている。何か起きるのかという問い
[51:56] 見つめている。何か起きるのかという問い が2人の目に浮かんでいった。何も起き
[52:00] が2人の目に浮かんでいった。何も起き なければ普通に式天を楽しんで帰ればいい
[52:03] なければ普通に式天を楽しんで帰ればいい 。ただ万が一の時の備えだ。名はしばらく
[52:08] 。ただ万が一の時の備えだ。名はしばらく 黙っていたが、やがて静かに同意を示した
[52:11] 黙っていたが、やがて静かに同意を示した 。長い付き合いだ。俺がこういう言い方を
[52:16] 。長い付き合いだ。俺がこういう言い方を する時、ただの記ではないことを名は知っ
[52:20] する時、ただの記ではないことを名は知っ ている。了解です。うちのメンバーにも
[52:24] ている。了解です。うちのメンバーにも 伝えておきます。赤嶺の声にはいつもの軽
[52:28] 伝えておきます。赤嶺の声にはいつもの軽 さがなかった。10年前経営破綻寸前だっ
[52:33] さがなかった。10年前経営破綻寸前だっ た自分を救ってくれた男からの依頼だ。
[52:37] た自分を救ってくれた男からの依頼だ。 理由は聞かない。ただ信じて動く。赤嶺の
[52:42] 理由は聞かない。ただ信じて動く。赤嶺の 中にある中義心はITという洗練された
[52:46] 中にある中義心はITという洗練された 肩書きの下に職人片着の1本筋が通って
[52:50] 肩書きの下に職人片着の1本筋が通って いる。
[52:52] いる。 は別の切り口から聞いてきた。お城ろ、
[52:56] は別の切り口から聞いてきた。お城ろ、 もし撤収を使うことになったらその後の
[53:00] もし撤収を使うことになったらその後の シナリオはあるのか?ある。だが今は言わ
[53:05] シナリオはあるのか?ある。だが今は言わ ない。使わずに住むかもしれないんだ。
[53:09] ない。使わずに住むかもしれないんだ。 分かった。お前がそう言うならそれでいい
[53:12] 分かった。お前がそう言うならそれでいい 。うちのドライバーたちには俺から直接
[53:15] 。うちのドライバーたちには俺から直接 話す。あいつら口は硬いから心配するな。
[53:20] 話す。あいつら口は硬いから心配するな。 長い付き合いで培われた信頼はこういう時
[53:24] 長い付き合いで培われた信頼はこういう時 に本量を発揮する。細かい説明はいらない
[53:28] に本量を発揮する。細かい説明はいらない 。こちメンテナンスのこちよしとにも個別
[53:32] 。こちメンテナンスのこちよしとにも個別 に電話を入れた。こちは相変わらずの僕突
[53:36] に電話を入れた。こちは相変わらずの僕突 とした口調だった。わかりました。大城
[53:40] とした口調だった。わかりました。大城 さん。こちは多くを語らない男だが、その
[53:45] さん。こちは多くを語らない男だが、その 分動は正確で迅速だ。工場の設備が故障
[53:50] 分動は正確で迅速だ。工場の設備が故障 すれば真夜中でも駆けつけてくれる。
[53:53] すれば真夜中でも駆けつけてくれる。 油まみれの手で黙々と部品を交換し、修理
[53:58] 油まみれの手で黙々と部品を交換し、修理 が終わると治りましたとだけ言って帰って
[54:01] が終わると治りましたとだけ言って帰って いく。15年間1度も約束を破ったことが
[54:06] いく。15年間1度も約束を破ったことが ない。言葉の少なさは信頼の暑さの裏返し
[54:10] ない。言葉の少なさは信頼の暑さの裏返し だ。
[54:12] だ。 会議を終えた後、俺は名嶺に個別に連絡を
[54:16] 会議を終えた後、俺は名嶺に個別に連絡を 取り、グループ会社の出席者全員に同じ
[54:21] 取り、グループ会社の出席者全員に同じ 指示を行き渡らせるよう依頼した。大盛紀
[54:25] 指示を行き渡らせるよう依頼した。大盛紀 から12名、名ロジスティックスから20
[54:29] から12名、名ロジスティックスから20 名、赤嶺テクノロジーズから15名、こち
[54:33] 名、赤嶺テクノロジーズから15名、こち メンテナンスから10名、その他の
[54:36] メンテナンスから10名、その他の グループ企業から合わせて23名。全員が
[54:41] グループ企業から合わせて23名。全員が 俺のメッセージ1つで動く体制を整える
[54:44] 俺のメッセージ1つで動く体制を整える ことになる。宮里にも完潔に事情を伝えた
[54:48] ことになる。宮里にも完潔に事情を伝えた 。式典の当日、俺から撤収という
[54:52] 。式典の当日、俺から撤収という メッセージが来たらグループ各者との連絡
[54:56] メッセージが来たらグループ各者との連絡 を取り契約の見直しに関する書類の準備を
[54:59] を取り契約の見直しに関する書類の準備を 始めてほしいと宮里は一瞬だけ目を見開い
[55:04] 始めてほしいと宮里は一瞬だけ目を見開い たが、すぐにいつもの冷静な表情に戻り
[55:08] たが、すぐにいつもの冷静な表情に戻り 分かりましたとだけ答えた。10年間俺の
[55:12] 分かりましたとだけ答えた。10年間俺の 判断に従い続けてきた人だ。余計な質問は
[55:17] 判断に従い続けてきた人だ。余計な質問は しない。ただ準備すべきことを確認し、
[55:21] しない。ただ準備すべきことを確認し、 静かに実行に移す。社長、1つだけ。もし
[55:27] 静かに実行に移す。社長、1つだけ。もし 撤収を使うことになった場合、グループ
[55:30] 撤収を使うことになった場合、グループ 各者への正式な通告文書のひ方を作って
[55:34] 各者への正式な通告文書のひ方を作って おきましょうか。さすがだと関心した。俺
[55:39] おきましょうか。さすがだと関心した。俺 が言う前に次の手を読んでいる。俺は無言
[55:43] が言う前に次の手を読んでいる。俺は無言 で承諾した。宮里は無言でデスクに戻り、
[55:48] で承諾した。宮里は無言でデスクに戻り、 翌朝には完璧な通告文書のひ方が俺の
[55:52] 翌朝には完璧な通告文書のひ方が俺の デスクの上に置かれていた。法的に歌詞の
[55:56] デスクの上に置かれていた。法的に歌詞の ない完結で、しかし明確な意思を伝える文
[56:00] ない完結で、しかし明確な意思を伝える文 だった。使わなくて住むことを祈りながら
[56:05] だった。使わなくて住むことを祈りながら 俺はその書類をデスクの引き出しにしまっ
[56:08] 俺はその書類をデスクの引き出しにしまっ た。事務所の窓から外を見た。裏を野良猫
[56:13] た。事務所の窓から外を見た。裏を野良猫 がしなやかに歩いていく。あの猫のように
[56:18] がしなやかに歩いていく。あの猫のように 自分の縄張りは自分の力で守る。大手の傘
[56:22] 自分の縄張りは自分の力で守る。大手の傘 には入らない。それが俺たちの竜儀だ。
[56:27] には入らない。それが俺たちの竜儀だ。 コードワードを設定したのは保険のつもり
[56:29] コードワードを設定したのは保険のつもり だった。使わずに住むのが1番いい。だが
[56:34] だった。使わずに住むのが1番いい。だが 、黒崎がグループの全体像を把握してい
[56:37] 、黒崎がグループの全体像を把握してい ない以上、何が起きてもおかしくないと
[56:40] ない以上、何が起きてもおかしくないと いう覚悟は必要だった。式天の1週間前、
[56:46] いう覚悟は必要だった。式天の1週間前、 宮里に頼んで両販店でスーツを買ってきて
[56:49] 宮里に頼んで両販店でスーツを買ってきて もらった。新士チェーン店の吊しのスーツ
[56:53] もらった。新士チェーン店の吊しのスーツ で価格は2万円もしなかった。自分で買い
[56:58] で価格は2万円もしなかった。自分で買い に行く時間が惜しかったのもあるが、正直
[57:01] に行く時間が惜しかったのもあるが、正直 に言えばスーツに金をかける気になれ
[57:04] に言えばスーツに金をかける気になれ なかった。年に数回しか着ないものに
[57:08] なかった。年に数回しか着ないものに 何万円も出すのは俺の感覚では贅沢を
[57:12] 何万円も出すのは俺の感覚では贅沢を 通り越して無駄だ。宮里がスーツの入った
[57:16] 通り越して無駄だ。宮里がスーツの入った 神袋を事務所のテーブルに置いた時、その
[57:19] 神袋を事務所のテーブルに置いた時、その 表情にはかつかな不満が浮かんでいた。
[57:23] 表情にはかつかな不満が浮かんでいた。 社長、せめてもう少しまともなスーツにし
[57:27] 社長、せめてもう少しまともなスーツにし ませんか?式典ですよ。150人規模の。
[57:33] ませんか?式典ですよ。150人規模の。 俺は肩をすめながら紙袋からスーツを
[57:36] 俺は肩をすめながら紙袋からスーツを 取り出した。そんなに大げさな話じゃない
[57:39] 取り出した。そんなに大げさな話じゃない 。紺色の無字悪くない。少なくとも清潔感
[57:45] 。紺色の無字悪くない。少なくとも清潔感 はある。周りはみんなテーラーメイドの
[57:48] はある。周りはみんなテーラーメイドの スーツですよ。大城正規の看板を背負って
[57:52] スーツですよ。大城正規の看板を背負って いくんですから。
[57:54] いくんですから。 看板で勝負してるわけじゃない。仕事の
[57:57] 看板で勝負してるわけじゃない。仕事の 中身を見てくれる人間はスーツの値段
[58:00] 中身を見てくれる人間はスーツの値段 なんか気にしないよ。宮里は何か言いた
[58:03] なんか気にしないよ。宮里は何か言いた そうにしていたが、結局は小さくため息を
[58:07] そうにしていたが、結局は小さくため息を ついただけだった。この人は俺の性格を
[58:11] ついただけだった。この人は俺の性格を よく分かっている。言っても聞かないこと
[58:14] よく分かっている。言っても聞かないこと は言わない。そういう割り切りができる
[58:17] は言わない。そういう割り切りができる 人間だからこそ10年以上もこの工場を
[58:21] 人間だからこそ10年以上もこの工場を 支えてくれているのだろう。
[58:25] 支えてくれているのだろう。 その日の夕方加藤が帰り側に声をかけてき
[58:29] その日の夕方加藤が帰り側に声をかけてき た。そのスーツで式点行くんですか?加藤
[58:34] た。そのスーツで式点行くんですか?加藤 は腕を組んでそのスーツを上から下まで
[58:38] は腕を組んでそのスーツを上から下まで 眺めた。俺は肩をすめた。加藤はしばらく
[58:43] 眺めた。俺は肩をすめた。加藤はしばらく 黙っていたが、やがてボそっと口を開いた
[58:46] 黙っていたが、やがてボそっと口を開いた 。社長、俺は知ってますよ。うちの社長が
[58:51] 。社長、俺は知ってますよ。うちの社長が どれだけすごい男か。
[58:53] どれだけすごい男か。 スーツなんか関係ない。あの先盤で
[58:56] スーツなんか関係ない。あの先盤で ゴミクロンを出す社長を見たらどんな
[58:59] ゴミクロンを出す社長を見たらどんな スーツを着てるやつだって黙りますよ。
[59:02] スーツを着てるやつだって黙りますよ。 加藤は照れ臭そうに背中を向けて工場を出
[59:06] 加藤は照れ臭そうに背中を向けて工場を出 ていった。不器用な男だ。だがその不器用
[59:11] ていった。不器用な男だ。だがその不器用 さが妙に嬉しかった。加藤は親父の台から
[59:15] さが妙に嬉しかった。加藤は親父の台から この工場にいる唯一の社員だ。親父が倒れ
[59:20] この工場にいる唯一の社員だ。親父が倒れ た時、他の社員が動揺する中で加藤だけ
[59:24] た時、他の社員が動揺する中で加藤だけ はまって自分の持場に立ち続けた。若旦那
[59:28] はまって自分の持場に立ち続けた。若旦那 、俺はここにいますから。あの一言を俺は
[59:33] 、俺はここにいますから。あの一言を俺は 一生忘れない。こういう社員がいてくれる
[59:37] 一生忘れない。こういう社員がいてくれる から俺はこの工場を守り続けられる。この
[59:41] から俺はこの工場を守り続けられる。この 12人がいるからどんな嵐が来ても先盤の
[59:46] 12人がいるからどんな嵐が来ても先盤の 前に立ち続けられるのだ。
[59:49] 前に立ち続けられるのだ。 式典の3日前、俺は工場の仕事を終えた後
[59:54] 式典の3日前、俺は工場の仕事を終えた後 、1人で事務所に残っていた。パソコンの
[59:58] 、1人で事務所に残っていた。パソコンの 画面には東和重行との取引データが表示さ
[01:00:01] 画面には東和重行との取引データが表示さ れている。大盛紀単体での取引額は年間約
[01:00:07] れている。大盛紀単体での取引額は年間約 3億円。大手メーカーにとっては全体の
[01:00:11] 3億円。大手メーカーにとっては全体の 売上からすればビビたるものだ。だが
[01:00:15] 売上からすればビビたるものだ。だが グループ全体で見ると話は変わる。
[01:00:18] グループ全体で見ると話は変わる。 ロジスティクスの物流契約が年間約
[01:00:22] ロジスティクスの物流契約が年間約 40億円。赤峰テクノロジーズのシステム
[01:00:26] 40億円。赤峰テクノロジーズのシステム 保守が年間約8億円。コチメンテナンスの
[01:00:30] 保守が年間約8億円。コチメンテナンスの 設備保全が年間約12億円。その他の
[01:00:35] 設備保全が年間約12億円。その他の グループ企業を合わせると東亜重口に
[01:00:38] グループ企業を合わせると東亜重口に 対するグループ全体の取引は年間約
[01:00:42] 対するグループ全体の取引は年間約 120億円に達する。和行の年少が約
[01:00:48] 120億円に達する。和行の年少が約 2000億円だとするとそのうちの6%が
[01:00:52] 2000億円だとするとそのうちの6%が 俺たちのグループとの取引で成り立って
[01:00:55] 俺たちのグループとの取引で成り立って いる計算だ。6%という数字は一見すると
[01:01:00] いる計算だ。6%という数字は一見すると 大したことがないように聞こえるかもしれ
[01:01:02] 大したことがないように聞こえるかもしれ ない。だがそれはサプライチェーンの要所
[01:01:06] ない。だがそれはサプライチェーンの要所 に位置する6%だ。部品が止まれば生産
[01:01:10] に位置する6%だ。部品が止まれば生産 ラインが止まる。物流が止まれば製品を
[01:01:14] ラインが止まる。物流が止まれば製品を 出荷できない。
[01:01:16] 出荷できない。 システム保守が止まれば車内の業務が麻痺
[01:01:19] システム保守が止まれば車内の業務が麻痺 する。設備保全が止まれば工場そのものが
[01:01:24] する。設備保全が止まれば工場そのものが 動かなくなる。たった6%だがそれは心臓
[01:01:29] 動かなくなる。たった6%だがそれは心臓 の6%に相当する。止まったら全身が
[01:01:33] の6%に相当する。止まったら全身が 止まる。そういう6%だ。パソコンの画面
[01:01:38] 止まる。そういう6%だ。パソコンの画面 を閉じた窓の外、窓の向こうに
[01:01:42] を閉じた窓の外、窓の向こうに スカイツリーの先端がかかに見える。
[01:01:45] スカイツリーの先端がかかに見える。 この下町ちの片隅から大手メーカーの生命
[01:01:49] この下町ちの片隅から大手メーカーの生命 線を握っている。誰にも知られていない
[01:01:53] 線を握っている。誰にも知られていない 事実だ。だがもしその仕事を軽論じる人間
[01:01:57] 事実だ。だがもしその仕事を軽論じる人間 がいるのなら俺たちの本当の力を見せる
[01:02:02] がいるのなら俺たちの本当の力を見せる ことになるかもしれない。使わずに住む
[01:02:05] ことになるかもしれない。使わずに住む ことを祈りながらも一切の躊躇しない覚悟
[01:02:09] ことを祈りながらも一切の躊躇しない覚悟 を胸にしまい込んだ。
[01:02:12] を胸にしまい込んだ。 式天前日の夜工場に1人残っていた。椅子
[01:02:17] 式天前日の夜工場に1人残っていた。椅子 に座って天井を見上げる。昼間は機械の音
[01:02:22] に座って天井を見上げる。昼間は機械の音 で賑やかなこの場所も夜は不思議なけさに
[01:02:26] で賑やかなこの場所も夜は不思議なけさに 包まれる。コンクリートの冷たい空気が肌
[01:02:30] 包まれる。コンクリートの冷たい空気が肌 に触れる。蛍光灯を落とした工場の中で
[01:02:35] に触れる。蛍光灯を落とした工場の中で 千盤やフライス版が暗がりにシルエットを
[01:02:38] 千盤やフライス版が暗がりにシルエットを 浮かべている。長年使い込んだ機械たちは
[01:02:43] 浮かべている。長年使い込んだ機械たちは まるで眠る獣のように静かだ。明日の夜も
[01:02:48] まるで眠る獣のように静かだ。明日の夜も こうしてここに座っていられるだろうか。
[01:02:52] こうしてここに座っていられるだろうか。 何が起きてもこの場所だけは失いたくない
[01:02:55] 何が起きてもこの場所だけは失いたくない 。この匂いとこの空気とこの機械たちだけ
[01:03:00] 。この匂いとこの空気とこの機械たちだけ は明日何が起きるかわからない。だが何が
[01:03:05] は明日何が起きるかわからない。だが何が あってもここに帰ってくるこの工場にそれ
[01:03:10] あってもここに帰ってくるこの工場にそれ だけは確かだった。工場の鍵を閉めて外に
[01:03:14] だけは確かだった。工場の鍵を閉めて外に 出ると夜空に薄い雲がかかっていた。その
[01:03:19] 出ると夜空に薄い雲がかかっていた。その 向こうに星がチラチラとまたいている。
[01:03:23] 向こうに星がチラチラとまたいている。 下町ちの夜は静かだ。どこかの家から
[01:03:27] 下町ちの夜は静かだ。どこかの家から テレビの音が漏れ聞こえ、野良猫が兵の上
[01:03:31] テレビの音が漏れ聞こえ、野良猫が兵の上 をしなやかに歩いている。俺はポケットに
[01:03:35] をしなやかに歩いている。俺はポケットに 手を突っ込んでアパートまでの道を
[01:03:39] 手を突っ込んでアパートまでの道を ゆっくりと歩いた。
[01:03:42] ゆっくりと歩いた。 式天当日の朝はいつもより早く目が覚めた
[01:03:45] 式天当日の朝はいつもより早く目が覚めた 。アラームが鳴る前に布団を出て窓を開け
[01:03:49] 。アラームが鳴る前に布団を出て窓を開け た。空晴れの空が広がっている。近所の
[01:03:54] た。空晴れの空が広がっている。近所の 公演からラジオ体操の音がかかに聞こえて
[01:03:58] 公演からラジオ体操の音がかかに聞こえて きた。いつもならこの時間にはもう工場に
[01:04:02] きた。いつもならこの時間にはもう工場に 向かっている。だが今日は違う。俺は自宅
[01:04:07] 向かっている。だが今日は違う。俺は自宅 のアパートで両販店のスーツに袖を通した
[01:04:10] のアパートで両販店のスーツに袖を通した 。鏡の前に立つときけした肌と太い指が
[01:04:16] 。鏡の前に立つときけした肌と太い指が いかにも間ば間違いな恋色の生地から浮い
[01:04:19] いかにも間ば間違いな恋色の生地から浮い て見える。ネクタイは5年前に買った
[01:04:23] て見える。ネクタイは5年前に買った ストライプのものを引き出しの奥から
[01:04:26] ストライプのものを引き出しの奥から 引っ張り出したが、結び方が怪しかった。
[01:04:30] 引っ張り出したが、結び方が怪しかった。 普段は作業技のチャックを上げるだけだ。
[01:04:34] 普段は作業技のチャックを上げるだけだ。 ネクタイの結び方など体が覚えているはず
[01:04:37] ネクタイの結び方など体が覚えているはず もない。何度かやり直してどうにか形にし
[01:04:41] もない。何度かやり直してどうにか形にし た。靴は茶色の皮革皮靴。年に数回しか
[01:04:46] た。靴は茶色の皮革皮靴。年に数回しか 履かないからつ先に細かなシが寄っている
[01:04:50] 履かないからつ先に細かなシが寄っている 。鏡に移る自分の姿はどう見ても町の親父
[01:04:56] 。鏡に移る自分の姿はどう見ても町の親父 が無理して清掃している感じだった。だが
[01:05:00] が無理して清掃している感じだった。だが 俺は見た目で勝負する人間じゃない。
[01:05:03] 俺は見た目で勝負する人間じゃない。 アパートを出て最寄り駅まで歩いた。商店
[01:05:07] アパートを出て最寄り駅まで歩いた。商店 街を通りすぎる時、八屋のおばちゃんが
[01:05:10] 街を通りすぎる時、八屋のおばちゃんが スーツ姿を珍しがって声をかけてきたの
[01:05:13] スーツ姿を珍しがって声をかけてきたの で行き
[01:05:15] で行き 先の集まりだとだけ答えて軽く手を振った
[01:05:18] 先の集まりだとだけ答えて軽く手を振った 。この町の人たちにとって俺はただの町の
[01:05:23] 。この町の人たちにとって俺はただの町の 親父。それが俺の日常であり俺の真実だ。
[01:05:29] 親父。それが俺の日常であり俺の真実だ。 電車の中でふとスマホを取り出した。
[01:05:33] 電車の中でふとスマホを取り出した。 グループの連絡もアプリを開くと各者の
[01:05:37] グループの連絡もアプリを開くと各者の 出席者から了解。準備完了のメッセージが
[01:05:41] 出席者から了解。準備完了のメッセージが 並んでいた。仲間全員が撤収のコード
[01:05:46] 並んでいた。仲間全員が撤収のコード ワードを受け取る準備を整えている。使う
[01:05:50] ワードを受け取る準備を整えている。使う ことにならなければいい。心からそう思い
[01:05:53] ことにならなければいい。心からそう思い ながらスマホをポケットに戻した。電車を
[01:05:58] ながらスマホをポケットに戻した。電車を 乗り継いで会場のシティホテルに向かった
[01:06:00] 乗り継いで会場のシティホテルに向かった 。都心の一等地に立つ高層ホテルの回転
[01:06:05] 。都心の一等地に立つ高層ホテルの回転 ドアを押して中に入ると工場とは全く
[01:06:09] ドアを押して中に入ると工場とは全く 異なる空気が肌を包んだ。香水と鼻の匂い
[01:06:14] 異なる空気が肌を包んだ。香水と鼻の匂い が混じり合った甘く洗練された空気。に足
[01:06:19] が混じり合った甘く洗練された空気。に足 を踏み入れた瞬間空気が変わった。大遺跡
[01:06:23] を踏み入れた瞬間空気が変わった。大遺跡 の床、天井から下がるシャンデリア
[01:06:27] の床、天井から下がるシャンデリア 成果のアレンジメントが至るところに飾ら
[01:06:30] 成果のアレンジメントが至るところに飾ら れ、ホテルスタッフがうやうやしくゲスト
[01:06:34] れ、ホテルスタッフがうやうやしくゲスト を案内している。式典の会場は2階の大園
[01:06:38] を案内している。式典の会場は2階の大園 会場だった。入口には東和銃行株式会社
[01:06:44] 会場だった。入口には東和銃行株式会社 創立50周年記念式店と書かれた看板が
[01:06:48] 創立50周年記念式店と書かれた看板が 立てられ、その脇に受付テーブルが設置さ
[01:06:51] 立てられ、その脇に受付テーブルが設置さ れている。ロビーですでに何人かの出席者
[01:06:55] れている。ロビーですでに何人かの出席者 とすれ違ったが、誰もがオーダーメイドの
[01:06:59] とすれ違ったが、誰もがオーダーメイドの スーツに身を包み、磨き上げた川靴を光ら
[01:07:03] スーツに身を包み、磨き上げた川靴を光ら せている。胸ポケットにはシルクのチーフ
[01:07:07] せている。胸ポケットにはシルクのチーフ 、花ズリンクにはさりげないブランドの
[01:07:10] 、花ズリンクにはさりげないブランドの ロゴ。見るからに別世界の住人だ。だが気
[01:07:15] ロゴ。見るからに別世界の住人だ。だが気 にはしなかった。手のひのタコが俺の本当
[01:07:19] にはしなかった。手のひのタコが俺の本当 の名刺だ。ロビーの片隅で謎の姿が目に
[01:07:23] の名刺だ。ロビーの片隅で謎の姿が目に 入った。名ロジスティックスのメンバー
[01:07:27] 入った。名ロジスティックスのメンバー たちと一緒にエスカレーターに向かって
[01:07:29] たちと一緒にエスカレーターに向かって いるところだった。名一瞬だけ目があった
[01:07:33] いるところだった。名一瞬だけ目があった 。名は視線だけで合図を送り、何も言わず
[01:07:38] 。名は視線だけで合図を送り、何も言わず に前を向き直した。余計な接触は避ける。
[01:07:43] に前を向き直した。余計な接触は避ける。 それぞれがそれぞれの先として独立した
[01:07:47] それぞれがそれぞれの先として独立した 企業としてこの式点に集席する。それだけ
[01:07:51] 企業としてこの式点に集席する。それだけ のことだ。赤嶺のチームも少し遅れて
[01:07:56] のことだ。赤嶺のチームも少し遅れて ロビーに入ってきた。赤嶺はいつもの
[01:08:00] ロビーに入ってきた。赤嶺はいつもの カジアラな服装ではなく、きちんとした
[01:08:03] カジアラな服装ではなく、きちんとした スーツを着ている。
[01:08:05] スーツを着ている。 隣の部下が何か耳打ちしているのが見えた
[01:08:08] 隣の部下が何か耳打ちしているのが見えた が、赤嶺は軽く首を振っただけだった。
[01:08:13] が、赤嶺は軽く首を振っただけだった。 全員が分かっている。今日何が起きるかは
[01:08:16] 全員が分かっている。今日何が起きるかは 誰にも分からない。ただ俺の合図で動く。
[01:08:21] 誰にも分からない。ただ俺の合図で動く。 それだけだ。エスカレーターに乗りながら
[01:08:25] それだけだ。エスカレーターに乗りながら 背筋を伸ばした。磨いたはずの川靴が周囲
[01:08:30] 背筋を伸ばした。磨いたはずの川靴が周囲 のブランドと並ぶと急に色わせて見える。
[01:08:35] のブランドと並ぶと急に色わせて見える。 だが安物のスーツでも背筋だけはまっすぐ
[01:08:38] だが安物のスーツでも背筋だけはまっすぐ にする。職人は手と背中で語る。手は技術
[01:08:44] にする。職人は手と背中で語る。手は技術 で背中は心行きだ。親父の口癖が胸の奥で
[01:08:50] で背中は心行きだ。親父の口癖が胸の奥で 揺れた。エスカレーターで2階に上がると
[01:08:54] 揺れた。エスカレーターで2階に上がると 受付の前に短い列ができていた。俺は列の
[01:08:58] 受付の前に短い列ができていた。俺は列の 最後尾に着き順番を待った。前に並んでい
[01:09:03] 最後尾に着き順番を待った。前に並んでい た紳士たちは受付の若い女性社員に丁寧に
[01:09:07] た紳士たちは受付の若い女性社員に丁寧に 案内されている。飯を交換し、にやかに
[01:09:11] 案内されている。飯を交換し、にやかに 会場へと入っていく。大手企業同士の
[01:09:15] 会場へと入っていく。大手企業同士の 付き合いだ。互いの顔を知っている人間も
[01:09:19] 付き合いだ。互いの顔を知っている人間も 多いのだろう。あちこちでお久しぶりです
[01:09:23] 多いのだろう。あちこちでお久しぶりです 。ご強で何よりですと言った挨拶がかわさ
[01:09:27] 。ご強で何よりですと言った挨拶がかわさ れていた。
[01:09:29] れていた。 に並んでいる間、俺の前にいた紳士が
[01:09:33] に並んでいる間、俺の前にいた紳士が 振り返り、ちらりとこちらを見た。安物の
[01:09:37] 振り返り、ちらりとこちらを見た。安物の スーツを一目で見抜いたのだろう。すぐに
[01:09:41] スーツを一目で見抜いたのだろう。すぐに 視線をそらした。どの会社の人間だろうと
[01:09:45] 視線をそらした。どの会社の人間だろうと は思わなかったはずだ。この場にそわない
[01:09:49] は思わなかったはずだ。この場にそわない 人間として脳内で自動的にフィルタリング
[01:09:52] 人間として脳内で自動的にフィルタリング されたのだろう。人間は見た目で相手を
[01:09:56] されたのだろう。人間は見た目で相手を 瞬時に駆付けする。それは本能のような
[01:10:00] 瞬時に駆付けする。それは本能のような もので意識的にやっているわけではない。
[01:10:04] もので意識的にやっているわけではない。 だからこそ立ちが悪い。俺の番が来た。
[01:10:09] だからこそ立ちが悪い。俺の番が来た。 受付テーブルの上には来品名簿と記念品が
[01:10:13] 受付テーブルの上には来品名簿と記念品が 美しく並べられ、白いゆりの花が華やかな
[01:10:18] 美しく並べられ、白いゆりの花が華やかな 香りを漂せていった。招待状を差し出し
[01:10:22] 香りを漂せていった。招待状を差し出し ながら受付の女性社員に名乗る
[01:10:26] ながら受付の女性社員に名乗る 大城世紀の大城です。女性社員がリストを
[01:10:30] 大城世紀の大城です。女性社員がリストを 確認しようとしたその瞬間、横から声が
[01:10:34] 確認しようとしたその瞬間、横から声が かかった。低く、しかし十分に周囲に
[01:10:39] かかった。低く、しかし十分に周囲に 聞こえる勢量だった。
[01:10:42] 聞こえる勢量だった。 あんた誰?振り向くと銀眼鏡をかけた心の
[01:10:47] あんた誰?振り向くと銀眼鏡をかけた心の 男がこちらを寝みするような目で見下ろし
[01:10:50] 男がこちらを寝みするような目で見下ろし ていった。オーダーメイドのダークスーツ
[01:10:54] ていった。オーダーメイドのダークスーツ にシルクのネクタイ磨き上げ
[01:10:57] にシルクのネクタイ磨き上げ た黒い川靴胸源のバッチには東亜和重務
[01:11:02] た黒い川靴胸源のバッチには東亜和重務 取締まり役の文字が刻まれている
[01:11:06] 取締まり役の文字が刻まれている 黒崎つ常彦宮里が調べていた男だ。俺は
[01:11:11] 黒崎つ常彦宮里が調べていた男だ。俺は 招待を手にしたまま静かに答えた。大城
[01:11:15] 招待を手にしたまま静かに答えた。大城 正規の大城淳です。恩者とは30年のお
[01:11:20] 正規の大城淳です。恩者とは30年のお 付き合いをさせていただいております。
[01:11:22] 付き合いをさせていただいております。 黒崎は受付テーブルのリストを覗き込み、
[01:11:26] 黒崎は受付テーブルのリストを覗き込み、 大城正の名前を見つけると鼻で笑うような
[01:11:30] 大城正の名前を見つけると鼻で笑うような 息をもらした。その表情には隠すきもない
[01:11:34] 息をもらした。その表情には隠すきもない 部別が浮かんでいた。
[01:11:37] 部別が浮かんでいた。 ああ、あの町か。受付周辺にいた出席者
[01:11:43] ああ、あの町か。受付周辺にいた出席者 たちが何事かとこちらを見た。黒崎はそれ
[01:11:47] たちが何事かとこちらを見た。黒崎はそれ を意に返する様子もなく、むしろ周囲の
[01:11:50] を意に返する様子もなく、むしろ周囲の 注目を楽しんでいるかのようにさらに声を
[01:11:54] 注目を楽しんでいるかのようにさらに声を 張った。底辺の街すみっこに座ってろ。
[01:11:59] 張った。底辺の街すみっこに座ってろ。 大品は一流企業様の場所なんだよ。時間が
[01:12:04] 大品は一流企業様の場所なんだよ。時間が 止まったような感覚があった。受付
[01:12:07] 止まったような感覚があった。受付 テーブルに置かれた花瓶の中で白いゆりが
[01:12:11] テーブルに置かれた花瓶の中で白いゆりが かかに揺れている。それ以外何もかも静止
[01:12:15] かかに揺れている。それ以外何もかも静止 していった。黒崎の声は大きくはっきりと
[01:12:19] していった。黒崎の声は大きくはっきりと していった。わざと周囲に聞こえるように
[01:12:23] していった。わざと周囲に聞こえるように 言ったのだ。底辺という言葉が会場の空気
[01:12:27] 言ったのだ。底辺という言葉が会場の空気 を切り裂き、会場中の耳に届いた。笑と
[01:12:32] を切り裂き、会場中の耳に届いた。笑と いう長の媚尾が刃物のように俺の胸に
[01:12:36] いう長の媚尾が刃物のように俺の胸に 突き刺さった。一瞬周囲の空気が凍りつい
[01:12:40] 突き刺さった。一瞬周囲の空気が凍りつい た。受付の女性社員が目を見開き、困惑し
[01:12:45] た。受付の女性社員が目を見開き、困惑し た表情で黒崎と俺を交互に見ている。後ろ
[01:12:50] た表情で黒崎と俺を交互に見ている。後ろ に並んでいた出席者たちも気まずそうに
[01:12:53] に並んでいた出席者たちも気まずそうに 視線をそらした。式典の受付で招待客に
[01:12:57] 視線をそらした。式典の受付で招待客に 向かって底辺と言い放つ。その異常さに
[01:13:03] 向かって底辺と言い放つ。その異常さに 周囲の人間は明らかに戸惑っていった。だ
[01:13:07] 周囲の人間は明らかに戸惑っていった。だ が誰1人として口を挟むものはいない。で
[01:13:11] が誰1人として口を挟むものはいない。で は東亜銃校の専務だ。ここで逆らえば自分
[01:13:15] は東亜銃校の専務だ。ここで逆らえば自分 の会社の取引に響くかもしれない。そう
[01:13:19] の会社の取引に響くかもしれない。そう いう計算が全員の頭の中で瞬時に働いたの
[01:13:23] いう計算が全員の頭の中で瞬時に働いたの だろう。俺は黒崎の顔をじっと見つめた。
[01:13:28] だろう。俺は黒崎の顔をじっと見つめた。 怒りがなかったと言えば嘘になる。鼻の底
[01:13:32] 怒りがなかったと言えば嘘になる。鼻の底 で熱い塊がゆっくりと膨らんでいくのを
[01:13:36] で熱い塊がゆっくりと膨らんでいくのを 感じた。だが表情は動かさなかった。親父
[01:13:41] 感じた。だが表情は動かさなかった。親父 から継いだこの工場を守り抜いてきた部品
[01:13:45] から継いだこの工場を守り抜いてきた部品 1つの制度にこだわり、社員1人1人の
[01:13:48] 1つの制度にこだわり、社員1人1人の 生活を背負い、仲間を集めて大手に対抗
[01:13:52] 生活を背負い、仲間を集めて大手に対抗 できるグループを築づき上げた。それを
[01:13:56] できるグループを築づき上げた。それを 底辺と呼ぶのか。この男は何も知らない。
[01:14:01] 底辺と呼ぶのか。この男は何も知らない。 俺たちの仕事を、俺たちの覚悟を何1つ
[01:14:05] 俺たちの仕事を、俺たちの覚悟を何1つ 知らないまま見た目と肩書きだけで人を
[01:14:08] 知らないまま見た目と肩書きだけで人を 判断している。黒崎が受付の女性社員に顎
[01:14:13] 判断している。黒崎が受付の女性社員に顎 で指示を出した。この人は奥の方の席に
[01:14:17] で指示を出した。この人は奥の方の席に 案内して大品席には入れるなよ。女性社員
[01:14:22] 案内して大品席には入れるなよ。女性社員 は明らかに困った顔をしていたが、専務の
[01:14:26] は明らかに困った顔をしていたが、専務の 指示に逆らうことはできなかった。こちら
[01:14:29] 指示に逆らうことはできなかった。こちら へどうぞと小さな声で案内され、俺は会場
[01:14:33] へどうぞと小さな声で案内され、俺は会場 の中へと進んだ。案内する女性社員の背中
[01:14:38] の中へと進んだ。案内する女性社員の背中 は小さく震えていた。
[01:14:40] は小さく震えていた。 彼女もまたこの異常な状況に戸惑っている
[01:14:44] 彼女もまたこの異常な状況に戸惑っている のだろう。だが俺はその女性社員を責める
[01:14:48] のだろう。だが俺はその女性社員を責める 気にはなれなかった。上の人間が理不尽な
[01:14:51] 気にはなれなかった。上の人間が理不尽な ことをした時、下の人間はそれに従うしか
[01:14:55] ことをした時、下の人間はそれに従うしか ない。それがこの社会のルールだ。だから
[01:14:59] ない。それがこの社会のルールだ。だから こそそのルールを変えるために俺は
[01:15:02] こそそのルールを変えるために俺は グループを作ったのだ。すみっこの席に
[01:15:06] グループを作ったのだ。すみっこの席に 向かう途中、何人かの出席者とすれ違った
[01:15:09] 向かう途中、何人かの出席者とすれ違った が、誰も視線を合わせようとしなかった。
[01:15:14] が、誰も視線を合わせようとしなかった。 黒先に立てついて自分まで目をつけられる
[01:15:17] 黒先に立てついて自分まで目をつけられる ことを恐れているのだろう。あるいは
[01:15:21] ことを恐れているのだろう。あるいは 関わりたくないという本能的な判断か。
[01:15:25] 関わりたくないという本能的な判断か。 歩きながら背後で黒崎が別の出席者と断照
[01:15:28] 歩きながら背後で黒崎が別の出席者と断照 する声が聞こえた。も俺のことなど忘れた
[01:15:32] する声が聞こえた。も俺のことなど忘れた かのように明るい声で冗談を言っている。
[01:15:37] かのように明るい声で冗談を言っている。 大勢の前で1人の人間を侮辱しておいて、
[01:15:41] 大勢の前で1人の人間を侮辱しておいて、 次の瞬間には何事もなかったかのように
[01:15:44] 次の瞬間には何事もなかったかのように 振る舞える。そういう種類の人間がいる
[01:15:47] 振る舞える。そういう種類の人間がいる ことを俺は知識としては知っていった。だ
[01:15:51] ことを俺は知識としては知っていった。だ が実際に目の前でやられると怒りとは別の
[01:15:55] が実際に目の前でやられると怒りとは別の もっと冷たい感情が込み上げてくる。この
[01:15:59] もっと冷たい感情が込み上げてくる。この 男は人の痛みが分からないのではない。
[01:16:03] 男は人の痛みが分からないのではない。 痛みを与えることを楽しんでいるのだ。
[01:16:06] 痛みを与えることを楽しんでいるのだ。 通されたのは会場の最もまった場所だった
[01:16:10] 通されたのは会場の最もまった場所だった 。メインステージからは最も遠い位置で遠
[01:16:14] 。メインステージからは最も遠い位置で遠 に置かれたマイクの音すらここまでは
[01:16:18] に置かれたマイクの音すらここまでは まともに届かないだろう。壁際にポツンと
[01:16:22] まともに届かないだろう。壁際にポツンと 置かれたテーブルと椅子は他の来品の
[01:16:26] 置かれたテーブルと椅子は他の来品の 華やかさとは対象的にまるで隅に追いやら
[01:16:30] 華やかさとは対象的にまるで隅に追いやら れた荷物のようだった。テーブルクロス
[01:16:34] れた荷物のようだった。テーブルクロス すら省かれている。明らかに核下の息き先
[01:16:38] すら省かれている。明らかに核下の息き先 を低け招えておいて目立たない場所に
[01:16:42] を低け招えておいて目立たない場所に 押し込めるための席だった。黙ってその
[01:16:46] 押し込めるための席だった。黙ってその 椅子に腰を下ろした隣の席には誰もいない
[01:16:50] 椅子に腰を下ろした隣の席には誰もいない 。この一角だけまるで隔離されたかのよう
[01:16:54] 。この一角だけまるで隔離されたかのよう に空が広がっている。1人だけの島流しだ
[01:16:59] に空が広がっている。1人だけの島流しだ 。テーブルの上にはグラスが1つだけ置か
[01:17:02] 。テーブルの上にはグラスが1つだけ置か れ、水滴が表面をゆっくりと伝え落ちて
[01:17:06] れ、水滴が表面をゆっくりと伝え落ちて いく。会場の正面ではシャンデリアの光が
[01:17:10] いく。会場の正面ではシャンデリアの光が シャンパングラスに反射して華やかな光の
[01:17:14] シャンパングラスに反射して華やかな光の 粒を巻き散らしている。だがここにはその
[01:17:18] 粒を巻き散らしている。だがここにはその 光は届かない。壁際の蛍光灯の青白い光
[01:17:23] 光は届かない。壁際の蛍光灯の青白い光 だけが俺の安物のスーツを照らしていた。
[01:17:27] だけが俺の安物のスーツを照らしていた。 自分の手を見つめた節くれだった指。爪の
[01:17:32] 自分の手を見つめた節くれだった指。爪の 間には洗っても落ち切らない金属分が
[01:17:35] 間には洗っても落ち切らない金属分が わずかに残っている。どんな精密部品でも
[01:17:39] わずかに残っている。どんな精密部品でも 仕上げてきたって。12人の社員の給料を
[01:17:44] 仕上げてきたって。12人の社員の給料を 稼いできたって。仲間と握手をかわしてき
[01:17:47] 稼いできたって。仲間と握手をかわしてき たって。底辺と呼ばれた手だ。ステージ
[01:17:52] たって。底辺と呼ばれた手だ。ステージ 前方では大手企業の従約たちがシャンパン
[01:17:55] 前方では大手企業の従約たちがシャンパン を片手に断している。華やかな世界とこの
[01:18:00] を片手に断している。華やかな世界とこの 住みっこは同じ会場にありながら別の国の
[01:18:04] 住みっこは同じ会場にありながら別の国の ように隔立たっていた。ふと視界の橋に名
[01:18:09] ように隔立たっていた。ふと視界の橋に名 の姿が見えた。名ロジスティックスの社員
[01:18:12] の姿が見えた。名ロジスティックスの社員 たちと一緒に会場の中ほどの席に座って
[01:18:16] たちと一緒に会場の中ほどの席に座って いる。号はこちらに気づいたのか、一瞬
[01:18:20] いる。号はこちらに気づいたのか、一瞬 だけ視線を送ってきた。その目には大丈夫
[01:18:25] だけ視線を送ってきた。その目には大丈夫 かという問いかけが込められていた。俺は
[01:18:28] かという問いかけが込められていた。俺は かつかに顎を引いて答えた。大丈夫だ。
[01:18:33] かつかに顎を引いて答えた。大丈夫だ。 まだ大丈夫だ。赤嶺の姿も確認できた。
[01:18:39] まだ大丈夫だ。赤嶺の姿も確認できた。 赤嶺テクノロジーズのメンバーと共に名は
[01:18:42] 赤嶺テクノロジーズのメンバーと共に名は 反対側の席に座っているコチメンテナンス
[01:18:46] 反対側の席に座っているコチメンテナンス の面々もあちこちに散らばって座っていた
[01:18:51] の面々もあちこちに散らばって座っていた グループの関係者が出席者の中に溶け込ん
[01:18:54] グループの関係者が出席者の中に溶け込ん でいる党和銃校の人間は誰1人としてその
[01:18:59] でいる党和銃校の人間は誰1人としてその ことに気づいていない。
[01:19:02] ことに気づいていない。 式点が始まった。ステージ上では社長の
[01:19:06] 式点が始まった。ステージ上では社長の 中谷正が挨拶に立ち、亜行の50年の歩み
[01:19:11] 中谷正が挨拶に立ち、亜行の50年の歩み を振り返る映像が大スクリーンに移し出さ
[01:19:15] を振り返る映像が大スクリーンに移し出さ れた。創業機の白黒写真から始まり、高度
[01:19:20] れた。創業機の白黒写真から始まり、高度 経済成長期の向上拡大、バブル機の海外
[01:19:25] 経済成長期の向上拡大、バブル機の海外 進出、そして現在の事業展開まで50年と
[01:19:30] 進出、そして現在の事業展開まで50年と いう最重みを感じさせる映像だった。だが
[01:19:35] いう最重みを感じさせる映像だった。だが 俺の席からはスクリーンの文字がほとんど
[01:19:37] 俺の席からはスクリーンの文字がほとんど 読めない。スピーカーから流れる社長の声
[01:19:41] 読めない。スピーカーから流れる社長の声 もこもって聞き取りにくい。式点が始まる
[01:19:45] もこもって聞き取りにくい。式点が始まる 前、ウェーターが料理とシャンパンを運ん
[01:19:48] 前、ウェーターが料理とシャンパンを運ん できた。若いウェーターは俺の席を
[01:19:52] できた。若いウェーターは俺の席を 見つけると一瞬戸惑った表情を見せた。他
[01:19:57] 見つけると一瞬戸惑った表情を見せた。他 の席のような華やかなテーブル
[01:19:59] の席のような華やかなテーブル セッティングとは駆け離れた寂しい1人席
[01:20:04] セッティングとは駆け離れた寂しい1人席 だがプロとして丁寧に皿を並べてくれた。
[01:20:08] だがプロとして丁寧に皿を並べてくれた。 ありがとうと小さく声をかけると、
[01:20:12] ありがとうと小さく声をかけると、 ウェターは驚いたように頭を下げた。
[01:20:16] ウェターは驚いたように頭を下げた。 おそらくこの会場の出席者の中でウェター
[01:20:20] おそらくこの会場の出席者の中でウェター に霊を言った人間は俺が初めてだったの
[01:20:22] に霊を言った人間は俺が初めてだったの だろう。周囲の席ではビジネスの社交事例
[01:20:27] だろう。周囲の席ではビジネスの社交事例 が飛び交っていたが、俺のところに名所を
[01:20:30] が飛び交っていたが、俺のところに名所を 交換しに来る人間は1人もいない。みっこ
[01:20:35] 交換しに来る人間は1人もいない。みっこ の席の男に声をかける物づきはいない。
[01:20:39] の席の男に声をかける物づきはいない。 構わないだが祝う気持ちはもうほとんど
[01:20:43] 構わないだが祝う気持ちはもうほとんど 残っていなかった。黒崎の姿はステージの
[01:20:48] 残っていなかった。黒崎の姿はステージの 脇に立っていた。社長の横で得意げな表情
[01:20:52] 脇に立っていた。社長の横で得意げな表情 を浮かべている式天の運営を仕切っている
[01:20:56] を浮かべている式天の運営を仕切っている のは黒崎だという。品の石順もプログラム
[01:21:00] のは黒崎だという。品の石順もプログラム の構成も全て黒崎の指示で決められたの
[01:21:04] の構成も全て黒崎の指示で決められたの だろう。俺をこのすみっこの席に追い合っ
[01:21:08] だろう。俺をこのすみっこの席に追い合っ たのも黒崎の判断だ。椅子の背もたれに
[01:21:12] たのも黒崎の判断だ。椅子の背もたれに 寄りかかりながら俺は自分の中の感情を
[01:21:15] 寄りかかりながら俺は自分の中の感情を 整理していった。怒りそれは確かにあるだ
[01:21:21] 整理していった。怒りそれは確かにあるだ がそれだけではない悔しさとも少し違う。
[01:21:26] がそれだけではない悔しさとも少し違う。 もっと根源的な深い場所から込み上げて
[01:21:29] もっと根源的な深い場所から込み上げて くるものがあった。朝は誰よりも早く工場
[01:21:33] くるものがあった。朝は誰よりも早く工場 に入り、夜は最後まで残って仕事をしてき
[01:21:37] に入り、夜は最後まで残って仕事をしてき た。社員の給料を払うために財布を殻にし
[01:21:42] た。社員の給料を払うために財布を殻にし たことも取り行き先に頭を下げて回った
[01:21:45] たことも取り行き先に頭を下げて回った ことも何度あったかわからない。そうやっ
[01:21:49] ことも何度あったかわからない。そうやっ て守り抜いてきたものをたった一言で
[01:21:52] て守り抜いてきたものをたった一言で 切り捨てられた。の言葉は俺だけに向け
[01:21:56] 切り捨てられた。の言葉は俺だけに向け られたものじゃない。工場で汗を流す社員
[01:22:00] られたものじゃない。工場で汗を流す社員 にも毎日ハンドルを握るドライバーたちに
[01:22:04] にも毎日ハンドルを握るドライバーたちに も余同しいサーバーを監視するエンジニア
[01:22:08] も余同しいサーバーを監視するエンジニア たちにも仲間の全員に向けられた侮辱だ。
[01:22:13] たちにも仲間の全員に向けられた侮辱だ。 まだ使わずに住むかもしれないと思ってい
[01:22:16] まだ使わずに住むかもしれないと思ってい た。式点が終わるまで黙って座っていれば
[01:22:20] た。式点が終わるまで黙って座っていれば 何事もなく終わる。帰りの電車の中で缶ン
[01:22:24] 何事もなく終わる。帰りの電車の中で缶ン ビールでも飲んで忘ればいい。そう自分に
[01:22:28] ビールでも飲んで忘ればいい。そう自分に 言い聞かせようとしたふと向いのテーブル
[01:22:32] 言い聞かせようとしたふと向いのテーブル に座っていた老師と目があった白発の上品
[01:22:37] に座っていた老師と目があった白発の上品 な老人でどこかの中堅メーカーの会長と
[01:22:41] な老人でどこかの中堅メーカーの会長と いった不勢だった。その老師は俺の方を
[01:22:45] いった不勢だった。その老師は俺の方を じっと見つめた後、小さく頭を下げた。
[01:22:49] じっと見つめた後、小さく頭を下げた。 さっきの黒先のやり取りを見ていたの
[01:22:52] さっきの黒先のやり取りを見ていたの だろう。
[01:22:53] だろう。 同場なのか共感なのかわからない。だが
[01:22:57] 同場なのか共感なのかわからない。だが この会場でたった1人でも俺のことを気に
[01:23:00] この会場でたった1人でも俺のことを気に かけてくれた人間がいたという事実が妙に
[01:23:04] かけてくれた人間がいたという事実が妙に 心にしみた。俺は軽く餌釈を返した。老師
[01:23:10] 心にしみた。俺は軽く餌釈を返した。老師 は何も言わずグラスに口をつけた。この人
[01:23:14] は何も言わずグラスに口をつけた。この人 もまた黒崎のような人間に理不尽な思いを
[01:23:18] もまた黒崎のような人間に理不尽な思いを させられた経験があるのかもしれない。
[01:23:22] させられた経験があるのかもしれない。 ステージの脇で黒崎が他の来品と断照して
[01:23:26] ステージの脇で黒崎が他の来品と断照して いるのが見えた。さっき俺を底辺と調した
[01:23:30] いるのが見えた。さっき俺を底辺と調した ことなどもう忘れたかのようにやかな笑顔
[01:23:34] ことなどもう忘れたかのようにやかな笑顔 を浮かべている。大手企業の幹部には丁寧
[01:23:38] を浮かべている。大手企業の幹部には丁寧 に頭を下げ、中小企業の代表には見向きも
[01:23:42] に頭を下げ、中小企業の代表には見向きも しない。黒崎の中では人間の価値が企業の
[01:23:47] しない。黒崎の中では人間の価値が企業の 規模で決まっているのだ。そしてそれは
[01:23:50] 規模で決まっているのだ。そしてそれは 黒崎1人の問題ではない。この社会の中に
[01:23:54] 黒崎1人の問題ではない。この社会の中に 寝深く存在する構造的な別子だ。大企業は
[01:23:59] 寝深く存在する構造的な別子だ。大企業は 偉い。中小企業は取り替え可能な駒。その
[01:24:04] 偉い。中小企業は取り替え可能な駒。その 思い込みがどれほど多くの職人や技術者の
[01:24:07] 思い込みがどれほど多くの職人や技術者の 誇りを踏みにじってきたか。親父のことを
[01:24:11] 誇りを踏みにじってきたか。親父のことを 思い出した。あの不器用な男も同じような
[01:24:15] 思い出した。あの不器用な男も同じような 目に会ってきたのだろう。メーカーの勾配
[01:24:19] 目に会ってきたのだろう。メーカーの勾配 担当に頭を下げ、理不尽な値下げ要求を
[01:24:23] 担当に頭を下げ、理不尽な値下げ要求を 飲み、それでも黙って歯を食い縛って働き
[01:24:27] 飲み、それでも黙って歯を食い縛って働き 続けた。腕があればいつか分かって
[01:24:30] 続けた。腕があればいつか分かって もらえると信じて。だが分かってもらえた
[01:24:34] もらえると信じて。だが分かってもらえた のか。親父の人生を俺の反省を仲間たちの
[01:24:39] のか。親父の人生を俺の反省を仲間たちの 全てを。黒崎は一言で底辺と片付けた。
[01:24:45] 全てを。黒崎は一言で底辺と片付けた。 黒崎の底辺の街交場はすみっこに座ってろ
[01:24:49] 黒崎の底辺の街交場はすみっこに座ってろ という声が耳の奥でリフレインしていた。
[01:24:54] という声が耳の奥でリフレインしていた。 大勢の前で笑いながら言い放ったあの声。
[01:24:58] 大勢の前で笑いながら言い放ったあの声。 あの声は親父に向けられた侮辱でもあった
[01:25:01] あの声は親父に向けられた侮辱でもあった 。汗にまみれて働き背中で家族を養い、膝
[01:25:07] 。汗にまみれて働き背中で家族を養い、膝 を覆って息き先に頭を下げてきた全ての
[01:25:11] を覆って息き先に頭を下げてきた全ての 町場の親父たちに向けられた侮辱だ。
[01:25:15] 町場の親父たちに向けられた侮辱だ。 俺は目を閉じた。暗闇の中で色々なものが
[01:25:20] 俺は目を閉じた。暗闇の中で色々なものが 浮かんでは消えた。親父の手、加藤の背中
[01:25:25] 浮かんでは消えた。親父の手、加藤の背中 、渡辺の真剣な目、謎の笑い声、赤嶺の涙
[01:25:32] 、渡辺の真剣な目、謎の笑い声、赤嶺の涙 、こちの僕突な声仲間たちの顔が次々と
[01:25:37] 、こちの僕突な声仲間たちの顔が次々と 浮かぶ1人1人が毎日働いている。朝早く
[01:25:42] 浮かぶ1人1人が毎日働いている。朝早く から夜遅くまで部品を磨き、トラックを
[01:25:46] から夜遅くまで部品を磨き、トラックを 走らせ、サーバーを監視し、設備を整備し
[01:25:50] 走らせ、サーバーを監視し、設備を整備し ている。その全てが底辺なのか、その全て
[01:25:55] ている。その全てが底辺なのか、その全て がすみっこに座ってろと言われるような
[01:25:57] がすみっこに座ってろと言われるような 仕事なのか。違う。断事で違う。目を開け
[01:26:03] 仕事なのか。違う。断事で違う。目を開け た。迷いは消えていた。後悔するかもしれ
[01:26:08] た。迷いは消えていた。後悔するかもしれ ない。取り返しのつかないことになるかも
[01:26:11] ない。取り返しのつかないことになるかも しれない。だがここで黙っていたら俺は
[01:26:15] しれない。だがここで黙っていたら俺は 2度と胸を張って工場に入れなくなる。
[01:26:19] 2度と胸を張って工場に入れなくなる。 親父の写真を見ることも社員の顔を見る
[01:26:23] 親父の写真を見ることも社員の顔を見る こともできなくなる。仲間を守れない人間
[01:26:26] こともできなくなる。仲間を守れない人間 がリーダーを名乗る資格はない。深呼吸を
[01:26:30] がリーダーを名乗る資格はない。深呼吸を 1つした工場の空気ではない。ホテルの
[01:26:35] 1つした工場の空気ではない。ホテルの 消毒駅のような清潔すぎる空気だ。だが目
[01:26:40] 消毒駅のような清潔すぎる空気だ。だが目 を閉じれば接作湯の匂いが鼻の奥に蘇って
[01:26:44] を閉じれば接作湯の匂いが鼻の奥に蘇って くる。あの工場の匂い、仲間たちの汗の
[01:26:49] くる。あの工場の匂い、仲間たちの汗の 匂い、機械の唸り、全てが俺の背中を押し
[01:26:53] 匂い、機械の唸り、全てが俺の背中を押し ていた。俺はゆっくりとポケットから
[01:26:57] ていた。俺はゆっくりとポケットから スマホを取り出した。手は震えていなかっ
[01:27:00] スマホを取り出した。手は震えていなかっ た。何万個もの部品を削り出してきた手だ
[01:27:04] た。何万個もの部品を削り出してきた手だ 。この程度のことで震えるほどやな手では
[01:27:08] 。この程度のことで震えるほどやな手では ない。指先には長年の千番仕事で刻まれた
[01:27:13] ない。指先には長年の千番仕事で刻まれた タコの感触がある。このタコが俺の人生
[01:27:17] タコの感触がある。このタコが俺の人生 そのものだ。黒崎が下げんだ底辺の証だ。
[01:27:23] そのものだ。黒崎が下げんだ底辺の証だ。 だがこの手が作り出した部品なしには黒先
[01:27:26] だがこの手が作り出した部品なしには黒先 のオーダーメイドのスーツも磨き上げた
[01:27:30] のオーダーメイドのスーツも磨き上げた 化靴もそもそも製造することすらできない
[01:27:33] 化靴もそもそも製造することすらできない 。画面を開き、グループの連絡もアプリを
[01:27:38] 。画面を開き、グループの連絡もアプリを 立ち上げる。一斉送信の宛先には今日この
[01:27:42] 立ち上げる。一斉送信の宛先には今日この 場所に来ている仲間全員が登録されている
[01:27:47] 場所に来ている仲間全員が登録されている メッセージ欄にたった2文字を打ち込んだ
[01:27:51] メッセージ欄にたった2文字を打ち込んだ 撤収
[01:27:53] 撤収 送信ボタンを押した数秒の間があった。
[01:27:58] 送信ボタンを押した数秒の間があった。 会場ではまだ式点のプログラムが進行して
[01:28:01] 会場ではまだ式点のプログラムが進行して おり、ステージ上では来品の食事が
[01:28:05] おり、ステージ上では来品の食事が 読み上げられている。何事もないかのよう
[01:28:08] 読み上げられている。何事もないかのよう に時間が流れていた。最初に動いたのは謎
[01:28:12] に時間が流れていた。最初に動いたのは謎 だった。スマホの画面を一別した名子が音
[01:28:17] だった。スマホの画面を一別した名子が音 を立てずに椅子から立ち上がった。その隣
[01:28:21] を立てずに椅子から立ち上がった。その隣 にいたナ名ゴロジスティクスの社員が名に
[01:28:24] にいたナ名ゴロジスティクスの社員が名に 続いて立ち上がる。1人、また1人名の
[01:28:30] 続いて立ち上がる。1人、また1人名の テーブルにいた全員がまって席を離れ始め
[01:28:33] テーブルにいた全員がまって席を離れ始め た。続いて赤嶺のテーブルでも同じことが
[01:28:37] た。続いて赤嶺のテーブルでも同じことが 起きた。赤嶺がスマホを確認し、隣の部下
[01:28:41] 起きた。赤嶺がスマホを確認し、隣の部下 にめくせをする。赤嶺テクノロジーズの
[01:28:44] にめくせをする。赤嶺テクノロジーズの メンバーが一斉に立ち上がった。その動き
[01:28:48] メンバーが一斉に立ち上がった。その動き は静かだった。声を上げるものは1人もい
[01:28:52] は静かだった。声を上げるものは1人もい ない。ただ黙って椅子から立ち上がり出口
[01:28:57] ない。ただ黙って椅子から立ち上がり出口 に向かって歩き始めるだけだ。だがそのし
[01:29:01] に向かって歩き始めるだけだ。だがそのし さが帰って異様な迫力を産んでいた。会場
[01:29:05] さが帰って異様な迫力を産んでいた。会場 のあちこちで同じことが起きていた。こち
[01:29:09] のあちこちで同じことが起きていた。こち メンテナンスのテーブル、ハエスティング
[01:29:12] メンテナンスのテーブル、ハエスティング のテーブル、他のグループ企業のテーブル
[01:29:15] のテーブル、他のグループ企業のテーブル 、1つ、また1つとテーブルが空になって
[01:29:20] 、1つ、また1つとテーブルが空になって いく。最初はステージ用の来品も客席の
[01:29:24] いく。最初はステージ用の来品も客席の 出席者も何が起きているのか理解できてい
[01:29:27] 出席者も何が起きているのか理解できてい なかった。だが席を立つ人間の数が増える
[01:29:31] なかった。だが席を立つ人間の数が増える につれて会場にざめきが広がり始めた。
[01:29:36] につれて会場にざめきが広がり始めた。 10人が立ち上がった時点で何人かが首を
[01:29:39] 10人が立ち上がった時点で何人かが首を かしげた。20人が動き始めた時点で
[01:29:44] かしげた。20人が動き始めた時点で ステージ脇にいた黒崎の表情が変わった。
[01:29:48] ステージ脇にいた黒崎の表情が変わった。 30人、40人。立ち上がる人間は止まら
[01:29:53] 30人、40人。立ち上がる人間は止まら ない。50人を超えた辺りでステージ上で
[01:29:57] ない。50人を超えた辺りでステージ上で 縮事を読んでいたラの声が途切れた。全員
[01:30:01] 縮事を読んでいたラの声が途切れた。全員 の目が無言で会場を出ていく人々の列に釘
[01:30:05] の目が無言で会場を出ていく人々の列に釘 になっていった。60人、70人。出口に
[01:30:11] になっていった。60人、70人。出口に 向かう人の流れはまるで席を切ったように
[01:30:14] 向かう人の流れはまるで席を切ったように 止まらない。だが誰1人として走らない。
[01:30:18] 止まらない。だが誰1人として走らない。 声をあげない。ただ静かにシクシと会場を
[01:30:22] 声をあげない。ただ静かにシクシと会場を 後にしていく。その沈黙の更新が言葉に
[01:30:27] 後にしていく。その沈黙の更新が言葉に ならない圧力となって会場を支配していた
[01:30:30] ならない圧力となって会場を支配していた 。80人、150人の出席者のうち80人
[01:30:37] 。80人、150人の出席者のうち80人 が席を立った。会場の半分以上が空席に
[01:30:41] が席を立った。会場の半分以上が空席に なった。テーブルの上には手かの料理と
[01:30:45] なった。テーブルの上には手かの料理と 飲み物が残されている。ジャンパンの泡が
[01:30:49] 飲み物が残されている。ジャンパンの泡が あ字のいないグラスの中で静かに消えて
[01:30:52] あ字のいないグラスの中で静かに消えて いく
[01:30:54] いく 成果のアレンジメントだけが何事もなかっ
[01:30:57] 成果のアレンジメントだけが何事もなかっ たかのように美しく飾られたまま空石の
[01:31:01] たかのように美しく飾られたまま空石の テーブルを彩っている華やかだった宴会場
[01:31:05] テーブルを彩っている華やかだった宴会場 が一瞬にして特別式場のような静寂に包ま
[01:31:09] が一瞬にして特別式場のような静寂に包ま れた。
[01:31:11] れた。 おい、何が起きてる?
[01:31:14] ステージ脇で黒崎が声を裏返して叫んだ。だが誰も答えない。出ていく人間は振り返りもせず残された人間は何が起きたのか理解できないまと空席を見つめているだけだった。中谷社長がでした。
[01:31:37] 50周年記念式店という晴れの舞台が目の
[01:31:40] 50周年記念式店という晴れの舞台が目の 前で崩壊していく。来品の半分以上が理由
[01:31:45] 前で崩壊していく。来品の半分以上が理由 も告げずに会場を出ていった。中谷の顔
[01:31:49] も告げずに会場を出ていった。中谷の顔 から色がうせていくのが遠く離れた俺の席
[01:31:53] から色がうせていくのが遠く離れた俺の席 からでも分かった。ガラガラになった会場
[01:31:56] からでも分かった。ガラガラになった会場 で俺は椅子に座っていた。すみっこの席。
[01:32:01] で俺は椅子に座っていた。すみっこの席。 黒崎が俺に用意した会場の採用の席だ。
[01:32:06] 黒崎が俺に用意した会場の採用の席だ。 そこから残された70人の困惑と黒崎の
[01:32:10] そこから残された70人の困惑と黒崎の 老媒を静かに見つめていた。残された出席
[01:32:15] 老媒を静かに見つめていた。残された出席 者たちの間ひそひそが盛り始めた。何が
[01:32:20] 者たちの間ひそひそが盛り始めた。何が 起きたんだ?あの人たち全員知り合いなの
[01:32:24] 起きたんだ?あの人たち全員知り合いなの か?一斉に出ていくなんて普通じゃないぞ
[01:32:27] か?一斉に出ていくなんて普通じゃないぞ 。だが答えられる人間は誰もいない。この
[01:32:32] 。だが答えられる人間は誰もいない。この 会場に残っている70人は大城グループと
[01:32:36] 会場に残っている70人は大城グループと は無関係の企業の関係者ばかりだった。彼
[01:32:40] は無関係の企業の関係者ばかりだった。彼 らにとってあの無言の体場はまるで映画の
[01:32:44] らにとってあの無言の体場はまるで映画の ワンシーンのように非現実的な光景に見え
[01:32:48] ワンシーンのように非現実的な光景に見え たことだろう。黒崎はステージの脇で
[01:32:51] たことだろう。黒崎はステージの脇で 立ち尽くしていた。さっきまでの傲慢な
[01:32:54] 立ち尽くしていた。さっきまでの傲慢な 表情は消え、代わりに困惑と焦りが顔全体
[01:32:59] 表情は消え、代わりに困惑と焦りが顔全体 に広がっている。式典のプログラムは完全
[01:33:03] に広がっている。式典のプログラムは完全 に止まっていた。司会者がマイクの前で
[01:33:07] に止まっていた。司会者がマイクの前で 立ち上し、ステージ上のライ品は所材投げ
[01:33:10] 立ち上し、ステージ上のライ品は所材投げ に辺りを見回している。華やかに飾られた
[01:33:15] に辺りを見回している。華やかに飾られた 会場の装飾がガラガラの客席を照らす光が
[01:33:20] 会場の装飾がガラガラの客席を照らす光が 帰って空虚さを際立たせていった。俺は
[01:33:23] 帰って空虚さを際立たせていった。俺は スーツのポケットに手を入れ、椅子の
[01:33:26] スーツのポケットに手を入れ、椅子の 背もたれに体を預けた。怒りは消えていた
[01:33:30] 背もたれに体を預けた。怒りは消えていた 。代わりにあったのは静かな確信だった。
[01:33:35] 。代わりにあったのは静かな確信だった。 俺たちの仕事の重みをこの男は今初めて
[01:33:39] 俺たちの仕事の重みをこの男は今初めて 感じ始めている。まだ前貌は見えていない
[01:33:43] 感じ始めている。まだ前貌は見えていない だろう。だが出席者の下半数が一斉に退場
[01:33:47] だろう。だが出席者の下半数が一斉に退場 したという事実の異常さはいくら鈍感な
[01:33:51] したという事実の異常さはいくら鈍感な 人間でも無視できないはずだ。
[01:33:55] 人間でも無視できないはずだ。 やがて俺もゆっくりと椅子から立ち上がったの裾装を軽く払い場の出口に向かって歩き始める。靴音が静まり返った宴会場に小さく響する。さっきまで
[01:34:11] 150
[01:34:11] 150 人の装で満たされていた空間が今は俺の足音だけを響かせている。
[01:34:19] すれ違う人々の視線が無言で俺に注がれる
[01:34:23] すれ違う人々の視線が無言で俺に注がれる 。だが俺は誰にも声をかけなかった。目も
[01:34:28] 。だが俺は誰にも声をかけなかった。目も 合わせなかった。ただまっすぐに出口に
[01:34:31] 合わせなかった。ただまっすぐに出口に 向かって歩いた。会場の扉をくぐる直前
[01:34:37] 向かって歩いた。会場の扉をくぐる直前 背後から黒崎の声が聞こえた。おい、待て
[01:34:41] 背後から黒崎の声が聞こえた。おい、待て 。お前何をした?振り返らなかった。
[01:34:46] 。お前何をした?振り返らなかった。 答える義りもない。俺は静かに扉を閉め、
[01:34:50] 答える義りもない。俺は静かに扉を閉め、 会場を後にした。会場を出る直前、あの
[01:34:55] 会場を後にした。会場を出る直前、あの 労親士が小さく手をあげて俺に合図を送っ
[01:34:59] 労親士が小さく手をあげて俺に合図を送っ ているのが見えた。その顔には驚きとどこ
[01:35:04] ているのが見えた。その顔には驚きとどこ かす々しい簡単の色が浮かんでいた。
[01:35:07] かす々しい簡単の色が浮かんでいた。 すみっこの席にって座っていた男が実は
[01:35:12] すみっこの席にって座っていた男が実は 会場の半分以上動かす力を持っていった。
[01:35:16] 会場の半分以上動かす力を持っていった。 その事実を間の当たりにした老師の表情が
[01:35:20] その事実を間の当たりにした老師の表情が 長く記憶に残った。ホテルのロビーに出る
[01:35:24] 長く記憶に残った。ホテルのロビーに出る とグループのメンバーたちが生前と並んで
[01:35:28] とグループのメンバーたちが生前と並んで 待っていた。名が腕を組んで壁に
[01:35:31] 待っていた。名が腕を組んで壁に 寄りかかり、赤嶺がスマホを操作している
[01:35:34] 寄りかかり、赤嶺がスマホを操作している 。全員の顔に動揺はなかった。この瞬間の
[01:35:39] 。全員の顔に動揺はなかった。この瞬間の ために準備してきたのだ。孫がこちらに
[01:35:43] ために準備してきたのだ。孫がこちらに 歩み、低い声で言った。全員撤収完了だ。
[01:35:50] 歩み、低い声で言った。全員撤収完了だ。 1人も残ってない。俺は小さく頷いた。
[01:35:55] 1人も残ってない。俺は小さく頷いた。 ありがとう。全員今日のところはこのまま
[01:35:58] ありがとう。全員今日のところはこのまま 帰ってくれ。今後のことは明日以降に連絡
[01:36:02] 帰ってくれ。今後のことは明日以降に連絡 する。グループのメンバーたちが335
[01:36:05] する。グループのメンバーたちが335 ホテルを後にしていく。名が最後まで残り
[01:36:10] ホテルを後にしていく。名が最後まで残り 俺の顔をじっと見ていた。
[01:36:13] 俺の顔をじっと見ていた。 その目には怒りも悲しみもなかった。ただ
[01:36:17] その目には怒りも悲しみもなかった。ただ 積み重ねた信頼がそこにあった。俺が
[01:36:20] 積み重ねた信頼がそこにあった。俺が どんな判断を下しても名はそれに従う。逆
[01:36:25] どんな判断を下しても名はそれに従う。逆 もまたしかりだ。互いの覚悟を確認し合う
[01:36:29] もまたしかりだ。互いの覚悟を確認し合う ように数秒間見つめ合い名は分かったと
[01:36:33] ように数秒間見つめ合い名は分かったと だけ言って歩き出した。名が去った後、
[01:36:37] だけ言って歩き出した。名が去った後、 赤嶺が戻ってきた。何か忘れ物でもしたの
[01:36:41] 赤嶺が戻ってきた。何か忘れ物でもしたの かと思ったが違った。赤嶺は俺の前に立つ
[01:36:45] かと思ったが違った。赤嶺は俺の前に立つ とまっすぐにこちらを見ていった。お城
[01:36:50] とまっすぐにこちらを見ていった。お城 さん、あの時助けてもらった恩今日少し
[01:36:55] さん、あの時助けてもらった恩今日少し だけ返せた気がします。俺は何も答え
[01:36:58] だけ返せた気がします。俺は何も答え なかった。ただ赤嶺の肩にポンと手を置い
[01:37:02] なかった。ただ赤嶺の肩にポンと手を置い た。
[01:37:04] た。 は小さく頭を下げてホテルの出口に向かっ
[01:37:08] は小さく頭を下げてホテルの出口に向かっ て歩いていった。あいつが経営破綻寸前
[01:37:12] て歩いていった。あいつが経営破綻寸前 だった時、俺が差し伸べた手を掴んだ日の
[01:37:15] だった時、俺が差し伸べた手を掴んだ日の ことを覚えていてくれたのだ。ホテルの外
[01:37:20] ことを覚えていてくれたのだ。ホテルの外 に出ると秋の夕暮れの風が頬を撫でた。
[01:37:24] に出ると秋の夕暮れの風が頬を撫でた。 都心のビル軍の間から赤色に染まった空が
[01:37:28] 都心のビル軍の間から赤色に染まった空が 覗いている。グループのメンバーたちは
[01:37:32] 覗いている。グループのメンバーたちは もうほとんど姿を消していた。それぞれの
[01:37:36] もうほとんど姿を消していた。それぞれの 日常へ、それぞれの持ち場へ帰っていく。
[01:37:40] 日常へ、それぞれの持ち場へ帰っていく。 明日からまたトラックのハンドルを握り、
[01:37:43] 明日からまたトラックのハンドルを握り、 サーバーの監視画面に向かい、向上設備の
[01:37:47] サーバーの監視画面に向かい、向上設備の 点検に回る。俺たちはそういう人間だ。
[01:37:52] 点検に回る。俺たちはそういう人間だ。 式典のシャンパンを飲む人間ではなく、
[01:37:55] 式典のシャンパンを飲む人間ではなく、 現場で汗を流す人間だ。1人になった
[01:37:59] 現場で汗を流す人間だ。1人になった ロビーで俺はスマホをポケットにしまった
[01:38:02] ロビーで俺はスマホをポケットにしまった 。スーツの胸元に手を当てると心臓が意外
[01:38:08] 。スーツの胸元に手を当てると心臓が意外 なほど静かに脈を打っていった。ロビーの
[01:38:11] なほど静かに脈を打っていった。ロビーの 代理席の床が夕方の光を反射している。
[01:38:16] 代理席の床が夕方の光を反射している。 静まり返ったロビーにどこかのフロアから
[01:38:20] 静まり返ったロビーにどこかのフロアから かにピアノの寝色が漏れ聞こえてくる。
[01:38:24] かにピアノの寝色が漏れ聞こえてくる。 間違いなほど穏やかな戦立だった。怒りに
[01:38:28] 間違いなほど穏やかな戦立だった。怒りに 任せた行動ではない。感情的な報復でも
[01:38:32] 任せた行動ではない。感情的な報復でも ない。俺たちの存在を過論人間に俺たちが
[01:38:37] ない。俺たちの存在を過論人間に俺たちが 何者であるかを示しただけだ。だがこれで
[01:38:41] 何者であるかを示しただけだ。だがこれで 終わりではないことも分かっていった。
[01:38:44] 終わりではないことも分かっていった。 式点を壊したことは単なる始まりに過ぎ
[01:38:47] 式点を壊したことは単なる始まりに過ぎ ない。明日から本当の戦いが始まる。
[01:38:52] ない。明日から本当の戦いが始まる。 式点が崩壊した夜、東亜和重行の本社では
[01:38:56] 式点が崩壊した夜、東亜和重行の本社では 緊急会議が開かれていった。そのことを俺
[01:39:00] 緊急会議が開かれていった。そのことを俺 が知ったのは翌日の午後業界の知人からの
[01:39:03] が知ったのは翌日の午後業界の知人からの 電話だった。招待客の下半数が突然退積
[01:39:08] 電話だった。招待客の下半数が突然退積 するという前代未問の事態に東亜重の幹部
[01:39:12] するという前代未問の事態に東亜重の幹部 たちは与通し原因の救命に追われたらしい
[01:39:15] たちは与通し原因の救命に追われたらしい 。黒崎は当初何かの手違いだろうと
[01:39:20] 。黒崎は当初何かの手違いだろうと 取り合わなかったという。だが体積者の
[01:39:23] 取り合わなかったという。だが体積者の リストを精査した総務部の若手社員がある
[01:39:26] リストを精査した総務部の若手社員がある 事実に気づいた。席者の所属企業を
[01:39:30] 事実に気づいた。席者の所属企業を リスターしてみると名ロジスティクス
[01:39:34] リスターしてみると名ロジスティクス 赤峰テクノロジーズ
[01:39:36] 赤峰テクノロジーズ コチメンテナンス
[01:39:38] コチメンテナンス ハエテスティング
[01:39:40] ハエテスティング 一見バラバラの企業だが若手社員は過去の
[01:39:43] 一見バラバラの企業だが若手社員は過去の 取引データを遡りある共通点を見つけ出し
[01:39:47] 取引データを遡りある共通点を見つけ出し た全ての企業が大代正規の代表取り締まり
[01:39:51] た全ての企業が大代正規の代表取り締まり 役である大淳と何らかの資本関係または
[01:39:57] 役である大淳と何らかの資本関係または 業務定型関係を結んでいたのだ。退積者は
[01:40:01] 業務定型関係を結んでいたのだ。退積者は 全員が大城グループの社員、または関連
[01:40:05] 全員が大城グループの社員、または関連 企業の代表者だった。この報告を受けた
[01:40:09] 企業の代表者だった。この報告を受けた 中田には地質の椅子から立ち上がれなく
[01:40:12] 中田には地質の椅子から立ち上がれなく なったというステージの隅で底辺の街交場
[01:40:16] なったというステージの隅で底辺の街交場 とあらわれていた男の名前が取引データの
[01:40:20] とあらわれていた男の名前が取引データの 至るところに浮かび上がってくる。部品の
[01:40:23] 至るところに浮かび上がってくる。部品の 発注症、物流の契約書、システム保守の
[01:40:28] 発注症、物流の契約書、システム保守の 記録、設備点検の報告書、それらの書類の
[01:40:32] 記録、設備点検の報告書、それらの書類の 橋に記された小さな企業名が全て1つの
[01:40:36] 橋に記された小さな企業名が全て1つの 意図で繋がっていった。町の親父だと思っ
[01:40:40] 意図で繋がっていった。町の親父だと思っ ていた男が巨大なグループを束ねる総水
[01:40:44] ていた男が巨大なグループを束ねる総水 だった。そのグループが東和重行の
[01:40:47] だった。そのグループが東和重行の サプライチェーンの根換。部品供給物流
[01:40:52] サプライチェーンの根換。部品供給物流 システム保守設備保全に至るまでを支えて
[01:40:56] システム保守設備保全に至るまでを支えて いた。その全てが1人の男の指揮家にあっ
[01:41:00] いた。その全てが1人の男の指揮家にあっ たのだ。黒崎の顔色が変わったのはその
[01:41:04] たのだ。黒崎の顔色が変わったのはその 意味を理解した瞬間だった。自分が式天の
[01:41:08] 意味を理解した瞬間だった。自分が式天の 受付で底辺の町和と長した男は東亜和銃校
[01:41:14] 受付で底辺の町和と長した男は東亜和銃校 の生命線を握っている男だった。公衆の
[01:41:18] の生命線を握っている男だった。公衆の 面前で侮辱した相手はこの会社を根底から
[01:41:22] 面前で侮辱した相手はこの会社を根底から 揺がす力を持っている人間だったのだ。方
[01:41:26] 揺がす力を持っている人間だったのだ。方 には窓際に立ち、東京のビル軍を見つめ
[01:41:29] には窓際に立ち、東京のビル軍を見つめ ながら自分が経営者として犯した最大の
[01:41:34] ながら自分が経営者として犯した最大の 誤ちを噛しめていた専務の任命を謝った
[01:41:38] 誤ちを噛しめていた専務の任命を謝った ことだけではない。サプライチェーンの
[01:41:41] ことだけではない。サプライチェーンの 実態を自分の目で確認していなかったこと
[01:41:44] 実態を自分の目で確認していなかったこと を。取引先の1つ1つにどんな人間が
[01:41:48] を。取引先の1つ1つにどんな人間が どんな思いで仕事をしているのかを知ろう
[01:41:50] どんな思いで仕事をしているのかを知ろう ともしなかったこと。それが全ての始まり
[01:41:54] ともしなかったこと。それが全ての始まり だった。中谷は調査報告書を読み終えた後
[01:41:58] だった。中谷は調査報告書を読み終えた後 、黒崎を社長室に呼び出した。報告書を
[01:42:02] 、黒崎を社長室に呼び出した。報告書を テーブルの上に広げ、一言だけ聞いたと
[01:42:06] テーブルの上に広げ、一言だけ聞いたと いう。あの式点であなたは大城正規の代表
[01:42:10] いう。あの式点であなたは大城正規の代表 に何を言ったんだと。黒崎は最初
[01:42:13] に何を言ったんだと。黒崎は最初 白ばくれようとした。別に大したことは
[01:42:17] 白ばくれようとした。別に大したことは 言っていないと。だが中谷は受付にいた
[01:42:21] 言っていないと。だが中谷は受付にいた 女性社員からすでに証言を取っていた。
[01:42:25] 女性社員からすでに証言を取っていた。 底辺の街交場はすみっこに座ってろ。招待
[01:42:29] 底辺の街交場はすみっこに座ってろ。招待 客の面前で放ったその一言が東亜重行の
[01:42:33] 客の面前で放ったその一言が東亜重行の サプライチェーンの根換を揺がしたのだ。
[01:42:37] サプライチェーンの根換を揺がしたのだ。 年間120億円。東亜銃校の調達額の中で
[01:42:42] 年間120億円。東亜銃校の調達額の中で 大城グループが占める割合を初めて知った
[01:42:45] 大城グループが占める割合を初めて知った 黒崎は椅子から立ち上がることすらでき
[01:42:49] 黒崎は椅子から立ち上がることすらでき なかったらしい。こんなはずはないと何度
[01:42:52] なかったらしい。こんなはずはないと何度 も繰り返したが、数字は嘘をつかない。彼
[01:42:56] も繰り返したが、数字は嘘をつかない。彼 が底辺の街交場と笑い飛ばした男の影が
[01:43:00] が底辺の街交場と笑い飛ばした男の影が 自分の会社の隅々にまで伸びていたことを
[01:43:03] 自分の会社の隅々にまで伸びていたことを ようやく理解したのだ。中谷はその夜自宅
[01:43:08] ようやく理解したのだ。中谷はその夜自宅 に帰ることなく社長室に泊まり込んだと
[01:43:11] に帰ることなく社長室に泊まり込んだと いう。報告書を何度も読み返しながら自分
[01:43:15] いう。報告書を何度も読み返しながら自分 の不明の深さを噛しめていった。だが時
[01:43:19] の不明の深さを噛しめていった。だが時 すでに遅かった。黒崎は中谷の問えに対し
[01:43:24] すでに遅かった。黒崎は中谷の問えに対し て最後まで自分の火を認めなかったという
[01:43:27] て最後まで自分の火を認めなかったという 。あの程度の冗談で騒ぎ立てるような相手
[01:43:31] 。あの程度の冗談で騒ぎ立てるような相手 とはそもそも取引すべきではないと。その
[01:43:36] とはそもそも取引すべきではないと。その 発言を聞いた中谷にはそれ以上何も言わず
[01:43:40] 発言を聞いた中谷にはそれ以上何も言わず 黒崎を退出させた。
[01:43:43] 黒崎を退出させた。 無質に戻った黒崎はデスクの上に
[01:43:46] 無質に戻った黒崎はデスクの上に ウイスキーのボトルを出し、1人でグラス
[01:43:49] ウイスキーのボトルを出し、1人でグラス を傾けた。自分がどれほど深刻な事態を
[01:43:53] を傾けた。自分がどれほど深刻な事態を 引き起こしたのか、まだ理解できてい
[01:43:56] 引き起こしたのか、まだ理解できてい なかったのだろう。あるいは理解したく
[01:44:00] なかったのだろう。あるいは理解したく なかったのかもしれない。週が開けた朝、
[01:44:04] なかったのかもしれない。週が開けた朝、 党行の本社の総務部に大量の内容郵便が
[01:44:09] 党行の本社の総務部に大量の内容郵便が 一斉に届いた。郵便物を仕訳していた事務
[01:44:13] 一斉に届いた。郵便物を仕訳していた事務 の手が止まった。同じ書式、同じサイズの
[01:44:18] の手が止まった。同じ書式、同じサイズの 封筒が次から次へと山を作っていく。
[01:44:23] 封筒が次から次へと山を作っていく。 差し出し人はそれぞれ異なる企業名だが、
[01:44:26] 差し出し人はそれぞれ異なる企業名だが、 文面の趣旨は全て同じだった。契約更新の
[01:44:30] 文面の趣旨は全て同じだった。契約更新の 停止を通告する。大盛紀からは部品供給
[01:44:35] 停止を通告する。大盛紀からは部品供給 契約の更新停止。ロジスティックスからは
[01:44:40] 契約の更新停止。ロジスティックスからは 物流契約の更新停止。高嶺テクノロジーズ
[01:44:44] 物流契約の更新停止。高嶺テクノロジーズ からはシステム保契約の更新停止。
[01:44:49] からはシステム保契約の更新停止。 コッチンメンテナンスからは設備保全契約
[01:44:52] コッチンメンテナンスからは設備保全契約 の更新停止。その他のグループ企業からも
[01:44:57] の更新停止。その他のグループ企業からも それぞれの担当分野における契約の更新を
[01:45:00] それぞれの担当分野における契約の更新を 停止する胸が通告された。通告分の文明は
[01:45:05] 停止する胸が通告された。通告分の文明は 完結だった。先日の創立50周年記念式点
[01:45:10] 完結だった。先日の創立50周年記念式点 における恩社の対応を受け、今後の取引
[01:45:14] における恩社の対応を受け、今後の取引 関係について見直しを行うこととしました
[01:45:17] 関係について見直しを行うこととしました 。つきましては現行契約の更新を停止させ
[01:45:21] 。つきましては現行契約の更新を停止させ ていただきます。なお既存の契約に基づく
[01:45:25] ていただきます。なお既存の契約に基づく 義務は契約満僚まで履行いたします。法的
[01:45:30] 義務は契約満僚まで履行いたします。法的 には何の問題もない。契約の更新をしない
[01:45:33] には何の問題もない。契約の更新をしない だけだ。既存の義務は果たす。だが更新し
[01:45:38] だけだ。既存の義務は果たす。だが更新し ない。それだけで東亜重行のサプライ
[01:45:42] ない。それだけで東亜重行のサプライ チェーンは崩壊する。俺はその朝変わらず
[01:45:47] チェーンは崩壊する。俺はその朝変わらず 大城正規の工場で仕事をしていた。通告分
[01:45:51] 大城正規の工場で仕事をしていた。通告分 の発想は全夜のうちに宮里に指示しておい
[01:45:54] の発想は全夜のうちに宮里に指示しておい た。
[01:45:56] た。 は一晩で30通の文章を整え、一通1通の
[01:46:01] は一晩で30通の文章を整え、一通1通の 宛先を確認し、内容証明郵便の手配まで
[01:46:06] 宛先を確認し、内容証明郵便の手配まで 完了させていた。ただまって仕事を
[01:46:09] 完了させていた。ただまって仕事を 仕上げる。それが宮里という人間だ。
[01:46:14] 仕上げる。それが宮里という人間だ。 グループ各者のホーム担当にも連絡を通り
[01:46:17] グループ各者のホーム担当にも連絡を通り 、全車一斉に同じタイミングで通告を出す
[01:46:21] 、全車一斉に同じタイミングで通告を出す ようしてある。者が足並を揃えて動く。
[01:46:27] ようしてある。者が足並を揃えて動く。 それが俺たちのグループの強さだ。午前
[01:46:31] それが俺たちのグループの強さだ。午前 10時頃、宮里が事務所のドアを開けて
[01:46:35] 10時頃、宮里が事務所のドアを開けて 工場に顔を出した。社長、党行の勾配部長
[01:46:40] 工場に顔を出した。社長、党行の勾配部長 から電話です。かなり慌てた様子ですが、
[01:46:45] から電話です。かなり慌てた様子ですが、 俺は先盤の電源を切り、手を吹いてから
[01:46:48] 俺は先盤の電源を切り、手を吹いてから 事務所に向かった。電話の向こうの勾配
[01:46:51] 事務所に向かった。電話の向こうの勾配 部長は声が震えていた。
[01:46:54] 部長は声が震えていた。 30通の内容証明が届いたこと。その全て
[01:46:58] 30通の内容証明が届いたこと。その全て が大城グループからの通告であること。
[01:47:02] が大城グループからの通告であること。 このままでは生産ラインが止まること。
[01:47:05] このままでは生産ラインが止まること。 八木早にまくし立てる声を俺は黙って聞い
[01:47:09] 八木早にまくし立てる声を俺は黙って聞い ていった。勾配部長が人し切り話を得た後
[01:47:13] ていった。勾配部長が人し切り話を得た後 、俺は短く答えた。通告文に書いた通り
[01:47:18] 、俺は短く答えた。通告文に書いた通り です。既存の契約は満料まで履行します。
[01:47:23] です。既存の契約は満料まで履行します。 ですが更新はしません。電話の向こうで息
[01:47:27] ですが更新はしません。電話の向こうで息 を飲む気配がした。受じを握る俺の手は
[01:47:31] を飲む気配がした。受じを握る俺の手は 線盤を操る時と同じように美打にしなかっ
[01:47:34] 線盤を操る時と同じように美打にしなかっ た。これ以上のお話は恩社の社長にお願い
[01:47:38] た。これ以上のお話は恩社の社長にお願い します。勾配部長の判断で動ける話では
[01:47:42] します。勾配部長の判断で動ける話では ないでしょう。電話を切ると宮里が
[01:47:45] ないでしょう。電話を切ると宮里が コーヒーを差し出してくれた。俺はそれを
[01:47:48] コーヒーを差し出してくれた。俺はそれを 受け取りながら事務所の窓から外を見た。
[01:47:53] 受け取りながら事務所の窓から外を見た。 見慣れた窓の外の風景。向いの町場では朝
[01:47:57] 見慣れた窓の外の風景。向いの町場では朝 から金属を打つ音が響いている。この町は
[01:48:01] から金属を打つ音が響いている。この町は 何も変わっていない。変わったのは東和
[01:48:05] 何も変わっていない。変わったのは東和 銃校の中だけだ。宮里が事務的な区調で
[01:48:09] 銃校の中だけだ。宮里が事務的な区調で 報告を続けた。今朝だけで東亜重事の各
[01:48:13] 報告を続けた。今朝だけで東亜重事の各 部門から5件の電話が入っているという。
[01:48:17] 部門から5件の電話が入っているという。 勾配部門、物流部門、IT部門、設備管理
[01:48:22] 勾配部門、物流部門、IT部門、設備管理 部門、そして社長秘書室全てが契約の件に
[01:48:27] 部門、そして社長秘書室全てが契約の件に ついて子宮ご相談をという内容だった。
[01:48:31] ついて子宮ご相談をという内容だった。 宮里は全ての電話に対して同じ回答を返し
[01:48:35] 宮里は全ての電話に対して同じ回答を返し ていた。通告分に記載した通りでござい
[01:48:38] ていた。通告分に記載した通りでござい ます。ご不明な点がございましたら書面
[01:48:42] ます。ご不明な点がございましたら書面 にてお問い合わせくださいと。
[01:48:45] にてお問い合わせくださいと。 宮里のこの対応力が俺にとってどれほど
[01:48:48] 宮里のこの対応力が俺にとってどれほど ありがたいか感情に流されず地的にしかし
[01:48:54] ありがたいか感情に流されず地的にしかし 礼儀を失わない受け答えができる。この人
[01:48:57] 礼儀を失わない受け答えができる。この人 がいてくれるから俺は目の前の仕事に集中
[01:49:01] がいてくれるから俺は目の前の仕事に集中 できる。
[01:49:03] できる。 午後になると業界の知人たちから次々と
[01:49:07] 午後になると業界の知人たちから次々と 電話が入り始めた。おしさん、東亜重で
[01:49:11] 電話が入り始めた。おしさん、東亜重で 何かあったのか?うちにも東亜重行から
[01:49:15] 何かあったのか?うちにも東亜重行から 部品の緊急発注が来たんだが受けていいの
[01:49:17] 部品の緊急発注が来たんだが受けていいの か?
[01:49:19] か? 俺はそれぞれに対してうちの判断だから気
[01:49:23] 俺はそれぞれに対してうちの判断だから気 にせず普通に対応してくれとだけ答えた。
[01:49:27] にせず普通に対応してくれとだけ答えた。 お城グループとして他者に圧力をかける
[01:49:30] お城グループとして他者に圧力をかける つもりはもない。東亜銃校が大体の
[01:49:34] つもりはもない。東亜銃校が大体の サプライヤーを見つけられるならそれは
[01:49:37] サプライヤーを見つけられるならそれは それで構わない。
[01:49:39] それで構わない。 実際に見つかるかどうかは別の問題だ。
[01:49:44] 実際に見つかるかどうかは別の問題だ。 その日のうちに東亜重の株価は前日費8%
[01:49:49] その日のうちに東亜重の株価は前日費8% の下落を見せた。市場はまだ事態の前用を
[01:49:53] の下落を見せた。市場はまだ事態の前用を 把握していなかったが、東亜重のサプライ
[01:49:56] 把握していなかったが、東亜重のサプライ チェーンに問題が生じているという噂が
[01:50:00] チェーンに問題が生じているという噂が 関係者の間で急速に広まり始めていた。
[01:50:04] 関係者の間で急速に広まり始めていた。 投資家たちは噂だけで売りに走る。それが
[01:50:08] 投資家たちは噂だけで売りに走る。それが 史上の常だ。加藤が昼休みに珍しく真剣な
[01:50:13] 史上の常だ。加藤が昼休みに珍しく真剣な 顔で俺のところに来た。社長東ア重行と
[01:50:18] 顔で俺のところに来た。社長東ア重行と 何かあったんですか?朝から電話がな
[01:50:21] 何かあったんですか?朝から電話がな りっぱなしですけど。ちょっとした
[01:50:23] りっぱなしですけど。ちょっとした 生き違いだ。お前たちは気にせず無通りの
[01:50:27] 生き違いだ。お前たちは気にせず無通りの 仕事をしてくれ。加藤は黙って引き下がっ
[01:50:31] 仕事をしてくれ。加藤は黙って引き下がっ たが目の奥にはまだ不安の色が残っていた
[01:50:34] たが目の奥にはまだ不安の色が残っていた 。昭和重行は大城正規にとって最大の取引
[01:50:39] 。昭和重行は大城正規にとって最大の取引 先だ。その関係に何か問題が生じている
[01:50:43] 先だ。その関係に何か問題が生じている なら、社員たちが不安を覚えるのは当然
[01:50:46] なら、社員たちが不安を覚えるのは当然 だった。だが俺は社員たちに詳しい事情を
[01:50:50] だった。だが俺は社員たちに詳しい事情を 話すつもりはなかった。グループの戦略に
[01:50:54] 話すつもりはなかった。グループの戦略に 現場の社員を巻き込むのは俺の留儀では
[01:50:57] 現場の社員を巻き込むのは俺の留儀では ない。社員たちにはただいい仕事をして
[01:51:01] ない。社員たちにはただいい仕事をして もらえばいい。政治的な判断は俺の仕事だ
[01:51:05] もらえばいい。政治的な判断は俺の仕事だ 。
[01:51:07] 。 その日の午後俺は東亜従の部品の最後の
[01:51:11] その日の午後俺は東亜従の部品の最後の ロッドを仕上げていった。契約は満僚まで
[01:51:15] ロッドを仕上げていった。契約は満僚まで 履行する。それが俺たちの約束だ。通告を
[01:51:20] 履行する。それが俺たちの約束だ。通告を 出しておきながら品質を落とすような真似
[01:51:23] 出しておきながら品質を落とすような真似 はしない。最後の1個まで寸分の狂いも
[01:51:27] はしない。最後の1個まで寸分の狂いも ない制度を出す。職人としての教事がそう
[01:51:31] ない制度を出す。職人としての教事がそう させていた。
[01:51:33] させていた。 を回しながら俺は不思議なしさの中に行っ
[01:51:37] を回しながら俺は不思議なしさの中に行っ た。大きな決断を下した後の嵐の目のよう
[01:51:41] た。大きな決断を下した後の嵐の目のよう な静寂。外の世界では東和銃校の株価が
[01:51:46] な静寂。外の世界では東和銃校の株価が 暴落し、業界中が噂話に花を咲かせ、勾配
[01:51:51] 暴落し、業界中が噂話に花を咲かせ、勾配 担当者たちが大体先を探して駆けずり回っ
[01:51:55] 担当者たちが大体先を探して駆けずり回っ ている。だがこの工場の中では機械の音
[01:51:59] ている。だがこの工場の中では機械の音 だけが響いている。この単純で誠実な作業
[01:52:03] だけが響いている。この単純で誠実な作業 だけが俺を現実につなぎ止めてくれていた
[01:52:06] だけが俺を現実につなぎ止めてくれていた 。名から夕方に電話があった。東亜住行の
[01:52:12] 。名から夕方に電話があった。東亜住行の 物流部門から大体の運送会社を探して
[01:52:15] 物流部門から大体の運送会社を探して るって話が入ってきた。だがうちの規模を
[01:52:19] るって話が入ってきた。だがうちの規模を 代替できる会社なんてそう簡単に見つから
[01:52:22] 代替できる会社なんてそう簡単に見つから ないぞ。赤嶺からも連絡が来た。システム
[01:52:27] ないぞ。赤嶺からも連絡が来た。システム 保守の引き継ぎ要請が来てますが、応じる
[01:52:30] 保守の引き継ぎ要請が来てますが、応じる 必要はないですよね。契約満料までは
[01:52:34] 必要はないですよね。契約満料までは きちんと対応しますが、引き継ぎは契約の
[01:52:37] きちんと対応しますが、引き継ぎは契約の 業務です。俺は2人にそれぞれ同じことを
[01:52:41] 業務です。俺は2人にそれぞれ同じことを 伝えた。契約通りにやればいい。それ以上
[01:52:45] 伝えた。契約通りにやればいい。それ以上 のことをする必要はない。この判断が
[01:52:49] のことをする必要はない。この判断が 正しいのかどうか正直に言えば確信は
[01:52:52] 正しいのかどうか正直に言えば確信は なかった。グループ全体の仲間の生活が俺
[01:52:56] なかった。グループ全体の仲間の生活が俺 の判断にかかっている。亜行との取引が
[01:53:00] の判断にかかっている。亜行との取引が 完全に消えればグループの売上の15%が
[01:53:05] 完全に消えればグループの売上の15%が 失われる。それは小さな打撃ではない。だ
[01:53:09] 失われる。それは小さな打撃ではない。だ がここで引いたら今後もずっと引き続ける
[01:53:13] がここで引いたら今後もずっと引き続ける ことになる。底辺と呼ばれても笑って
[01:53:16] ことになる。底辺と呼ばれても笑って 受け流す。理不尽な値下げに応じる。それ
[01:53:20] 受け流す。理不尽な値下げに応じる。それ を繰り返していけば、いずれグループその
[01:53:23] を繰り返していけば、いずれグループその ものが崩壊する。ここが少年場だった。
[01:53:28] ものが崩壊する。ここが少年場だった。 グループの幹部たちは誰1人として俺の
[01:53:31] グループの幹部たちは誰1人として俺の 判断に意を唱えなかった。名も赤嶺もこチ
[01:53:35] 判断に意を唱えなかった。名も赤嶺もこチ もハエも全員が大城の判断に従うと言って
[01:53:40] もハエも全員が大城の判断に従うと言って くれた。
[01:53:42] くれた。 居酒屋のカウンターで缶コーヒーを
[01:53:45] 居酒屋のカウンターで缶コーヒーを 握りしめていた頃から誰1人として俺の
[01:53:48] 握りしめていた頃から誰1人として俺の 後ろを向いた人間はいない。苦しい時も
[01:53:53] 後ろを向いた人間はいない。苦しい時も 追い詰められた時もただまって並んで歩い
[01:53:56] 追い詰められた時もただまって並んで歩い てきたその事実の重みが胸の奥で熱い塊に
[01:54:01] てきたその事実の重みが胸の奥で熱い塊に なっている。長い再月をかけて気づいてき
[01:54:05] なっている。長い再月をかけて気づいてき た信頼の暑さを俺はこの時改めて噛しめた
[01:54:10] た信頼の暑さを俺はこの時改めて噛しめた 。1人では弱いだが仲間が束になれば大手
[01:54:16] 。1人では弱いだが仲間が束になれば大手 メーカーの応募にも対抗できる。それを
[01:54:20] メーカーの応募にも対抗できる。それを 証明するための戦いだ。
[01:54:23] 証明するための戦いだ。 その夜自宅のアパートで缶ビールを開け
[01:54:27] その夜自宅のアパートで缶ビールを開け ながら俺は1人で考えていた。窓の外では
[01:54:31] ながら俺は1人で考えていた。窓の外では 下町ちの夜が静かに吹けていく。テレビの
[01:54:35] 下町ちの夜が静かに吹けていく。テレビの ニュースでは東亜重行の株価下落が小さく
[01:54:39] ニュースでは東亜重行の株価下落が小さく 報じられている。もし亜行が大体先を
[01:54:43] 報じられている。もし亜行が大体先を 見つけて俺たちのグループなしでも回る
[01:54:46] 見つけて俺たちのグループなしでも回る ようになったら
[01:54:48] ようになったら その可能性がゼロだとは思っていなかった
[01:54:51] その可能性がゼロだとは思っていなかった 。時間をかければどんなサプライチェーン
[01:54:55] 。時間をかければどんなサプライチェーン も再構築できる。俺たちが不可欠な存在で
[01:54:59] も再構築できる。俺たちが不可欠な存在で あるのはあくまで今この瞬間の話だ。だ
[01:55:03] あるのはあくまで今この瞬間の話だ。だ からこそ今しかなかった。この一瞬の
[01:55:06] からこそ今しかなかった。この一瞬の インパクトで東亜重行の意識を変える。中
[01:55:10] インパクトで東亜重行の意識を変える。中 小企業を下受けではなくパートナーとして
[01:55:13] 小企業を下受けではなくパートナーとして 見る目を養わせる。それが今回の行動の
[01:55:18] 見る目を養わせる。それが今回の行動の 本当の目的だった。俺たちは永遠に不可欠
[01:55:22] 本当の目的だった。俺たちは永遠に不可欠 であることを目指しているわけではない。
[01:55:26] であることを目指しているわけではない。 に扱われることを求めているのだ。党和
[01:55:29] に扱われることを求めているのだ。党和 銃校が大体のサプライヤーを見つけるのは
[01:55:32] 銃校が大体のサプライヤーを見つけるのは 理論上は不可能ではない。だが部品供給
[01:55:37] 理論上は不可能ではない。だが部品供給 物流IT保守設備保全の全てを同時に
[01:55:42] 物流IT保守設備保全の全てを同時に 切り替えるには最低でも半年から1年の
[01:55:45] 切り替えるには最低でも半年から1年の 準備期間が必要だ。俺たちは代わりの効か
[01:55:49] 準備期間が必要だ。俺たちは代わりの効か ない仕事をしてきたのだ。その価値を黒崎
[01:55:53] ない仕事をしてきたのだ。その価値を黒崎 は理解していなかった。
[01:55:56] は理解していなかった。 自分の会社の急所を握っている手を自ら
[01:56:00] 自分の会社の急所を握っている手を自ら 払いのけてしまったのだ。
[01:56:03] 払いのけてしまったのだ。 翌日業界の知人から電話があった。党和
[01:56:07] 翌日業界の知人から電話があった。党和 銃校の車内が完全にパニック状態に陥って
[01:56:11] 銃校の車内が完全にパニック状態に陥って いるという情報だった。勾配部門は大体
[01:56:15] いるという情報だった。勾配部門は大体 サプライヤーの確保に放送し、物治流部門
[01:56:19] サプライヤーの確保に放送し、物治流部門 は配送ルートの再構築に追われ、IT部門
[01:56:23] は配送ルートの再構築に追われ、IT部門 はシステム保守の引き継ぎ先を探している
[01:56:25] はシステム保守の引き継ぎ先を探している 。だが、そのいずれも一兆一隻には解決し
[01:56:30] 。だが、そのいずれも一兆一隻には解決し ない問題ばかりだった。亜住行の広報担当
[01:56:35] ない問題ばかりだった。亜住行の広報担当 が記者会見を開き、サプライチェーンの
[01:56:38] が記者会見を開き、サプライチェーンの 一部に問題が発生しているが、早期解決に
[01:56:41] 一部に問題が発生しているが、早期解決に 向けて全力で対応中と発表した。だが記者
[01:56:46] 向けて全力で対応中と発表した。だが記者 たちの関心はすでになぜこうなったのかに
[01:56:50] たちの関心はすでになぜこうなったのかに 向いていた。ある記者が式点でのトラブル
[01:56:54] 向いていた。ある記者が式点でのトラブル が原因だという情報があるがと質問した時
[01:56:57] が原因だという情報があるがと質問した時 、広報担当の顔から色がうせたという自体
[01:57:02] 、広報担当の顔から色がうせたという自体 は企業の内部問題を超え社会的な関心ごと
[01:57:06] は企業の内部問題を超え社会的な関心ごと になりつつあった。特に深刻だったのは
[01:57:11] になりつつあった。特に深刻だったのは 車内の式の低下だった。昭和重行の現場の
[01:57:15] 車内の式の低下だった。昭和重行の現場の 社員たちは事態の原因が自社の専務の暴言
[01:57:19] 社員たちは事態の原因が自社の専務の暴言 であることを薄うさしていた。取引先を
[01:57:23] であることを薄うさしていた。取引先を 見下し招待客を侮辱した結果がこれだ。
[01:57:28] 見下し招待客を侮辱した結果がこれだ。 自分たちの上司が招えた薬菜のをなぜ現場
[01:57:32] 自分たちの上司が招えた薬菜のをなぜ現場 が払わされるのかという不満が車内の
[01:57:36] が払わされるのかという不満が車内の あちこちで紛出しているという。間管理職
[01:57:40] あちこちで紛出しているという。間管理職 の間では黒崎専務のせいでという言葉が
[01:57:44] の間では黒崎専務のせいでという言葉が 相言葉のようにかわされていた。名から
[01:57:48] 相言葉のようにかわされていた。名から 追加の情報も入った。党行が大体の
[01:57:52] 追加の情報も入った。党行が大体の 物流会社を探して業界に当たっているが、
[01:57:56] 物流会社を探して業界に当たっているが、 名の名前を出した途端にどの会社も腰が
[01:58:00] 名の名前を出した途端にどの会社も腰が 引けるという。ナゴロジスティックスは
[01:58:03] 引けるという。ナゴロジスティックスは 物流業界の中でも信頼の熱い企業であり、
[01:58:08] 物流業界の中でも信頼の熱い企業であり、 名古本人の人望も暑い。名さんの仕事を
[01:58:12] 名古本人の人望も暑い。名さんの仕事を 横取りする形になるのはちょっとと検営さ
[01:58:14] 横取りする形になるのはちょっとと検営さ れるケースが相ついでいった。大城
[01:58:18] れるケースが相ついでいった。大城 グループの影響力は直接の先だけでなく
[01:58:22] グループの影響力は直接の先だけでなく 業界全体に浸透していたのだ。俺自身は
[01:58:26] 業界全体に浸透していたのだ。俺自身は この数日間も変わらず日常を送っていた。
[01:58:30] この数日間も変わらず日常を送っていた。 朝1番に工場を開け、機械を動かし、渡辺
[01:58:35] 朝1番に工場を開け、機械を動かし、渡辺 に加工の指導をし、加藤と昼飯を食い、
[01:58:39] に加工の指導をし、加藤と昼飯を食い、 宮里にジムの確認をする。外の世界がどれ
[01:58:43] 宮里にジムの確認をする。外の世界がどれ だけ騒がしくてもこの工場の中では何も
[01:58:47] だけ騒がしくてもこの工場の中では何も 変わらない。千盤の前に立てば余計なこと
[01:58:51] 変わらない。千盤の前に立てば余計なこと は全て消える。金属が将先に当たる振動
[01:58:55] は全て消える。金属が将先に当たる振動 だけが世界の全てになる。その単純さが
[01:58:59] だけが世界の全てになる。その単純さが どれだけ救いになっているか。もし向上が
[01:59:02] どれだけ救いになっているか。もし向上が なかったら俺はとっくに心が折れていた
[01:59:06] なかったら俺はとっくに心が折れていた だろう。物を作るという行為だけがどんな
[01:59:10] だろう。物を作るという行為だけがどんな 不安も怒りも飲み込んでくれる。それが俺
[01:59:14] 不安も怒りも飲み込んでくれる。それが俺 にとっての正常であり、俺の強さの厳選
[01:59:18] にとっての正常であり、俺の強さの厳選 だった。
[01:59:20] だった。 契約行使の通告から3日が経った。秋の
[01:59:25] 契約行使の通告から3日が経った。秋の 日差しが工場の窓から差し込む中、俺は
[01:59:29] 日差しが工場の窓から差し込む中、俺は 変わらず千番の前に立っていた。だが東和
[01:59:32] 変わらず千番の前に立っていた。だが東和 重行の車内では目に見える異変が始まって
[01:59:36] 重行の車内では目に見える異変が始まって いった。最初に止まったのは部品供給だっ
[01:59:40] いった。最初に止まったのは部品供給だっ た。大城正規が製造していた精密部品の
[01:59:44] た。大城正規が製造していた精密部品の 在庫がそこを突き始め、生産ラインの稼働
[01:59:48] 在庫がそこを突き始め、生産ラインの稼働 率が費用ごとに下がっていった。体の部品
[01:59:52] 率が費用ごとに下がっていった。体の部品 メーカーを探すが始まったが、大城正規の
[01:59:57] メーカーを探すが始まったが、大城正規の 加工制度に匹敵できる企業は簡単には
[02:00:00] 加工制度に匹敵できる企業は簡単には 見つからない。特に大城正規レベルの交差
[02:00:04] 見つからない。特に大城正規レベルの交差 を安定して出せる町交は国内でも数える
[02:00:08] を安定して出せる町交は国内でも数える ほどしか存在しなかった。しかもそうした
[02:00:12] ほどしか存在しなかった。しかもそうした 企業の多くはすでに大城グループと何らか
[02:00:16] 企業の多くはすでに大城グループと何らか の関係を持っている。お城の名前を出した
[02:00:19] の関係を持っている。お城の名前を出した 途端に申し訳ありませんが、大城さんとの
[02:00:23] 途端に申し訳ありませんが、大城さんとの 関係がありますのでと断られるケースが
[02:00:26] 関係がありますのでと断られるケースが 続出したという。亜口の製造現場では部品
[02:00:31] 続出したという。亜口の製造現場では部品 の血品によるラインストップが発生する
[02:00:34] の血品によるラインストップが発生する たびに現場リーダーが勾配部門に土合の
[02:00:38] たびに現場リーダーが勾配部門に土合の 電話をかけた。大城さんの部品がなきゃ
[02:00:42] 電話をかけた。大城さんの部品がなきゃ うちのラインは動かないんだよ。なんとか
[02:00:44] うちのラインは動かないんだよ。なんとか しろ。しかし勾配部門にも打つ手がなかっ
[02:00:48] しろ。しかし勾配部門にも打つ手がなかっ た。大城正規の品質に匹敵する代体先は
[02:00:53] た。大城正規の品質に匹敵する代体先は そう簡単には見つからない。ある技術者が
[02:00:57] そう簡単には見つからない。ある技術者が 大城さんの部品の表面外度はカタログ地を
[02:01:00] 大城さんの部品の表面外度はカタログ地を はるかに上回っている。あれを再現できる
[02:01:04] はるかに上回っている。あれを再現できる 工場は国内でも片手で数えるほどだろうと
[02:01:07] 工場は国内でも片手で数えるほどだろうと 探索していたという。続いて物流が滞った
[02:01:13] 探索していたという。続いて物流が滞った ナゴロジスティックスが担っていた製品の
[02:01:15] ナゴロジスティックスが担っていた製品の 配送ルートは長年の実績に基づいて最適化
[02:01:20] 配送ルートは長年の実績に基づいて最適化 されたものだった。倉庫の配置、配送車両
[02:01:24] されたものだった。倉庫の配置、配送車両 のルーティング、入受けのタイミング、
[02:01:28] のルーティング、入受けのタイミング、 それらが全て名野チームの経験と地見に
[02:01:32] それらが全て名野チームの経験と地見に よって組み上げられている。別の運送会社
[02:01:36] よって組み上げられている。別の運送会社 に切り替えたところで同じ効率を再現する
[02:01:39] に切り替えたところで同じ効率を再現する には膨大な時間と労力が必要だった。実際
[02:01:44] には膨大な時間と労力が必要だった。実際 に代替の運送会社を手配したものの初日
[02:01:48] に代替の運送会社を手配したものの初日 から配送の遅延が多外し先からの苦情が
[02:01:52] から配送の遅延が多外し先からの苦情が 東亜和銃校に殺当した。東亜重口の営業文
[02:01:57] 東亜和銃校に殺当した。東亜重口の営業文 は取引先からの問い合わせ対応に追われて
[02:02:01] は取引先からの問い合わせ対応に追われて いた。本社の納品予定はどうなっています
[02:02:04] いた。本社の納品予定はどうなっています か?代替品の手配はいつ完了しますか?
[02:02:08] か?代替品の手配はいつ完了しますか? 営業マたちは具体的な回答ができず現在
[02:02:12] 営業マたちは具体的な回答ができず現在 対応中ですと繰り返すしかなかった。大手
[02:02:16] 対応中ですと繰り返すしかなかった。大手 メーカーにとって取引先への信頼を失う
[02:02:19] メーカーにとって取引先への信頼を失う ことは株価の下落以上に深刻なダメージ
[02:02:23] ことは株価の下落以上に深刻なダメージ だった。一度失った信頼を取り戻すには何
[02:02:27] だった。一度失った信頼を取り戻すには何 年もかかる。黒崎の一言が引き起こしたの
[02:02:31] 年もかかる。黒崎の一言が引き起こしたの は単なるサプライチェーンの崩壊ではない
[02:02:34] は単なるサプライチェーンの崩壊ではない 。50年かけて気づき上げた企業としての
[02:02:38] 。50年かけて気づき上げた企業としての 信用の崩壊だったのだ。5日目には車内
[02:02:42] 信用の崩壊だったのだ。5日目には車内 システムにも障害が出始めた。赤嶺
[02:02:46] システムにも障害が出始めた。赤嶺 テクノロジーズが構築し、7年間にわって
[02:02:49] テクノロジーズが構築し、7年間にわって 保守してきたシステム基盤は東亜重口の
[02:02:53] 保守してきたシステム基盤は東亜重口の 業務の根換を支えていた。18管理、在庫
[02:02:58] 業務の根換を支えていた。18管理、在庫 管理、人事給与、財務会計、あらゆる業務
[02:03:04] 管理、人事給与、財務会計、あらゆる業務 システムが赤峰のチームによって運用され
[02:03:06] システムが赤峰のチームによって運用され ていたが、保守契約の更新停止通告を受け
[02:03:10] ていたが、保守契約の更新停止通告を受け て新規の障害対応は契約として拒否される
[02:03:15] て新規の障害対応は契約として拒否される ようになった。既存の定期保守は契約通り
[02:03:19] ようになった。既存の定期保守は契約通り 実施されるが、突発的なトラブルへの緊急
[02:03:22] 実施されるが、突発的なトラブルへの緊急 対応はない。として7年間トラブルが
[02:03:26] 対応はない。として7年間トラブルが なかったのは赤嶺のチームが24時間体制
[02:03:30] なかったのは赤嶺のチームが24時間体制 で予防保全を行っていたからであり、その
[02:03:34] で予防保全を行っていたからであり、その 目が離れた途端に小さな障害が次々と表面
[02:03:38] 目が離れた途端に小さな障害が次々と表面 化し始めたのだ。
[02:03:41] 化し始めたのだ。 めにはこちメンテナンスが保全を担当して
[02:03:44] めにはこちメンテナンスが保全を担当して いた生産設備にも影響が出始めた。工場内
[02:03:49] いた生産設備にも影響が出始めた。工場内 のロボットアームのメンテナンスサイクル
[02:03:51] のロボットアームのメンテナンスサイクル が崩れ、精度にばらつきが生じ始めた。
[02:03:55] が崩れ、精度にばらつきが生じ始めた。 こっちのチームが毎月実施していた定期
[02:03:58] こっちのチームが毎月実施していた定期 点検が契約の更新停止に伴って次回以降は
[02:04:03] 点検が契約の更新停止に伴って次回以降は 未定となったのだ。設備メーカーの純正
[02:04:07] 未定となったのだ。設備メーカーの純正 サービスに切り替えようとしたが、対応
[02:04:10] サービスに切り替えようとしたが、対応 可能な技術者のスケジュールが1ヶ月先
[02:04:13] 可能な技術者のスケジュールが1ヶ月先 まで埋まっていると言われ、即事の対応は
[02:04:16] まで埋まっていると言われ、即事の対応は 不可能だった。コチメンテナンスの技術者
[02:04:20] 不可能だった。コチメンテナンスの技術者 たちが長年蓄積してきた設備の癖や弱点に
[02:04:24] たちが長年蓄積してきた設備の癖や弱点に 関する地見はマニュアルには乗っていない
[02:04:27] 関する地見はマニュアルには乗っていない 。その暗黙地が失われたことの重大層東和
[02:04:32] 。その暗黙地が失われたことの重大層東和 銃口の現場は通感していた。1週間で東亜
[02:04:37] 銃口の現場は通感していた。1週間で東亜 重の全機能が欺した。生産ラインは稼働率
[02:04:42] 重の全機能が欺した。生産ラインは稼働率 50%にまで低下し、製品の出荷は大幅に
[02:04:46] 50%にまで低下し、製品の出荷は大幅に 遅延し、車内システムは断的にダウンを
[02:04:50] 遅延し、車内システムは断的にダウンを 繰り返した。設備の保全も滞り、工場内の
[02:04:55] 繰り返した。設備の保全も滞り、工場内の 空調設備が故障しても修理の手配すらまま
[02:04:59] 空調設備が故障しても修理の手配すらまま ならない状態だった。党行の従業員たちの
[02:05:04] ならない状態だった。党行の従業員たちの 間には諦めに近い空気が漂った。なぜ
[02:05:09] 間には諦めに近い空気が漂った。なぜ こんなことになったのかという問に対する
[02:05:12] こんなことになったのかという問に対する 答えは社内の誰もが知っていた。専務が
[02:05:16] 答えは社内の誰もが知っていた。専務が 式点で取引先を侮辱したからたった一言の
[02:05:21] 式点で取引先を侮辱したからたった一言の 暴言が50年の歴史を持つ大企業を昨日
[02:05:25] 暴言が50年の歴史を持つ大企業を昨日 不全に陥らせた。現場の社員たちの中には
[02:05:30] 不全に陥らせた。現場の社員たちの中には あの町場の社長に申し訳ないとらすものも
[02:05:33] あの町場の社長に申し訳ないとらすものも いたという。彼らは日常的に大城正規の
[02:05:37] いたという。彼らは日常的に大城正規の 部品を手にしており、その品質の高さを身
[02:05:41] 部品を手にしており、その品質の高さを身 を持って知っていた。
[02:05:44] を持って知っていた。 上層部が見下した相手が実は自分たちの
[02:05:47] 上層部が見下した相手が実は自分たちの 仕事を支えていった。その事実の重さが
[02:05:51] 仕事を支えていった。その事実の重さが 現場にはよく分かっていたのだ。株価は
[02:05:55] 現場にはよく分かっていたのだ。株価は 暴落した。式点翌日の8%下落を川切りに
[02:06:00] 暴落した。式点翌日の8%下落を川切りに 1週間で累計25%の下落を記録した。
[02:06:05] 1週間で累計25%の下落を記録した。 市場は東亜重のサプライチェーン崩壊と
[02:06:08] 市場は東亜重のサプライチェーン崩壊と いうニュースに敏感に反応し、機関投資家
[02:06:12] いうニュースに敏感に反応し、機関投資家 を中心に売りが売りを呼ぶ展開となった。
[02:06:17] を中心に売りが売りを呼ぶ展開となった。 取引先や株主からの問い合わせが殺当し
[02:06:21] 取引先や株主からの問い合わせが殺当し 広報部門は対応に追われた。メディアから
[02:06:24] 広報部門は対応に追われた。メディアから の主題も入り始め、創立50周年式点で何
[02:06:29] の主題も入り始め、創立50周年式点で何 があったのかという疑問が業界全体に
[02:06:32] があったのかという疑問が業界全体に 広がっていった。和行の取締まり役では
[02:06:36] 広がっていった。和行の取締まり役では 連日のように緊急会議が開かれていた。
[02:06:40] 連日のように緊急会議が開かれていた。 議題は1つ大城グループとの関係修復
[02:06:46] 議題は1つ大城グループとの関係修復 だが黒崎はこの後に及んでもあの程度の
[02:06:49] だが黒崎はこの後に及んでもあの程度の 待ち交場の集まりになぜ我々が頭を下げ
[02:06:53] 待ち交場の集まりになぜ我々が頭を下げ なければならないのかと主張し続けたと
[02:06:56] なければならないのかと主張し続けたと いう。現実が見えていないのか、見えてい
[02:07:00] いう。現実が見えていないのか、見えてい ても認めたくないのかおそらくその両方
[02:07:04] ても認めたくないのかおそらくその両方 だろう。プライドが目を曇らせているだが
[02:07:08] だろう。プライドが目を曇らせているだが 工場の生産ラインが止まり出荷が滞り
[02:07:12] 工場の生産ラインが止まり出荷が滞り システムが落ちている現実の前に黒崎の
[02:07:16] システムが落ちている現実の前に黒崎の 主張は虚しく響くばかりだった。車内から
[02:07:20] 主張は虚しく響くばかりだった。車内から は黒崎への批判が紛出していた。上の現場
[02:07:25] は黒崎への批判が紛出していた。上の現場 リーダーたちが連盟で社長相手に単が書を
[02:07:28] リーダーたちが連盟で社長相手に単が書を 出し、現状の改善をと訴えたという営業
[02:07:33] 出し、現状の改善をと訴えたという営業 部門からは取引先への納品遅延の説明が
[02:07:37] 部門からは取引先への納品遅延の説明が できないという悲鳴が上がり、経理部門は
[02:07:41] できないという悲鳴が上がり、経理部門は このままでは月決算に重大な影響が出ると
[02:07:44] このままでは月決算に重大な影響が出ると 警告を発した。党和銃校の内部はまさに
[02:07:49] 警告を発した。党和銃校の内部はまさに 指面の状態だった。
[02:07:52] 指面の状態だった。 そして式店から8日目の朝俺が工場で千盤
[02:07:57] そして式店から8日目の朝俺が工場で千盤 を回していると宮里が駆け足で事務所から
[02:08:01] を回していると宮里が駆け足で事務所から 出てきた社長東行の中谷社長が来られてい
[02:08:06] 出てきた社長東行の中谷社長が来られてい ます。1人であっぽなしです。先盤の電源
[02:08:11] ます。1人であっぽなしです。先盤の電源 を切り、作業技のまま事務所に向かった。
[02:08:15] を切り、作業技のまま事務所に向かった。 着替える気はなかった。ここは俺の城だ。
[02:08:19] 着替える気はなかった。ここは俺の城だ。 俺のやり方で迎える。
[02:08:22] 俺のやり方で迎える。 事務所に向かう途中、工場の社員たちの
[02:08:25] 事務所に向かう途中、工場の社員たちの 視線を感じた。加藤が場から顔をあげ、
[02:08:30] 視線を感じた。加藤が場から顔をあげ、 渡辺がフライス版の手を止めている。党和
[02:08:34] 渡辺がフライス版の手を止めている。党和 重行の社長が直接来たという情報はすでに
[02:08:38] 重行の社長が直接来たという情報はすでに 向場中に広がっていた。だが誰も口を挟ま
[02:08:42] 向場中に広がっていた。だが誰も口を挟ま なかった。社長の判断に口を出す社員は
[02:08:46] なかった。社長の判断に口を出す社員は この工場にはいない。それは信頼の証だっ
[02:08:51] この工場にはいない。それは信頼の証だっ た。
[02:08:52] た。 事務所のドアを開けると中谷正が入り口に
[02:08:56] 事務所のドアを開けると中谷正が入り口に 立っていた。事務所の壁には年気の入った
[02:09:00] 立っていた。事務所の壁には年気の入った カレンダーがかけられ、棚には図面の
[02:09:03] カレンダーがかけられ、棚には図面の ファイルが隙間なく並んでいる。机の上に
[02:09:07] ファイルが隙間なく並んでいる。机の上に はコーヒーのシミが残ったマグカップと
[02:09:11] はコーヒーのシミが残ったマグカップと 宮里が整理した書類の束、工場の油と金属
[02:09:16] 宮里が整理した書類の束、工場の油と金属 の匂いが事務所の隅々にまで染みついて
[02:09:19] の匂いが事務所の隅々にまで染みついて いる。大手メーカーの社長室とは対局に
[02:09:23] いる。大手メーカーの社長室とは対局に ある空間だった。俺が事務所に入る前に
[02:09:28] ある空間だった。俺が事務所に入る前に ちらりと外を見た。黒塗りの車両者はどこ
[02:09:32] ちらりと外を見た。黒塗りの車両者はどこ にも止まっていない。秘書もいない。中谷
[02:09:36] にも止まっていない。秘書もいない。中谷 は本当に1人で来たのだ。電車かタコシー
[02:09:40] は本当に1人で来たのだ。電車かタコシー でこの下町の片隅まで大企業の社長が
[02:09:44] でこの下町の片隅まで大企業の社長が 突き添いもなくアポも取らず町場に
[02:09:48] 突き添いもなくアポも取らず町場に 駆けつけてきた。その事実だけで中谷の
[02:09:53] 駆けつけてきた。その事実だけで中谷の 切迫した思いが伝わってきた。62歳の
[02:09:57] 切迫した思いが伝わってきた。62歳の 東亜和重行の社長は高級そうなスーツを身
[02:10:00] 東亜和重行の社長は高級そうなスーツを身 にまとまっていたが、その目元にはクが
[02:10:03] にまとまっていたが、その目元にはクが 刻まれ、頬の当たりがこけて見えた。1
[02:10:08] 刻まれ、頬の当たりがこけて見えた。1 週間で何年分も吹け込んだような印象だっ
[02:10:11] 週間で何年分も吹け込んだような印象だっ た。中谷の目が作業技姿の俺を捉えた。油
[02:10:16] た。中谷の目が作業技姿の俺を捉えた。油 にまみれた作業技千番の金属分がついたて
[02:10:22] にまみれた作業技千番の金属分がついたて 短くり込んだ紙8日前式天の受付で黒崎が
[02:10:28] 短くり込んだ紙8日前式天の受付で黒崎が 底辺の町勾場と笑い飛ばしたあの町場の
[02:10:32] 底辺の町勾場と笑い飛ばしたあの町場の 親父がここにいるだが中谷の目に武の色は
[02:10:37] 親父がここにいるだが中谷の目に武の色は なかった。そこにあったのは切迫した混願
[02:10:41] なかった。そこにあったのは切迫した混願 だった。方には事務所に1歩入ると俺の前
[02:10:45] だった。方には事務所に1歩入ると俺の前 で膝をついた。代理席の床でもホテルの
[02:10:50] で膝をついた。代理席の床でもホテルの ロビーでもない。油みのついた事務所の
[02:10:53] ロビーでもない。油みのついた事務所の リノリウムの床に高級スーツの膝を
[02:10:57] リノリウムの床に高級スーツの膝を 押し付けて頭を下げた。お願いです。契約
[02:11:02] 押し付けて頭を下げた。お願いです。契約 を戻してください。その声は震えていた。
[02:11:07] を戻してください。その声は震えていた。 東亜銃校の社長が町場の事務所の床に額体
[02:11:11] 東亜銃校の社長が町場の事務所の床に額体 を擦すりつけている。
[02:11:13] を擦すりつけている。 俺はその姿を立ったまま見下ろしていた。
[02:11:17] 俺はその姿を立ったまま見下ろしていた。 しばらくの間事務所に沈黙が流れた。千盤
[02:11:21] しばらくの間事務所に沈黙が流れた。千盤 が止まった工場は静かで外からは自転車の
[02:11:25] が止まった工場は静かで外からは自転車の ベルの音と近所の工場で金属を打つカスか
[02:11:29] ベルの音と近所の工場で金属を打つカスか な土音だけが聞こえていた。大手メーカー
[02:11:33] な土音だけが聞こえていた。大手メーカー の社長が下町の街場の床に額体をつけて
[02:11:36] の社長が下町の街場の床に額体をつけて いる。この光景を親父が見たら何と言う
[02:11:40] いる。この光景を親父が見たら何と言う だろうか。きっと黙って見ているだけ
[02:11:43] だろうか。きっと黙って見ているだけ だろう。親父はそういう男だった。俺は
[02:11:48] だろう。親父はそういう男だった。俺は デスクの引き出しから1枚の写真を
[02:11:50] デスクの引き出しから1枚の写真を 撮り出した。式天の日、名に頼んで撮って
[02:11:55] 撮り出した。式天の日、名に頼んで撮って もらっていた写真だ。会場の採用。
[02:11:59] もらっていた写真だ。会場の採用。 テーブルクロスすらない寂しい席。壁際に
[02:12:03] テーブルクロスすらない寂しい席。壁際に ポツンと置かれた椅子。あの、華やかな
[02:12:07] ポツンと置かれた椅子。あの、華やかな 宴会場の中でただ1つだけ取り残された
[02:12:11] 宴会場の中でただ1つだけ取り残された ようなすみっこの席だった。写真を
[02:12:14] ようなすみっこの席だった。写真を テーブルの上に置き、俺は中谷に向かって
[02:12:17] テーブルの上に置き、俺は中谷に向かって 口を開いた。この席、今度は音社の社長
[02:12:22] 口を開いた。この席、今度は音社の社長 さんにお似合いじゃないですか?中谷の顔
[02:12:26] さんにお似合いじゃないですか?中谷の顔 が歪んだ写真を見つめるその目に式天の夜
[02:12:30] が歪んだ写真を見つめるその目に式天の夜 の光景が蘇っているのだろう。自者の専務
[02:12:34] の光景が蘇っているのだろう。自者の専務 が招待客を底辺と調昇し、会場の隅に
[02:12:38] が招待客を底辺と調昇し、会場の隅に 追い合った。その結果がこれだ。会社の
[02:12:43] 追い合った。その結果がこれだ。会社の 機能は麻痺し、株価は暴落し、社長自ら
[02:12:47] 機能は麻痺し、株価は暴落し、社長自ら 町勾場の床に擦すりつけている。
[02:12:52] 町勾場の床に擦すりつけている。 大城さん、弊社の専務がとんでもない失礼
[02:12:55] 大城さん、弊社の専務がとんでもない失礼 をしたことは承知しています。全て私の
[02:12:59] をしたことは承知しています。全て私の 管理不き届きです。どんな条件でも
[02:13:02] 管理不き届きです。どんな条件でも 受け入れます。
[02:13:04] 受け入れます。 どうか契約を。俺は腕を組んでしばらく
[02:13:08] どうか契約を。俺は腕を組んでしばらく 中谷の顔を見つめていた。この男自身が
[02:13:12] 中谷の顔を見つめていた。この男自身が 悪いわけではない。温厚な技術出身の経営
[02:13:16] 悪いわけではない。温厚な技術出身の経営 者で現場を大切にする人間だということは
[02:13:20] 者で現場を大切にする人間だということは 長年の付き合いで分かっている。だが専務
[02:13:24] 長年の付き合いで分かっている。だが専務 の応望を放置した責任は免がれない。条件
[02:13:28] の応望を放置した責任は免がれない。条件 は3つです。1つ目、黒崎専務の即事会認
[02:13:33] は3つです。1つ目、黒崎専務の即事会認 式天の件だけではなく、就任以来の取引先
[02:13:37] 式天の件だけではなく、就任以来の取引先 への応望な対応の全責任を取らせて
[02:13:40] への応望な対応の全責任を取らせて ください。中谷が顔をあげた。その目に
[02:13:45] ください。中谷が顔をあげた。その目に 一瞬だけ同様が走ったが、すぐに覚悟を
[02:13:48] 一瞬だけ同様が走ったが、すぐに覚悟を 決めた表情に変わった。中谷は無言で首を
[02:13:53] 決めた表情に変わった。中谷は無言で首を 縦に振った。2つ目、全息先への公式謝罪
[02:13:58] 縦に振った。2つ目、全息先への公式謝罪 分の送風。式点での専務の発言について
[02:14:03] 分の送風。式点での専務の発言について 党和重行として正式に謝罪してください。
[02:14:06] 党和重行として正式に謝罪してください。 これにも中谷は迷いなく応じた大正規の
[02:14:11] これにも中谷は迷いなく応じた大正規の 事務所に響く先の音だけが2人の間に
[02:14:15] 事務所に響く先の音だけが2人の間に 横たわる静かな緊張を埋めていた。3つ目
[02:14:20] 横たわる静かな緊張を埋めていた。3つ目 、今後の取引関係を大当な
[02:14:24] 、今後の取引関係を大当な パートナーシップとして再構築すること。
[02:14:27] パートナーシップとして再構築すること。 下受けではなくパートナーとしてそれを
[02:14:30] 下受けではなくパートナーとしてそれを 名文化した新しい基本契約を締結して
[02:14:33] 名文化した新しい基本契約を締結して ください。中谷はしばらく黙っていたが、
[02:14:38] ください。中谷はしばらく黙っていたが、 やがてゆっくりと立ち上がり、俺に向かっ
[02:14:41] やがてゆっくりと立ち上がり、俺に向かっ て深く頭を下げた。全て受け入れます。
[02:14:46] て深く頭を下げた。全て受け入れます。 大城さん。いや、大城グループの総水とし
[02:14:50] 大城さん。いや、大城グループの総水とし てあなたの力を正当に評価できなかった
[02:14:53] てあなたの力を正当に評価できなかった 我々の不明を深く応援します。俺は中谷の
[02:14:59] 我々の不明を深く応援します。俺は中谷の 手を取り立たせた。中谷の手は意外にも
[02:15:03] 手を取り立たせた。中谷の手は意外にも ゴツゴツとしていた。技術出身だと聞いて
[02:15:07] ゴツゴツとしていた。技術出身だと聞いて いたが、若い頃は現場で手を動かしていた
[02:15:11] いたが、若い頃は現場で手を動かしていた のだろう。その手の感触に同じ物づりの
[02:15:15] のだろう。その手の感触に同じ物づりの 人間としての真金感を覚えた。絵かについ
[02:15:18] 人間としての真金感を覚えた。絵かについ た膝を払ってやりながら静かに言った。
[02:15:23] た膝を払ってやりながら静かに言った。 中谷さん、俺は復讐がしたかったわけじゃ
[02:15:26] 中谷さん、俺は復讐がしたかったわけじゃ ない。ただうちの社員たち、グループの
[02:15:30] ない。ただうちの社員たち、グループの 仲間たちの仕事を正当に評価して欲しかっ
[02:15:33] 仲間たちの仕事を正当に評価して欲しかっ ただけです。中谷の目が赤くなった。長年
[02:15:38] ただけです。中谷の目が赤くなった。長年 の経営者としての教事と自分の不明に
[02:15:42] の経営者としての教事と自分の不明に 対する悔しさがその表情に滲んでいた。
[02:15:46] 対する悔しさがその表情に滲んでいた。 事務所の外では先盤の音がかかに聞こえて
[02:15:49] 事務所の外では先盤の音がかかに聞こえて いる。加藤たちが変わらず仕事を続けて
[02:15:53] いる。加藤たちが変わらず仕事を続けて いるのだ。この音が全てだ。式典の
[02:15:57] いるのだ。この音が全てだ。式典の シャンパンでもなく、黒崎の銀ブメガネで
[02:16:00] シャンパンでもなく、黒崎の銀ブメガネで もなく、この千番の音こそが俺たちの存在
[02:16:05] もなく、この千番の音こそが俺たちの存在 の証明だ。帰ったら社員さんたちに伝えて
[02:16:09] の証明だ。帰ったら社員さんたちに伝えて ください。品を作っているのも運んでいる
[02:16:12] ください。品を作っているのも運んでいる のもシステムを守っているのも全て
[02:16:15] のもシステムを守っているのも全て 1人1人の人間だとその人たちの仕事には
[02:16:19] 1人1人の人間だとその人たちの仕事には 企業の代償に関係なく同じだけの価値が
[02:16:23] 企業の代償に関係なく同じだけの価値が あるんだと。中谷は俺の言葉を聞きながら
[02:16:28] あるんだと。中谷は俺の言葉を聞きながら 何度も唇を噛みしめていった。技術畑出身
[02:16:32] 何度も唇を噛みしめていった。技術畑出身 の人間だからこそ現場で働く人間の価値を
[02:16:37] の人間だからこそ現場で働く人間の価値を 本当は分かっているはずだ。それを見失っ
[02:16:41] 本当は分かっているはずだ。それを見失っ ていたことに対する悔しさがその表情に
[02:16:44] ていたことに対する悔しさがその表情に 刻まれていた。もう1つだけ。これは条件
[02:16:49] 刻まれていた。もう1つだけ。これは条件 じゃなく俺の個人的な願いです。中谷が顔
[02:16:54] じゃなく俺の個人的な願いです。中谷が顔 をあげた。その目には条件を突きつけ
[02:16:57] をあげた。その目には条件を突きつけ られる覚悟とは違う。何か別の感情が
[02:17:01] られる覚悟とは違う。何か別の感情が 浮かんでいた。事務所の片隅に積まれた
[02:17:05] 浮かんでいた。事務所の片隅に積まれた 図面の束がこの工場の日常静かに物語って
[02:17:10] 図面の束がこの工場の日常静かに物語って いる。音社の工場に行ったことはあります
[02:17:14] いる。音社の工場に行ったことはあります か?生産ラインの横に立って部品が
[02:17:18] か?生産ラインの横に立って部品が 組み込まれていく様子を見たことは
[02:17:21] 組み込まれていく様子を見たことは 中谷は少し考えてから小さく首を振った
[02:17:25] 中谷は少し考えてから小さく首を振った 現場を知らない経営者の弱さがその仕草
[02:17:29] 現場を知らない経営者の弱さがその仕草 に滲んでいった。俺が削った部品が音社の
[02:17:33] に滲んでいった。俺が削った部品が音社の 工場で組み込まれて1つの製品になる。
[02:17:37] 工場で組み込まれて1つの製品になる。 その製品がどこかの誰かの暮らしを支えて
[02:17:40] その製品がどこかの誰かの暮らしを支えて いる。サプライチェーンンっていうのは
[02:17:43] いる。サプライチェーンンっていうのは そういうことなんです。1つ1つは小さな
[02:17:46] そういうことなんです。1つ1つは小さな 仕事だが全部繋がっている。その繋がりを
[02:17:51] 仕事だが全部繋がっている。その繋がりを 軽論じたら全体が崩れる。今回の件でそれ
[02:17:56] 軽論じたら全体が崩れる。今回の件でそれ が証明されたんじゃないですか。中谷は
[02:17:59] が証明されたんじゃないですか。中谷は しばらく黙っていった。
[02:18:02] しばらく黙っていった。 そしてゆっくりと立ち上がると俺に向かっ
[02:18:05] そしてゆっくりと立ち上がると俺に向かっ て深く頭を下げた。今度は土下座ではなく
[02:18:09] て深く頭を下げた。今度は土下座ではなく 1人の経営者としてもう1人の経営者に
[02:18:13] 1人の経営者としてもう1人の経営者に 経緯を示す霊だった。お城さん、今日ここ
[02:18:18] 経緯を示す霊だった。お城さん、今日ここ に来てあなたの工場を見て初めて分かった
[02:18:22] に来てあなたの工場を見て初めて分かった ことがあります。あなたが町勾場に残り
[02:18:25] ことがあります。あなたが町勾場に残り 続けている理由が私にはその覚悟がなかっ
[02:18:30] 続けている理由が私にはその覚悟がなかっ た。
[02:18:31] た。 その言葉は形式的な謝罪よりもずっと
[02:18:34] その言葉は形式的な謝罪よりもずっと 重かった。中谷は何度も深く首を下げ
[02:18:38] 重かった。中谷は何度も深く首を下げ ながら事務所を後にしたホテルのロビーで
[02:18:42] ながら事務所を後にしたホテルのロビーで 土下座した姿とは違うどこか吹っ切れた
[02:18:46] 土下座した姿とは違うどこか吹っ切れた ような背中だった。
[02:18:49] ような背中だった。 中谷が去った後、宮里がコーヒーを2つ
[02:18:52] 中谷が去った後、宮里がコーヒーを2つ 持って事務所に入ってきた。1つを俺の
[02:18:56] 持って事務所に入ってきた。1つを俺の デスクに置き、もう1つを自分の手に持っ
[02:18:59] デスクに置き、もう1つを自分の手に持っ たまま窓際に立った。宮里は窓の外を
[02:19:04] たまま窓際に立った。宮里は窓の外を 見つめていった。全てが片付いたのだろう
[02:19:07] 見つめていった。全てが片付いたのだろう かという思いがその横顔に浮かんでいる。
[02:19:11] かという思いがその横顔に浮かんでいる。 俺はコーヒーを一口すすり、千盤のある
[02:19:15] 俺はコーヒーを一口すすり、千盤のある 工場の方を見た。午後の日差しが工場の窓
[02:19:19] 工場の方を見た。午後の日差しが工場の窓 から差し込んでいる。金属の表面がその光
[02:19:23] から差し込んでいる。金属の表面がその光 を反射してキらりと光った。あは向こう
[02:19:28] を反射してキらりと光った。あは向こう 次第だ。俺たちは普段通り仕事を続ける。
[02:19:32] 次第だ。俺たちは普段通り仕事を続ける。 それだけだ。宮里は小さく微縁で自分の
[02:19:37] それだけだ。宮里は小さく微縁で自分の デスクに戻った。
[02:19:40] デスクに戻った。 その夜名に電話をかけた。終わったよと
[02:19:44] その夜名に電話をかけた。終わったよと 一言伝えると名子は電話の向こうで深い
[02:19:48] 一言伝えると名子は電話の向こうで深い ため息をついた。度のためだった。
[02:19:53] ため息をついた。度のためだった。 そうか。で、どんな条件を出した?黒崎の
[02:19:59] そうか。で、どんな条件を出した?黒崎の 会人、全域先への公式謝罪。対等な
[02:20:03] 会人、全域先への公式謝罪。対等な パートナーシップの名文か。この3つだ。
[02:20:08] パートナーシップの名文か。この3つだ。 名古屋一瞬黙り、それから短い簡単の声
[02:20:12] 名古屋一瞬黙り、それから短い簡単の声 を漏らした。条件の内容に納得している
[02:20:16] を漏らした。条件の内容に納得している ようだった。電話の向こうで謎が深く息を
[02:20:20] ようだった。電話の向こうで謎が深く息を 吐く音が聞こえた。15年間共に走り続け
[02:20:24] 吐く音が聞こえた。15年間共に走り続け てきた男の安がその一息に込められていた
[02:20:28] てきた男の安がその一息に込められていた 。やりすぎたら俺たちも黒先と同じになる
[02:20:32] 。やりすぎたら俺たちも黒先と同じになる 。筋を通すことと相手を追い詰めることは
[02:20:36] 。筋を通すことと相手を追い詰めることは 違う。名はしばらく長い沈黙を置いた後、
[02:20:41] 違う。名はしばらく長い沈黙を置いた後、 低い声で言った。お城、お前について行っ
[02:20:46] 低い声で言った。お城、お前について行っ てよかったよ。あの日の俺たちは正しかっ
[02:20:49] てよかったよ。あの日の俺たちは正しかっ た。俺は何も答えなかった。ただ電話を
[02:20:54] た。俺は何も答えなかった。ただ電話を 持つ手に少しだけ力を込めた。
[02:20:58] 持つ手に少しだけ力を込めた。 歩んできたがこの一言に凝縮されていた。
[02:21:03] 歩んできたがこの一言に凝縮されていた。 あの安い居酒屋のカウンターで缶コーヒー
[02:21:06] あの安い居酒屋のカウンターで缶コーヒー を手にした名の目が今でも脳りに焼きつい
[02:21:10] を手にした名の目が今でも脳りに焼きつい ている。一者じゃどうにもならねえんだよ
[02:21:14] ている。一者じゃどうにもならねえんだよ な。の夜の名の声は今も俺の耳の奥で響い
[02:21:19] な。の夜の名の声は今も俺の耳の奥で響い ている。
[02:21:22] ている。 赤峰にも連絡を入れた。窓の外では工場の
[02:21:26] 赤峰にも連絡を入れた。窓の外では工場の 煙突から白い煙が登っている。この煙が
[02:21:30] 煙突から白い煙が登っている。この煙が 上がり続ける限り俺たちは負けていない。
[02:21:35] 上がり続ける限り俺たちは負けていない。 赤嶺は珍しく声を振わせていた。大城さん
[02:21:40] 赤嶺は珍しく声を振わせていた。大城さん 本当にお疲れ様でした。うちのメンバーに
[02:21:43] 本当にお疲れ様でした。うちのメンバーに も報告します。みんな安心すると思います
[02:21:46] も報告します。みんな安心すると思います 。赤峰1つ頼みがある党和銃校のシステム
[02:21:52] 。赤峰1つ頼みがある党和銃校のシステム 保守。契約が再開されたら今まで以上に
[02:21:56] 保守。契約が再開されたら今まで以上に しっかりやってくれ。俺たちは相手を困ら
[02:22:00] しっかりやってくれ。俺たちは相手を困ら せるために仕事をしてるんじゃない。相手
[02:22:02] せるために仕事をしてるんじゃない。相手 の役に立つために仕事をしてるんだ。それ
[02:22:06] の役に立つために仕事をしてるんだ。それ を忘れるな。赤嶺は力強い声で王した。
[02:22:11] を忘れるな。赤嶺は力強い声で王した。 チームの意思は揺ぎない。最初から全員が
[02:22:15] チームの意思は揺ぎない。最初から全員が そのつもりで仕事をしているのだ。
[02:22:18] そのつもりで仕事をしているのだ。 電話を切った後、俺はいつものように
[02:22:22] 電話を切った後、俺はいつものように アパートの狭いキッチンで1人分の夕飯を
[02:22:25] アパートの狭いキッチンで1人分の夕飯を 作った。味噌汁と焼き魚と納豆。湿そが
[02:22:31] 作った。味噌汁と焼き魚と納豆。湿そが 十分だ。ビールを開けながら窓の外を見た
[02:22:35] 十分だ。ビールを開けながら窓の外を見た 。下町ちの夜空は星が少ないだがこの空の
[02:22:40] 。下町ちの夜空は星が少ないだがこの空の 下でグループの仲間たちがそれぞれの場所
[02:22:43] 下でグループの仲間たちがそれぞれの場所 でそれぞれの仕事をしている。その事実が
[02:22:48] でそれぞれの仕事をしている。その事実が どんな星空よりも心強かった。
[02:22:52] どんな星空よりも心強かった。 翌朝俺は6時半に工場のシャッターをあげ
[02:22:56] 翌朝俺は6時半に工場のシャッターをあげ た。冷え込んだ工場の空気が一気に外の朝
[02:23:00] た。冷え込んだ工場の空気が一気に外の朝 の光と混じり合う。コーヒーを飲み干し、
[02:23:05] の光と混じり合う。コーヒーを飲み干し、 作業技の袖をまくり上げる。壁にかかった
[02:23:09] 作業技の袖をまくり上げる。壁にかかった 親父の写真に一別をくれてから先番の電源
[02:23:13] 親父の写真に一別をくれてから先番の電源 を入れた。チャックにワークをセットし、
[02:23:16] を入れた。チャックにワークをセットし、 バイトのは先を確認する。呼び先では朝の
[02:23:20] バイトのは先を確認する。呼び先では朝の 角度を確かめる感触は20年前から何も
[02:23:24] 角度を確かめる感触は20年前から何も 変わっていない。この手が覚えている感覚
[02:23:28] 変わっていない。この手が覚えている感覚 だけがどんな時代になっても色わせない。
[02:23:32] だけがどんな時代になっても色わせない。 か高い加工音が再び工場に響き始めた。
[02:23:38] か高い加工音が再び工場に響き始めた。 黒崎常彦が東和重行を解認されたのは中谷
[02:23:42] 黒崎常彦が東和重行を解認されたのは中谷 社長が大城正規を訪れた翌日のことだった
[02:23:46] 社長が大城正規を訪れた翌日のことだった 。臨時取締まり役で全一致の会認決議が
[02:23:51] 。臨時取締まり役で全一致の会認決議が 可決され退職金も大幅に減額された式点
[02:23:57] 可決され退職金も大幅に減額された式点 崩壊の全責任を取らされる形での会認だっ
[02:24:00] 崩壊の全責任を取らされる形での会認だっ た。50年の歴史を持つ大手メーカーの
[02:24:05] た。50年の歴史を持つ大手メーカーの 創立記念式店を壊滅させたとして黒崎の
[02:24:10] 創立記念式店を壊滅させたとして黒崎の 名前は業界内にまた琢間に広まった。黒崎
[02:24:14] 名前は業界内にまた琢間に広まった。黒崎 が会認された日東亜重行の正面玄関から
[02:24:19] が会認された日東亜重行の正面玄関から 1人で出てきた姿を社員たちが窓から見て
[02:24:23] 1人で出てきた姿を社員たちが窓から見て いたという。オーダーメイドのスーツは
[02:24:26] いたという。オーダーメイドのスーツは そのままだったが胸源のバッチはすでに
[02:24:30] そのままだったが胸源のバッチはすでに 外されていた。ダンボール箱を1つだけ
[02:24:33] 外されていた。ダンボール箱を1つだけ 抱え、タクシーに乗り込んだ。あれほど
[02:24:37] 抱え、タクシーに乗り込んだ。あれほど 車内で牽制を振っていた男の最後がダン
[02:24:40] 車内で牽制を振っていた男の最後がダン ボール1つ。見送る人間は誰もいなかった
[02:24:45] ボール1つ。見送る人間は誰もいなかった 。権力にすり寄っていた部下たちは塩が
[02:24:49] 。権力にすり寄っていた部下たちは塩が 引くように離れていった。権力がなくなれ
[02:24:52] 引くように離れていった。権力がなくなれ ば媚びる理由もない。黒崎が気づいてきた
[02:24:56] ば媚びる理由もない。黒崎が気づいてきた 車内の人間関係は全て理害の上に成り立っ
[02:25:00] 車内の人間関係は全て理害の上に成り立っ ていたのだ。
[02:25:02] ていたのだ。 黒崎が去った後の東和重行では中谷社長
[02:25:06] 黒崎が去った後の東和重行では中谷社長 主導で車内改革が始まった。取引先との
[02:25:11] 主導で車内改革が始まった。取引先との 関係を見直すプロジェクトチームが発足し
[02:25:14] 関係を見直すプロジェクトチームが発足し 、パートナーシップ検証と題した行動指針
[02:25:18] 、パートナーシップ検証と題した行動指針 が全社員に配布された。その冒頭には中谷
[02:25:22] が全社員に配布された。その冒頭には中谷 自身の言葉でこう記されていた。我々の
[02:25:26] 自身の言葉でこう記されていた。我々の 授業は一社では成り立たない。サプライ
[02:25:29] 授業は一社では成り立たない。サプライ チェーン園に関わる全ての企業が対等な
[02:25:32] チェーン園に関わる全ての企業が対等な パートナーであると、あの夜町の事務所で
[02:25:37] パートナーであると、あの夜町の事務所で 聞いた俺の言葉が中谷の中で確かに響いて
[02:25:41] 聞いた俺の言葉が中谷の中で確かに響いて いたのだろう。俺自身はパートナーシップ
[02:25:45] いたのだろう。俺自身はパートナーシップ 検証の原文を宮里経由で読んだ。完潔で
[02:25:49] 検証の原文を宮里経由で読んだ。完潔で 飾りのない文章だった。完僚的な美事霊ク
[02:25:54] 飾りのない文章だった。完僚的な美事霊ク ではなく現場を知る技術者の言葉で書かれ
[02:25:57] ではなく現場を知る技術者の言葉で書かれ ている中谷が自分で書いたのだとすぐに
[02:26:01] ている中谷が自分で書いたのだとすぐに 分かった。会人から2週間後、黒崎は最終
[02:26:06] 分かった。会人から2週間後、黒崎は最終 職活動を始めた。大手勝者出身の経歴と
[02:26:11] 職活動を始めた。大手勝者出身の経歴と 党和銃校の専務取り締まり役という肩書き
[02:26:14] 党和銃校の専務取り締まり役という肩書き は本来なら転職市場で十分な武器になる
[02:26:18] は本来なら転職市場で十分な武器になる はずだった。だが現実は甘くなかった。
[02:26:23] はずだった。だが現実は甘くなかった。 最初に訪問したのは大手素材メーカーだっ
[02:26:26] 最初に訪問したのは大手素材メーカーだっ た。人事部長との面談で経歴を説明し終え
[02:26:31] た。人事部長との面談で経歴を説明し終え た後、人事部長はしばらく黙っていたと
[02:26:34] た後、人事部長はしばらく黙っていたと いう、そして申し訳なさそうな声で
[02:26:37] いう、そして申し訳なさそうな声で 切り出した。黒崎さん大変恐縮なのですが
[02:26:42] 切り出した。黒崎さん大変恐縮なのですが 弊社は大城グループさんとお取引がござい
[02:26:45] 弊社は大城グループさんとお取引がござい まして、その一言で面談は終わった。次に
[02:26:51] まして、その一言で面談は終わった。次に 訪問した機械メーカーでも同じことが起き
[02:26:54] 訪問した機械メーカーでも同じことが起き た。面接の冒頭で名前を名乗った途端、
[02:26:58] た。面接の冒頭で名前を名乗った途端、 面接感の表情が変わった。あの式点の専務
[02:27:02] 面接感の表情が変わった。あの式点の専務 だと気づかれたのだ。黒崎が何か弁名
[02:27:06] だと気づかれたのだ。黒崎が何か弁名 しようとする前に面接感は丁に、しかし
[02:27:10] しようとする前に面接感は丁に、しかし 明確に断りの言葉を口にした。この会社も
[02:27:15] 明確に断りの言葉を口にした。この会社も また大城グループの行き先だったのだ。3
[02:27:19] また大城グループの行き先だったのだ。3 者目は面接に通された途端。対面した人事
[02:27:23] 者目は面接に通された途端。対面した人事 担当者が名刺を見てかに顔を曇らせた。4
[02:27:28] 担当者が名刺を見てかに顔を曇らせた。4 者目は一次面接を通過したものの、最終
[02:27:32] 者目は一次面接を通過したものの、最終 面接の前日にメールで事態を求められた。
[02:27:36] 面接の前日にメールで事態を求められた。 結果は同じだった。製造業の世界は広い
[02:27:41] 結果は同じだった。製造業の世界は広い ようで狭い。特にサプライチェーンに
[02:27:44] ようで狭い。特にサプライチェーンに 関わる企業同士のネットワークは緊密で1
[02:27:48] 関わる企業同士のネットワークは緊密で1 つの事件はあっという間に業界全体に
[02:27:51] つの事件はあっという間に業界全体に 伝わる。党和重の式点で取引先を侮辱し、
[02:27:56] 伝わる。党和重の式点で取引先を侮辱し、 大量の集団体を引き起こした専務。その噂
[02:28:00] 大量の集団体を引き起こした専務。その噂 は黒崎が最終職活動を始める頃にはすでに
[02:28:05] は黒崎が最終職活動を始める頃にはすでに 業界の常識になっていった。しかも黒崎が
[02:28:09] 業界の常識になっていった。しかも黒崎が 訪問する企業のことが大代グループと何ら
[02:28:13] 訪問する企業のことが大代グループと何ら かの取引関係を持っていた。部品を大城代
[02:28:17] かの取引関係を持っていた。部品を大城代 正規に発注している会社。物流を
[02:28:20] 正規に発注している会社。物流を ナゴロジスティックスに委託している会社
[02:28:23] ナゴロジスティックスに委託している会社 。システムを赤嶺テクノロジーズに任せて
[02:28:27] 。システムを赤嶺テクノロジーズに任せて いる会社。大グループの取引ネットワーク
[02:28:31] いる会社。大グループの取引ネットワーク は黒崎が想像していたよりもはかに広く
[02:28:35] は黒崎が想像していたよりもはかに広く 深く業界全体に根を張っていたのだ。5者
[02:28:40] 深く業界全体に根を張っていたのだ。5者 目の面接で黒崎は初めて土星をあげた
[02:28:43] 目の面接で黒崎は初めて土星をあげた らしい。どこに行っても大城大城かと。だ
[02:28:48] らしい。どこに行っても大城大城かと。だ が面接官は冷静にこう返したという。白
[02:28:52] が面接官は冷静にこう返したという。白 グループさんは長年にわって我々の事業を
[02:28:56] グループさんは長年にわって我々の事業を 支えてくださっている大切なパートナー
[02:28:59] 支えてくださっている大切なパートナー です。そのパートナーを公けの場で侮辱さ
[02:29:02] です。そのパートナーを公けの場で侮辱さ れた方を弊社がお迎えすることは難しい。
[02:29:07] れた方を弊社がお迎えすることは難しい。 人を見下した人間が今度は自分が見下さ
[02:29:11] 人を見下した人間が今度は自分が見下さ れる側に回った。すみっこに座れと下げの
[02:29:15] れる側に回った。すみっこに座れと下げの 言葉を投げた男がどこにも座る場所を
[02:29:18] 言葉を投げた男がどこにも座る場所を 見つけられない。者目以降はもう面接に
[02:29:22] 見つけられない。者目以降はもう面接に すらたどり着けなくなった。履歴書を送っ
[02:29:26] すらたどり着けなくなった。履歴書を送っ た時点でお見送りとさせていただきますと
[02:29:29] た時点でお見送りとさせていただきますと いう返信が来る。黒崎常彦という名前自体
[02:29:34] いう返信が来る。黒崎常彦という名前自体 が製造業界ではブラックリスト入りしてい
[02:29:37] が製造業界ではブラックリスト入りしてい たのだ。大城グループが意図的に妨害して
[02:29:41] たのだ。大城グループが意図的に妨害して いるわけではない。業界が自発的に黒先を
[02:29:45] いるわけではない。業界が自発的に黒先を 拒絶していった。先をないがしにする人間
[02:29:49] 拒絶していった。先をないがしにする人間 を幹部に吸えたら自分たちも同じ目に会う
[02:29:52] を幹部に吸えたら自分たちも同じ目に会う かもしれない。そういう効理的な判断が
[02:29:56] かもしれない。そういう効理的な判断が どの企業にも働いていたのだろう。ある
[02:30:00] どの企業にも働いていたのだろう。ある 知人から聞いた話では黒崎は最終職活動の
[02:30:04] 知人から聞いた話では黒崎は最終職活動の 末期人材紹介会社の担当者に紅白してたと
[02:30:09] 末期人材紹介会社の担当者に紅白してたと いう。高が町の親父に俺の人生を壊された
[02:30:13] いう。高が町の親父に俺の人生を壊された と。だが担当者は冷静に答えたらしい。
[02:30:18] と。だが担当者は冷静に答えたらしい。 黒崎さん、あなたの人生を壊したのは
[02:30:22] 黒崎さん、あなたの人生を壊したのは あなた自身の発言ですよと。その通りだと
[02:30:26] あなた自身の発言ですよと。その通りだと 思う。黒崎は最後まで理解できなかったの
[02:30:30] 思う。黒崎は最後まで理解できなかったの だ。自分を葬ったのは大城グループの力で
[02:30:34] だ。自分を葬ったのは大城グループの力で も業界のネットワークでもなく自分自身の
[02:30:39] も業界のネットワークでもなく自分自身の 言葉と態度だということを人を見下し
[02:30:43] 言葉と態度だということを人を見下し 踏みにじりその痛みに無近くでいられる
[02:30:46] 踏みにじりその痛みに無近くでいられる 人間は遅かれ早かれ信頼という社会の基盤
[02:30:51] 人間は遅かれ早かれ信頼という社会の基盤 から弾き出される底辺の町場はすみっこに
[02:30:56] から弾き出される底辺の町場はすみっこに 座ってろあの一言が全ての始まりだっ
[02:31:01] 座ってろあの一言が全ての始まりだっ そして全ての終わりでもあった人を見下す
[02:31:05] そして全ての終わりでもあった人を見下す 言葉はやがて自分に帰ってくる。それは因
[02:31:09] 言葉はやがて自分に帰ってくる。それは因 が応法というよりもっとシンプルな通りだ
[02:31:12] が応法というよりもっとシンプルな通りだ 。信頼で成り立っている世界で信頼を
[02:31:16] 。信頼で成り立っている世界で信頼を 裏切れば居場所を失う。製造業というのは
[02:31:21] 裏切れば居場所を失う。製造業というのは そういう世界なのだ。黒崎のその後につい
[02:31:24] そういう世界なのだ。黒崎のその後につい ては業界の噂で短編的に耳にしただけだ。
[02:31:29] ては業界の噂で短編的に耳にしただけだ。 製造業界での最終職を諦め、全く畑の業種
[02:31:34] 製造業界での最終職を諦め、全く畑の業種 に展じたとも聞いたが、詳しいことは知ら
[02:31:38] に展じたとも聞いたが、詳しいことは知ら ない。知る必要もない。俺は黒先を潰す
[02:31:42] ない。知る必要もない。俺は黒先を潰す ためにやったわけではない。ただ仲間を
[02:31:46] ためにやったわけではない。ただ仲間を 侮辱されたことに対して筋を通しただけだ
[02:31:50] 侮辱されたことに対して筋を通しただけだ 。この一見は製造業界全体に大きな衝撃を
[02:31:55] 。この一見は製造業界全体に大きな衝撃を 与えた党和重点事件として語り継がれる
[02:31:59] 与えた党和重点事件として語り継がれる ことになったこの出来事は大手メーカーと
[02:32:03] ことになったこの出来事は大手メーカーと 中小企業の関係を見直すきっかけとなった
[02:32:06] 中小企業の関係を見直すきっかけとなった 。ある業界士はサプライチェーンの見え
[02:32:10] 。ある業界士はサプライチェーンの見え ない支配者という見出しで大城グループの
[02:32:14] ない支配者という見出しで大城グループの 存在を特集した。最も俺はその取材を断っ
[02:32:18] 存在を特集した。最も俺はその取材を断っ た。目立つ必要はない。実績で語る。それ
[02:32:24] た。目立つ必要はない。実績で語る。それ が俺の一貫したスタンスだ。ある日、名古
[02:32:28] が俺の一貫したスタンスだ。ある日、名古 がこんな話を持ってきた。東亜の工場で
[02:32:32] がこんな話を持ってきた。東亜の工場で 働く1人の若い技術者が自分の上司に
[02:32:36] 働く1人の若い技術者が自分の上司に 向かってこう言ったらしい。大城さんの
[02:32:40] 向かってこう言ったらしい。大城さんの 部品を毎日手にしていた自分には分かる。
[02:32:44] 部品を毎日手にしていた自分には分かる。 あれは底辺の仕事じゃない。最高峰の仕事
[02:32:47] あれは底辺の仕事じゃない。最高峰の仕事 だとその言葉が車内で広現場の技術者たち
[02:32:53] だとその言葉が車内で広現場の技術者たち の間で大城正規の品質を守り続けていた人
[02:32:57] の間で大城正規の品質を守り続けていた人 たちに我々は何をしたのかという時世の声
[02:33:01] たちに我々は何をしたのかという時世の声 が上がったという。名古はその話を聞いて
[02:33:06] が上がったという。名古はその話を聞いて お前の仕事の価値はちゃんと分かるやには
[02:33:09] お前の仕事の価値はちゃんと分かるやには 分かってたんだなと笑った。業界内部では
[02:33:13] 分かってたんだなと笑った。業界内部では 確実に変化が起きていった。他の大手
[02:33:17] 確実に変化が起きていった。他の大手 メーカーが自社のサプライチェーンにおけ
[02:33:19] メーカーが自社のサプライチェーンにおけ る中小企業の依存度を再調査し始めたのだ
[02:33:23] る中小企業の依存度を再調査し始めたのだ 。うちも大城グループのような存在に
[02:33:26] 。うちも大城グループのような存在に 気づいていないのではないかという危機感
[02:33:29] 気づいていないのではないかという危機感 が広がった。結果として複数のメーカーが
[02:33:33] が広がった。結果として複数のメーカーが 中息取引先との関係を見直しより大当な
[02:33:37] 中息取引先との関係を見直しより大当な 条件での取引を模索するようになった。
[02:33:42] 条件での取引を模索するようになった。 皮肉なことに黒崎の暴言が中小企業全体の
[02:33:46] 皮肉なことに黒崎の暴言が中小企業全体の 地位向上に貢献したのだ。名が面白そうに
[02:33:51] 地位向上に貢献したのだ。名が面白そうに 電話の向こうで声を弾ませた。大城、お前
[02:33:56] 電話の向こうで声を弾ませた。大城、お前 が1人の専務を黙らせたことで業界全体が
[02:33:59] が1人の専務を黙らせたことで業界全体が 変わり始めてるぞ。俺は首を振った。俺が
[02:34:04] 変わり始めてるぞ。俺は首を振った。俺が 変えたわけじゃない。ただずっとそこに
[02:34:07] 変えたわけじゃない。ただずっとそこに あった問題が表に出ただけだ。党和銃校と
[02:34:12] あった問題が表に出ただけだ。党和銃校と の関係は中谷社長の約束通りに再構築され
[02:34:16] の関係は中谷社長の約束通りに再構築され た。黒崎の会認と全域先への公式謝罪分が
[02:34:21] た。黒崎の会認と全域先への公式謝罪分が 出された後、グループ各者は契約の再開に
[02:34:25] 出された後、グループ各者は契約の再開に 応じた。だが関係は以前とは根本的に
[02:34:29] 応じた。だが関係は以前とは根本的に 変わっていった。新しい基本契約には対等
[02:34:33] 変わっていった。新しい基本契約には対等 なパートナーシップの理念が名分化され、
[02:34:37] なパートナーシップの理念が名分化され、 一方的な値下げ要求や不当な条件変更が
[02:34:41] 一方的な値下げ要求や不当な条件変更が 禁じられた。大城正規は下受けではなく
[02:34:45] 禁じられた。大城正規は下受けではなく パートナーとして党和銃校の事業に参角
[02:34:49] パートナーとして党和銃校の事業に参角 する立場となったのだ。名がこの変化を
[02:34:53] する立場となったのだ。名がこの変化を 知って電話の向こうで笑っていた。
[02:34:56] 知って電話の向こうで笑っていた。 対等なパートナーか。昔あの安い居酒屋で
[02:35:01] 対等なパートナーか。昔あの安い居酒屋で 語り合った夢がようやく形になったな。俺
[02:35:05] 語り合った夢がようやく形になったな。俺 も少しだけ笑った。あの夜観光コーヒーの
[02:35:10] も少しだけ笑った。あの夜観光コーヒーの 空缶を握りつぶしながら乗ったと言って
[02:35:13] 空缶を握りつぶしながら乗ったと言って くれた名。あの日から始まった全てが今
[02:35:17] くれた名。あの日から始まった全てが今 この瞬間につがっている。契約再開に向け
[02:35:22] この瞬間につがっている。契約再開に向け た交渉は驚くほどスムーズに進んだ。東和
[02:35:26] た交渉は驚くほどスムーズに進んだ。東和 銃行側は大城グループの3つの条件を1つ
[02:35:31] 銃行側は大城グループの3つの条件を1つ 残らず受け入れた上でさらに特自の改善策
[02:35:35] 残らず受け入れた上でさらに特自の改善策 を提示してきた取引先への定期的な
[02:35:39] を提示してきた取引先への定期的な ヒアリング制度の導入、サプライヤー表彰
[02:35:42] ヒアリング制度の導入、サプライヤー表彰 制度の新設
[02:35:45] 制度の新設 そして年に1度のパートナーシップ混段会
[02:35:48] そして年に1度のパートナーシップ混段会 の開催中谷の本気が伝わってくる提案だっ
[02:35:52] の開催中谷の本気が伝わってくる提案だっ た東亜重の新しい基本契約の締結式は党和
[02:35:58] た東亜重の新しい基本契約の締結式は党和 重行の本社会議室で行われたからは東京の
[02:36:03] 重行の本社会議室で行われたからは東京の ビル軍が一望できる高想会だった。の式天
[02:36:08] ビル軍が一望できる高想会だった。の式天 の時はすみっこの席に追いられていた俺が
[02:36:12] の時はすみっこの席に追いられていた俺が 今度はテーブルの真ん中に座っている
[02:36:15] 今度はテーブルの真ん中に座っている 不思議な考えがあったグループの主要
[02:36:19] 不思議な考えがあったグループの主要 メンバーが立ち合った名赤嶺こはえ全員が
[02:36:26] メンバーが立ち合った名赤嶺こはえ全員が それぞれの会社を代表して中谷社長と対当
[02:36:30] それぞれの会社を代表して中谷社長と対当 な立場で契約書に署名した締結式の後中谷
[02:36:36] な立場で契約書に署名した締結式の後中谷 は1人11人に名刺を渡しながら頭を下げ
[02:36:39] は1人11人に名刺を渡しながら頭を下げ た。今後はパートナーとしてどうぞ
[02:36:44] た。今後はパートナーとしてどうぞ よろしくお願いします。あの式点の日す
[02:36:48] よろしくお願いします。あの式点の日す みっこの席に追いやられた男が今度は契約
[02:36:52] みっこの席に追いやられた男が今度は契約 の当事者として正面のテーブルに座って
[02:36:55] の当事者として正面のテーブルに座って いる。中谷はその事実を噛しめるように俺
[02:37:00] いる。中谷はその事実を噛しめるように俺 の顔を見つめていた。俺は特に何も言わ
[02:37:04] の顔を見つめていた。俺は特に何も言わ なかった。契約書に署名し、名刺を交換し
[02:37:08] なかった。契約書に署名し、名刺を交換し 、握手をかわした。それだけだ。派手な
[02:37:13] 、握手をかわした。それだけだ。派手な パフォーマンスはいらない。結果で示す。
[02:37:17] パフォーマンスはいらない。結果で示す。 俺のやり方はこれからも変わることはない
[02:37:20] 俺のやり方はこれからも変わることはない 。
[02:37:22] 。 あの式点から3ヶ月が経った。季節は秋
[02:37:26] あの式点から3ヶ月が経った。季節は秋 から冬に変わり、工場の窓から吹き込む風
[02:37:30] から冬に変わり、工場の窓から吹き込む風 に冷たさが混じるようになった。何の歯が
[02:37:34] に冷たさが混じるようになった。何の歯が 路ジ裏の歩道を黄色く染め、朝の通勤路に
[02:37:38] 路ジ裏の歩道を黄色く染め、朝の通勤路に は落葉を吐く放気の音が響いている。
[02:37:42] は落葉を吐く放気の音が響いている。 下町ちの冬は静かに、しかし確実にやって
[02:37:46] 下町ちの冬は静かに、しかし確実にやって くる。俺の生活は何も変わっていない。
[02:37:50] くる。俺の生活は何も変わっていない。 毎朝あの馴染みの匂いを胸いっぱいに
[02:37:53] 毎朝あの馴染みの匂いを胸いっぱいに 吸い込みながら工場のシャッターをあげる
[02:37:56] 吸い込みながら工場のシャッターをあげる 。冬の朝は指先がかじかむ。だが先盤の
[02:38:01] 。冬の朝は指先がかじかむ。だが先盤の ハンドルを握れば手はすぐに温まる。金属
[02:38:05] ハンドルを握れば手はすぐに温まる。金属 が触れるカスかな振動が指先から腕を伝っ
[02:38:10] が触れるカスかな振動が指先から腕を伝っ て全身に伝わってくる。チャックに
[02:38:13] て全身に伝わってくる。チャックに ワーカーをセットし、バイトのは先を確認
[02:38:17] ワーカーをセットし、バイトのは先を確認 し、機械を動かす。その音が工場に響き
[02:38:21] し、機械を動かす。その音が工場に響き 始めると1日が始まる。冷えた空気の中に
[02:38:26] 始めると1日が始まる。冷えた空気の中に 接作湯の匂いと金属分のカスかな輝きが
[02:38:30] 接作湯の匂いと金属分のカスかな輝きが 混じっていく。20年間同じ朝を迎えてき
[02:38:34] 混じっていく。20年間同じ朝を迎えてき た。だがこの朝に飽きることは1度もない
[02:38:38] た。だがこの朝に飽きることは1度もない 。変わったことがあるとすれば渡辺の腕が
[02:38:42] 。変わったことがあるとすれば渡辺の腕が 少し上がったことくらいだ。あの式点の後
[02:38:47] 少し上がったことくらいだ。あの式点の後 渡辺が妙に真剣な顔で千盤に向かうように
[02:38:50] 渡辺が妙に真剣な顔で千盤に向かうように なった。ある日、作業の合間に渡辺が
[02:38:55] なった。ある日、作業の合間に渡辺が こちらを向いた。俺もいつかプラス
[02:38:59] こちらを向いた。俺もいつかプラス マイナスゴミクロンを足せるようになり
[02:39:01] マイナスゴミクロンを足せるようになり ますか?毎日ここで腕を磨き続ければ必ず
[02:39:06] ますか?毎日ここで腕を磨き続ければ必ず できるようになる。宮里がコーヒーを持っ
[02:39:10] できるようになる。宮里がコーヒーを持っ て事務所に入ってきたテーブルの上に一通
[02:39:14] て事務所に入ってきたテーブルの上に一通 の封筒を置く。東亜和銃校からの手紙だっ
[02:39:17] の封筒を置く。東亜和銃校からの手紙だっ た。開封すると中谷社長の直室で改めて
[02:39:23] た。開封すると中谷社長の直室で改めて 恩社と今後のパートナーシップへの期待を
[02:39:26] 恩社と今後のパートナーシップへの期待を と記されていた。堅苦しい文の中に不器用
[02:39:31] と記されていた。堅苦しい文の中に不器用 な誠意がにんでいった。手紙を読み終えて
[02:39:36] な誠意がにんでいった。手紙を読み終えて 俺はふと工場の壁にかかった親父の写真に
[02:39:39] 俺はふと工場の壁にかかった親父の写真に 目をやった。日焼けした太い腕短くり込ん
[02:39:45] 目をやった。日焼けした太い腕短くり込ん だ頭器
[02:39:47] だ頭器 だが真の強い目。
[02:39:49] だが真の強い目。 あの親父が聞いたら何と言うだろう?息子
[02:39:53] あの親父が聞いたら何と言うだろう?息子 が30社のグループを束ねているなんて
[02:39:55] が30社のグループを束ねているなんて 知ったら驚くだろうか?いや、きっとこう
[02:40:00] 知ったら驚くだろうか?いや、きっとこう 言うだろう。で、腕は鈍ってねえだろうな
[02:40:03] 言うだろう。で、腕は鈍ってねえだろうな と。大丈夫だ親父。腕は鈍っていない。俺
[02:40:10] と。大丈夫だ親父。腕は鈍っていない。俺 は作業技の袖をまくり上げて工場に戻った
[02:40:13] は作業技の袖をまくり上げて工場に戻った 。今日の仕事は新しい取引先から依頼され
[02:40:17] 。今日の仕事は新しい取引先から依頼され た試作部品の加工だ。図面の交差はプラス
[02:40:22] た試作部品の加工だ。図面の交差はプラス マイナス3ミクロン。親父の台ではでき
[02:40:25] マイナス3ミクロン。親父の台ではでき なかった制度をこの手で出す。か高い加工
[02:40:29] なかった制度をこの手で出す。か高い加工 音が変わらず工場に響き渡った。昼休み
[02:40:34] 音が変わらず工場に響き渡った。昼休み 渡辺が加工した試作品を持ってきたノギス
[02:40:38] 渡辺が加工した試作品を持ってきたノギス で測定すると交差の範囲内にきっちり
[02:40:42] で測定すると交差の範囲内にきっちり 収まっている。の後も均一で表面外度も
[02:40:47] 収まっている。の後も均一で表面外度も 悪くない。まだ俺の息には届かないが10
[02:40:51] 悪くない。まだ俺の息には届かないが10 ミクロンなら安定して出せるようになって
[02:40:54] ミクロンなら安定して出せるようになって いた。半年前は15ミクロンがやっとだっ
[02:40:57] いた。半年前は15ミクロンがやっとだっ た。確実に成長している。もう少しですよ
[02:41:02] た。確実に成長している。もう少しですよ ね。あと何年かかりますか?焦るな。金属
[02:41:07] ね。あと何年かかりますか?焦るな。金属 は嘘をつかない。お前が手を抜けば制度に
[02:41:11] は嘘をつかない。お前が手を抜けば制度に 出るし、真剣にやれば必ず答えてくれる。
[02:41:15] 出るし、真剣にやれば必ず答えてくれる。 あと3年だ。3年間毎日この場所で鍛え
[02:41:19] あと3年だ。3年間毎日この場所で鍛え 続けろ。渡辺は真っすぐな目で答えた。
[02:41:24] 続けろ。渡辺は真っすぐな目で答えた。 あの式天の日以来渡辺の目の色が変わった
[02:41:28] あの式天の日以来渡辺の目の色が変わった 。以前は仕事だからという義務感で先盤に
[02:41:32] 。以前は仕事だからという義務感で先盤に 向かっていたのだが、今はこの技術を自分
[02:41:35] 向かっていたのだが、今はこの技術を自分 のものにしたいという欲が目に宿っている
[02:41:38] のものにしたいという欲が目に宿っている 。俺が23歳で親父の後をついだ時、同じ
[02:41:43] 。俺が23歳で親父の後をついだ時、同じ 目をしていたはずだ。技術への上、それ
[02:41:48] 目をしていたはずだ。技術への上、それ こそが職人の言動力だ。この若者がいつか
[02:41:53] こそが職人の言動力だ。この若者がいつか 俺の後をついでこの工場を背負う日が来る
[02:41:56] 俺の後をついでこの工場を背負う日が来る かもしれない。その時俺は親父がそうして
[02:42:00] かもしれない。その時俺は親父がそうして くれたように黙って見守るだけだ。加藤が
[02:42:04] くれたように黙って見守るだけだ。加藤が 渡辺の肩に手を置きながら声をかけた。
[02:42:08] 渡辺の肩に手を置きながら声をかけた。 社長に3年って言われたら
[02:42:11] 社長に3年って言われたら 2年で追いつくらいの着替えを見せろ。
[02:42:14] 2年で追いつくらいの着替えを見せろ。 渡辺は背筋を伸ばし拳を握りしめた。その目には先輩の言葉を正面から受け止めた若者の決意がっていた。こういう空気が勾場には流れている。上から指示されるのではなく背中を見てぶ。先輩の仕事を目で盗み
[02:42:35] 体で覚える。
[02:42:37] 体で覚える。 マニュアルにはかけない生きた技術の伝承
[02:42:40] マニュアルにはかけない生きた技術の伝承 だ。午後宮里が事務所で帳簿を整理し
[02:42:45] だ。午後宮里が事務所で帳簿を整理し ながら顔をあげた。来週の受中増えそう
[02:42:49] ながら顔をあげた。来週の受中増えそう ですね。東亜行さんだけじゃなく、他の
[02:42:53] ですね。東亜行さんだけじゃなく、他の メーカーさんからも問い合わせが入ってい
[02:42:55] メーカーさんからも問い合わせが入ってい ます。式典の件が業界に広まったことで
[02:42:59] ます。式典の件が業界に広まったことで 大城正規の名前が知られるようになった。
[02:43:03] 大城正規の名前が知られるようになった。 品質の高さとグループとしての信頼性、
[02:43:07] 品質の高さとグループとしての信頼性、 それが改めて評価されている証だった。だ
[02:43:11] それが改めて評価されている証だった。だ が受中が増えても俺たちの基本は変わら
[02:43:14] が受中が増えても俺たちの基本は変わら ない。1つ1つの部品に心を込め、頭面
[02:43:19] ない。1つ1つの部品に心を込め、頭面 通りの精度を出し、納期を守る。当たり前
[02:43:23] 通りの精度を出し、納期を守る。当たり前 のことを当たり前にやる。それが大城世紀
[02:43:27] のことを当たり前にやる。それが大城世紀 であり、大城グループの原点だ。夕方名
[02:43:31] であり、大城グループの原点だ。夕方名 から電話があった。
[02:43:34] から電話があった。 今度グループの忘年会やらないか。全車
[02:43:37] 今度グループの忘年会やらないか。全車 合同で。場所はあの居酒屋だ。俺たちが
[02:43:42] 合同で。場所はあの居酒屋だ。俺たちが 初めて会ったあの安い居酒屋。まだあるぜ
[02:43:45] 初めて会ったあの安い居酒屋。まだあるぜ 、あの店。俺は即座に賛成した。思わず
[02:43:50] 、あの店。俺は即座に賛成した。思わず 笑ミがこぼれた。15年前缶コーヒーを
[02:43:54] 笑ミがこぼれた。15年前缶コーヒーを 握りしめながら乗ったと言ってくれたあの
[02:43:57] 握りしめながら乗ったと言ってくれたあの 居酒屋。壁には日焼けした演化歌手の
[02:44:01] 居酒屋。壁には日焼けした演化歌手の ポスターが貼られ、カウンターの隅には
[02:44:04] ポスターが貼られ、カウンターの隅には 長年の仕様ですりった跡が残っている。
[02:44:08] 長年の仕様ですりった跡が残っている。 あの店のマスターは今でも無口に焼き鳥を
[02:44:11] あの店のマスターは今でも無口に焼き鳥を 焼いているはずだ。グループの代表が全員
[02:44:15] 焼いているはずだ。グループの代表が全員 入れる大きさはないだろうが、名の気持ち
[02:44:19] 入れる大きさはないだろうが、名の気持ち は嬉しかった。原点を忘れないということ
[02:44:23] は嬉しかった。原点を忘れないということ だ。どれだけ大きくなっても俺たちの
[02:44:26] だ。どれだけ大きくなっても俺たちの 始まりはあの安いカウンターの端だった。
[02:44:31] 始まりはあの安いカウンターの端だった。 午後の仕事を終えて工場の外に出ると冬の
[02:44:35] 午後の仕事を終えて工場の外に出ると冬の 夕暮れが通りを赤く染めていた。向かいの
[02:44:39] 夕暮れが通りを赤く染めていた。向かいの 町からはまだ金属を打つ音が聞こえている
[02:44:43] 町からはまだ金属を打つ音が聞こえている 。この下町の片隅で俺たちは今日も仕事を
[02:44:48] 。この下町の片隅で俺たちは今日も仕事を している。企業のビルの上からは見えない
[02:44:51] している。企業のビルの上からは見えない 場所でこの国の物づりを支えている。下町
[02:44:57] 場所でこの国の物づりを支えている。下町 の片隅にある小さな町はだがこの小さな
[02:45:01] の片隅にある小さな町はだがこの小さな 場所から全てが始まった。そしてこれから
[02:45:05] 場所から全てが始まった。そしてこれから も全てはここから始まる。肩書きや看板で
[02:45:09] も全てはここから始まる。肩書きや看板で はなくこの腕と仲間たちとの絆で帰りは
[02:45:15] はなくこの腕と仲間たちとの絆で帰りは 加藤が声をかけてきた。今日もいい音を
[02:45:18] 加藤が声をかけてきた。今日もいい音を 出してましたね。先番、俺のフライスも
[02:45:22] 出してましたね。先番、俺のフライスも 負けてなかったでしょ?ああ、仕上がり
[02:45:26] 負けてなかったでしょ?ああ、仕上がり いつもより良かったぞ。加藤は照れ臭そう
[02:45:29] いつもより良かったぞ。加藤は照れ臭そう に頭を描いて短い挨拶を残して工場を出て
[02:45:34] に頭を描いて短い挨拶を残して工場を出て いった。この何気ないやり取りが汗への
[02:45:38] いった。この何気ないやり取りが汗への 活力になる。誰かが自分の仕事を見ていて
[02:45:41] 活力になる。誰かが自分の仕事を見ていて くれる。褒めてくれる。それだけで人間は
[02:45:46] くれる。褒めてくれる。それだけで人間は 前を向ける。黒崎にはそれが分からなかっ
[02:45:49] 前を向ける。黒崎にはそれが分からなかっ たのだ。俺は作業技のポケットに手を
[02:45:53] たのだ。俺は作業技のポケットに手を 突っ込んでアパートへの帰り道を歩き始め
[02:45:56] 突っ込んでアパートへの帰り道を歩き始め た。商店街のシャッターが次々と閉まって
[02:46:00] た。商店街のシャッターが次々と閉まって いく中、やおやのおばちゃんがお疲れさん
[02:46:04] いく中、やおやのおばちゃんがお疲れさん 、大城さんと声をかけてくれた。この町で
[02:46:08] 、大城さんと声をかけてくれた。この町で は俺はただの町勾場の親父だ。グループの
[02:46:12] は俺はただの町勾場の親父だ。グループの 総水でもなければ大手メーカーの生命線を
[02:46:16] 総水でもなければ大手メーカーの生命線を 握る男でもない。大城のあんちゃんそれ
[02:46:20] 握る男でもない。大城のあんちゃんそれ だけで十分だ。途中の自販機で缶コーヒー
[02:46:25] だけで十分だ。途中の自販機で缶コーヒー を1本買いいつものベンチに腰を下ろした
[02:46:28] を1本買いいつものベンチに腰を下ろした 。冬の空気は冷たいが住んでいる。街当の
[02:46:33] 。冬の空気は冷たいが住んでいる。街当の 光に照らされた裏通りは静かで温かい。
[02:46:38] 光に照らされた裏通りは静かで温かい。 この町で生まれ、この町で育ち、この町で
[02:46:42] この町で生まれ、この町で育ち、この町で 物を作り続けてきた。親父もそうだった。
[02:46:46] 物を作り続けてきた。親父もそうだった。 そしてきっとこの先もそうだろう。ベンチ
[02:46:50] そしてきっとこの先もそうだろう。ベンチ の向こうの路ジを近所の親子が歩いていく
[02:46:53] の向こうの路ジを近所の親子が歩いていく 。母親に手を引かれた小さな男の子が向い
[02:46:58] 。母親に手を引かれた小さな男の子が向い の町場の窓から漏れる光を指さして何か
[02:47:02] の町場の窓から漏れる光を指さして何か 言っている。あそこで何作ってるのと聞い
[02:47:06] 言っている。あそこで何作ってるのと聞い ているのかもしれない。
[02:47:08] ているのかもしれない。 いつかあの子が大人になった時、この国の
[02:47:12] いつかあの子が大人になった時、この国の 物づりはどんな形になっているだろう?
[02:47:15] 物づりはどんな形になっているだろう? 待交場はまだ残っているだろうか?職人の
[02:47:20] 待交場はまだ残っているだろうか?職人の 腕が正当に評価される世界になっている
[02:47:23] 腕が正当に評価される世界になっている だろうか?俺にできるのはそのための道を
[02:47:28] だろうか?俺にできるのはそのための道を 少しでも開いておくことだけだ。あの光の
[02:47:31] 少しでも開いておくことだけだ。あの光の 向こうで誰かが物を作り、誰かの暮らしを
[02:47:35] 向こうで誰かが物を作り、誰かの暮らしを 支えている。この国の物づりはこういう
[02:47:39] 支えている。この国の物づりはこういう 小さな光の集まりで成り立っている。東京
[02:47:43] 小さな光の集まりで成り立っている。東京 の下町にも大阪の町にも名古屋の工業地帯
[02:47:48] の下町にも大阪の町にも名古屋の工業地帯 にも同じような光がある。その1つ1つが
[02:47:52] にも同じような光がある。その1つ1つが 名前も知られず、表彰もされず、ただ黙々
[02:47:57] 名前も知られず、表彰もされず、ただ黙々 と仕事をしている。俺たちはその光の1つ
[02:48:01] と仕事をしている。俺たちはその光の1つ だ。小さいが消えない光だ。缶コーヒーを
[02:48:05] だ。小さいが消えない光だ。缶コーヒーを 飲み干し、秋缶をゴミ箱に捨てて歩き出し
[02:48:09] 飲み干し、秋缶をゴミ箱に捨てて歩き出し た。明日もまた朝1番にシャッターを
[02:48:13] た。明日もまた朝1番にシャッターを あげる。馴染みの匂いの中でいつもの場所
[02:48:16] あげる。馴染みの匂いの中でいつもの場所 に立つ。渡辺に技術を教え、加藤と昼飯を
[02:48:22] に立つ。渡辺に技術を教え、加藤と昼飯を 食い、宮里にコーヒーを入れてもらう。名
[02:48:26] 食い、宮里にコーヒーを入れてもらう。名 から電話が来て、赤嶺からメールが届き、
[02:48:30] から電話が来て、赤嶺からメールが届き、 こちが黙って設備を直してくれる。その
[02:48:34] こちが黙って設備を直してくれる。その 全てが俺の日常だ。派手さはない。華やか
[02:48:39] 全てが俺の日常だ。派手さはない。華やか さもない。だがこの手の中には長年の仕事
[02:48:43] さもない。だがこの手の中には長年の仕事 で刻まれたタコと仲間たちとの絆とみんな
[02:48:48] で刻まれたタコと仲間たちとの絆とみんな の仕事の重みがある。それが俺の人生だ。
[02:48:53] の仕事の重みがある。それが俺の人生だ。 そしてそれが俺の誇りだ。底辺なんかじゃ
[02:48:56] そしてそれが俺の誇りだ。底辺なんかじゃ ない。ここが俺たちの頂点だ。

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